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砂長美んさんの仕事観!

砂長美んさんてどんな人?

経歴
茨城県出身、東京都在住。ロンドン芸術大学卒業。
大学在学中に教授よりディスレクシア(LD(学習障がい)の一つで、
知的に問題はないものの読み書きの能力に著しい困難を持つ症状を言う)の指摘を受ける。
帰国後一人悩むが、ディスレクシアの啓蒙・支援NPO法人エッジの出会う。
2011年  障がい者のビジネスプランコンテストで準グランプリを受賞。    コンテストの賞金60万円で惣菜店「Euro Deli」を経営。
2012年 ドキュメンタリー映画「DX(ディスレクシア)な日々」にボランティア主役出演。
2014年より、議員会館内で、初の試みとして障がい者施設などで製造されたお菓子やアクセサリーなどを販売。

○ヘアメイク事務所「Tokyo Makeup」の運営
○全国の障がい者施設の商品を販売する「ありがとうショップ」の経営
ありがとうショップ http://arigatoshop.jp/profile/
○発達障がいを広く知ってもらうため、障がいを持つ方を励ますための全国講演活動
〇大江戸ランド(2019年7月 東京都中央区月島にオープン!)
http://arigatoshop.jp/edo/

仕事大好き!

森井: 前作で「人生の中で、働くことが一番重要」と書かれていました。障がい者とか健常者とか関係なく、みんなそうではあるとは思うんです。でも、正直毎日嫌々働いている人の方が、実は多いっていうのが現実だと思うんですよね。「会社に行きたくないなぁ。嫌だなぁ。」って。一方で「働く事が楽しい」「自分が自立している!」って、感じている人もいて。両者の仕事観は全く違うなと思います。
美んさん: 実は、私、仕事大好きで。
森井: そうですよね(笑) それは、ひしひしと感じます。
美んさん: だから、仕事が嫌いな人の気持ちが分かんないんだよね。
森井: 私も好きな方・・・今は。でも以前は全然好きじゃなかったんですね。「毎日仕事に行きたくない」って思ってました。
美んさん: でも、それは、私、忘れちゃってるんだ。「仕事が嫌だな」っていう感覚。だって、今、大好きでしょうがないもん。だから、実はたまに怒られるの。夜にメールとかするだけで(笑)
森井: 本に出てた方は多分皆さん、仕事が好きな方々ではないかなと感じました。大多数の仕事が嫌な人がこの本を読んでみたら仕事に対する感覚が変わるかもなって思いました。

障がい者の働く課題は「守る福祉」

森井: 障がい者の働く課題って何だと思いますか?
美んさん: 障がい者の働く課題っていうのは、「守る福祉」
森井: 「守る福祉」?
美んさん: 自立を助ける為であるんだけど、どうしても、守ってしまう。理由は、きっと障がい者施設はビジネスだからかな・・・
森井: 施設経営の制度的な問題もありますね。
美んさん: 利用者に辞められたら困るんです。なので、守ってしまうところもあるし。それに甘んじて、助けてもらうことに、慣れ過ぎちゃってる障がい者もとってもよくない。
森井: そういう感じがしますか?
美んさん:ずっと、福祉の環境で育ってきていると、誰かがサポートしてくれて当たり前、自分は障がいがあるからこれくらいでいいでしょ?みたいになってしまう人もいたりする。だから、世の中20万人もいる障がい者の方の感覚を一緒にするって絶対無理!施設にも障がい者にも両方に問題があるの。

販路開拓はスピード!行動!段取りが大切!

森井: 最初に始めたのは「Euro Deli」というお弁当屋さんですよね?
美んさん: お弁当屋さんをやったのは、お金0円になっちゃって。履歴書を改ざんしすぎたから(笑)新しい会社行く度に「社会保険の日にち違いますよ」って言われて、「おかしいな~?」ってごまかしてたらだいたい1ヶ月以内に、クビになるの。だから、お弁当の残りで食ってければいいやって思ってお弁当屋さんを始めたの。本当にお金がなくて最低レベルにいっちゃった。
森井:だからって自分で起業するってすごいですよね!ガッツと行動力がある!
美んさん: 外資系とかで働いてきたから生活保護とか知らなくて、起業以外の選択肢がなかった。だから、、障がい者の人といっぱい付き合うようになって、「生保、生保」っていうから、生命保険かと思ってたのに、生活保護の略だったみたいで。びっくりしちゃった(笑)多分、余裕でもらえたはず。起業したから、障がい者の商品を売り始めることができて、それがきっかけで今に至る。今では、博物館、コンビニ、国会、お土産関係、刀剣博物館など12店舗に商品を卸しています。
森井:販売先はどうやって開拓していくんですか?
美んさん:自分で、お客さんでお店に一回行くんですよ。わざと2回ぐらい行って、「この前、来たよね~。」なんて言われた時に、「すごい好きになっちゃって。」なんて言って。
森井:2回目に覚えてもらえてるのも、またすごいですね!
美んさん: 2回目に行く時に「今日、また行くんで、よろしくお願いします。」って連絡して仲良くなっていく。そして、全部お膳立てしてもってっちゃう。価格表まで勝手に決めてすぐ売ってもらえるようにしていくようにしています。例えば、ドトールで、「この砂糖、障がい者施設で作らせてください。」っていう場合は、すでに施設に話を通しておいて、こんな物作れるんですけどってお店に提案しに行く。そして、どっか旅行に行ったら、2件くらい必ず営業する場所を見てきて、ここ行けそうって思ったら営業をする!
森井: 常にアンテナをはってるんですね!
美んさん:商品を販売してくれるお店の近所の障がい者施設さんを探してみたりもする。近所の施設だったらそこに貢献したい!っていうお店もあるので。
森井:だから、全国につながりがどんどん増えていっているんですね。販売する商品はどうしてるんですか?
美んさん: 販売する商品は、価格からパッケージまで全部決めていって、「これ作れますか?」って施設に聞いてみる。そこで作れるよとOKがでたら「40個、来週にはお願いします。」その日に全部できることは終わりにしてしまうようにしている。
森井:早い!
美んさん:やらないという施設は、めんどくさいって言って、障がい者の仕事自体を自分で切ってるところもある。「いやぁ、うちの利用者さん出来るかなぁ。」とかって言って、自分で勝手に出来ないと思って、お断りされちゃう時とかもある。

仕事はプロセスがとても重要!

森井:施設にもいろいろ事情があったりするんでしょうが、仕事を受けないと工賃が上がらないわけで、難しいですね。
美んさん: 面白い話すると、施設の人って、「このプロジェクトの商品を一緒にやりませんか?」っていうと、ほぼほぼ嫌がるの。工賃向上って言っておいて、責任を背負いたくない。自分の仕事増やしたくない。なので、重たいことをしたくないんですよ。例えば、雇われて一生過ごしたいって方っているじゃん。社長になりたくない人って。そんなのと一緒で、ノルマって言ったら、重たく感じるじゃない?施設も一緒で、「プロジェクト一緒にやりましょう。」って言うと、だいたい、お断りされる。
森井:そうなんですね。
美んさん:だけど、言い方なの。「これを1個1円で1000個来月あたりまでにお願いしたいんですけど。」って言うじゃない?そうすると、「ありがとうございます。」って・・・でも、「今度、このプロジェクトってのをやるんですよ。1個5円くらいなんですけど、一緒に作ってくれますか?」って言うと、「考えさせてください。」って言う。
森井:それはよくある話なんですか?
美んさん: あるある・・・。 基本的に職員の負担が重くなる。だから、PIPPOみたいに商品だけをインターネットに載せるって言うと、まぁまぁ、OKもらえるところも多いと思うけど。
森井:仕事の進め方がとても重要って事ですよね。
美んさん: 進め方が本当に重要で、それは、8年間やってきて、覚えた。「一緒にやろう」なんて言葉が、禁句!施設としては、自分の責任になる「一緒にプロジェクトをやろう」という言葉自体にアレルギーがあって。それは仕方ないことなんですよ。だって、やったことがないこと言われるんだもん。誰でも新しいことを始めるのは躊躇する。だから、私は言い方を変えて「来月までに、全部用意して、これをやってください。」「おたくってアイロン有りましたよね?」「おたくってオーブン持ってますよね?」「クッキー工場持ってましたよね。」って言って、「じゃぁ、この通りやってください。」っていう形にする。軌道にのってくると、職員の人も考え方変わってくるんですよ。

やる気スイッチを入れる

美んさん:みんなの考え方が変わってきたところで、「この前、●●さんていう政治家がこのクッキー食べてくれましたよ~!クッキーと一緒に写真も撮ってくれましたよ~!!」とか施設の人に伝えたりすると、「すごい!あんな有名人がうちのクッキー食べてくれたってよ。」って言って、施設長が喜び、そして、気がついたら、その政治家が「この施設に行ってみたい。」って言うとするじゃん。そしたら、「有名な政治家が来るなんて、俺達ってそんなすごいことをしてたの?!」って施設の人が喜び、そして、やっと職員の人が私のことを「こんなことをしてくれている人だったの?言われた通り作ってただけだったけど。」とか思ってくれるようになる。そうするとみんなのやる気スイッチがカチッと入る。私は、やる気スイッチが入るようにいろんなことを働きかけている感じ。
森井:いろんな方法を使って、上手にいいところを引き出してあげているんですね。
美んさん:何でそこまでしてあげるかっていうと、重度障害の方は「1+1」が分からない。お母さんが誰だか分からない。そのくらいの重度の方たちがいるんですよ。就労支援A型の作業所だったら、職員がさぼってたら利用者にわかっちゃうんです。「さっき仕事のオーダー断ってませんでした?」って。だから真面目にやるしかない。でも、重度の人って、勝手に職員が「ちょっと、そういうの、出来ないんですよ。」って断っても分からない。でも、仕事を断るなんて彼らに失礼だと思うんです。以前は、施設に文句言ったりしたんだけど、そうすると、逆ギレされて終わっちゃうんですよ。だから魔法使いみたいに施設の人達が、変わってもらう様に上手に仕事を進めないといけない。説教しても始まらないんです。
森井:仕事を発注することで、仕事へのやりがいや、素晴らしい仕事をしていると気づいてもらって、やる気を出してもらうんですね。
美んさん: 実は、障がい者の施設で働いている人の自己肯定感が無くなっちゃっている。すごい設備を持っているのに、なんかさびちゃってるようなところも多い。私にとっては、そういう設備を持っていたりする施設は、本当に魅力的なんですよ。ジュース工場を持っているところで、100本しか作らないのに、ヤクルトみたいな大規模工場のように洗浄を毎日3時間繰り返すみたいなところもある。そういうところに仕事を作って持って行って、重度障がい者が働けるようにしていくっていうのが私の仕事だと思う。

障がい者を売っていた。商品を売っていなかった。

森井:これまで販売で苦労したことはなんですか?
美んさん:販売で苦労したことは、障がい者を売っていて、商品を売っていなかったこと。
障がいっていう枠にとらわれちゃいけないって気づいた。だから、障がいを売っていたらおかしい!って思って。障がいという自分の弱い部分で、お情けを売るっておかしいだろ!って思った。国会議事堂のセブンイレブンで障がい者施設の偉い人を連れて行った時に買っていくのは、国会議事堂まんじゅうで「ここに障がい者クッキーやせんべいがあるのに、なんで買わないんですか?」っていったら「いや、こんなのいつでも買ってるよ!」って言われて。それは正論だった。
森井: それを正論だって気づけたのがすごいですよね。「なんだよ!」って言って、それを糧に出来ない人もたくさんいて、そこをチャンスに変えれるのがすごいなぁと思います。
美んさん: 自分に置き換えて考えてみた。自分に置き換えるって必要で。東京タワーに行って、障がい者の施設コーナーがあったとして、東京タワーになんの関係もないわけがわかんないお土産があっても誰も買わない。私も最初はこんなに心を込めて作ったのに、「何で買ってくれないんですか?」って言ったこともあったんだけど、売っているうちに自分でばかばかしくなってきて。「逆の立場だったら買わないだろ。」って気づいた。未だに、福祉の販売会で必ず職員が「これオーガニックでね。障がい者の人が1個1個つめてるんですよ。すごいんですよ。」と言うわけ。挙げ句の果てに、「この子が、この子が、作ってるんです!」って言う。分かるけど・・・そんなに尊敬して買わないといけないかなぁ?って思ってしまう。私は買おうと思っている人は「ちょっとクッキーを食べたかっただけなのに・・・」くらいの感覚だと思うんですよ。だから私は、説得しなくなった。無理だもん。誰かのマインドを変えるのは。売れない商品は誰も喜ばない。だって、そもそも、働く事、仕事を増やすことが目的で動いているのに売れないと意味がない。

美んさん: PIPPOさんがやっている事を非難しているわけではないの!それはそれでいいの。でも、売れない物は、作っている人達に、本当に失礼だと思ってる。「ご注文ありがとうございます。」って言われると、私は嬉しい。売れることで仕事を作ることができるから、障がい者の絵を飾ってみましたとかは、コピーで印刷しただけであって、その人の日々の仕事にはなってないなって思ってしまう。私はどうしても「仕事を作る」ことにこだわるのかも。自分が仕事で苦労したから。
森井:自分の経験が、今の仕事に影響がでているんですね。
美んさん: やっぱり、朝起きてやることがないって、人間として、すごく鬱になる原因じゃない?必要とされていない。
森井:それは、本当になった人じゃない人じゃ無いと分からないですよね。
美んさん: 働くって意味だけじゃなくて、必要としてくれる人がいるって幸せだよね。だから、必要な人と言われる為に私が動くっていうところもあるのかな。

「障がい者ファンクラブ」の熱狂は内に秘める

森井: 「重度障害の人が人としてきちんと生活が送れるようにしたい」っていう美んさんの視点は、福祉に縁遠い人は気づかないんですよね。自分のことだけで精一杯で気にも留めてない人もいると思います。
美んさん: 私たちってAKBのファンクラブの人間と一緒だよね。ファンがAKBの為だったら、有給全部使って握手会に行く!っていうのと同じ熱量で「障がい者ファンクラブ」に取り組んでいる。今日だって、森井さんは、私がお金1円も払うなんて言ってないのに、3時間も4時間もこのインタビューに時間費やしてるわけでしょ?だから私達って、障がい者ファンクラブなんだねって思ったの。
森井:障がい者ファンクラブ!おっしゃる通りですね(笑)福祉に関係ない人からは「良いことしてるよね!」てよく言われるんですけど、あんまり自分ではそう思っていない。施設で作ってる製品を見たり買ったり、探したりが楽しいだけなんです。一方で、福祉の方に行くと「これめちゃくちゃ良いと思うんですけど!ね!良いよね!PIPPOで売りませんか!?」っていうと「何、この人!?怪しすぎる!!」って警戒されたりする(笑)
美んさん:「障がい者ファンクラブきた~!」「熱量すごいんだけど・・・」って。
森井:そうそう(笑)あんまり熱量出したらいけないのかなって。個人的に施設の商品買おうと思って、メールや電話で注文して「SNSにあげても良いですか?」ってきいたら訝しがられたりとか。なかなか伝わりづらい・・・この思いは(笑)多分ファンクラブ内じゃないと伝わらないんだなと思って。
美んさん: 「障がい者ファンクラブのひとつ先」を私は行った。ファンクラブ以外の人にも勝手に買ってもらうには、熱くなるのはやめようと思った。淡々と売っていくだけだなと。
美んさん: 心の中には言いたいことあるよ。でも、施設の人にも心を言ったらいけないことが分かった。淡々とやることが、重度障害を持つような何も言えない人たちの代弁者になることなのかなって。余計なお世話なんですけどね。
森井: 本人はそうしてって言ってないですもんね。言わないし言えない。でも、働くこととか、自分でお金を得るとか、人から認められるとか、社会的に必要とされてるってことは、人として、基本的な人権というか、必要な部分だから。その部分を彼らは分かっているのかもしれないし、分かっていないのかもしれないけど、私たちがそれを理解できないからといって、彼らが持たなくていいわけではないし、こっちが「無いよ。」っていう権利もないと私は思います。
美んさん:例えば、私はみんなに高級な枕を使ってほしい・・・・私が勝手にそう思っているおせっかいな考えなんだけど。そのためには、お金が必要な気がしてて。余計なお世話って言われたら、そうかもしれないんだけど。上質なものを得る権利って誰にでもあるから。例えば、ホテルの食事とかなかなか連れて行ってもらえないじゃん。余計なお世話として、彼らが稼いだお金で、私が勝手に連れて行ったとする。多分、ご機嫌だよね。多分、目は見える重度障がいの方もいらっしゃるから、施設の雰囲気とホテルだと全然違うってわかると思う。多分、楽しくて笑うと思う。最終的に提供したいことってこれだと思う。障がい者の人生に楽しい時と単純作業だけど、努力したりして人間としての充実感、喜怒哀楽を勝手に与えたい。それがモラルとして正しいかどうかって周りが判断する事だと思う。だからこそ、私は自分を正しく律するためにも、やっぱり、人の為に動く仕事をしていきたい。

「楽しい」と「楽」をいつも考える

美んさん:楽しいことを年中考えています。「楽しい(happy)」と「楽(ラク:easy)」って同じだよね。「楽(ラク)」で「楽しい」仕事だったら、仕事を受けるほうも受けたくなる。そして、お客さんも仕事を受ける人も楽しくてわくわくするようになる。頑張るとか説教するとか私の中で少しずつ消えていって、人が遠ざかる原因のものを作らないようになった。あと、楽しくて楽なことを考えているとものが進みやすい!
森井: みんなが楽しいと、そこからやる気も出てきますよね。
美んさん: だから、営業する時も重たくしないで、その人が楽だと思って利用者さんに任せてくれたらいいじゃん。とにかく楽で楽しいことを、相手が楽しいと思うことをずっとやり続けている。そして、やりたいって思うように。そこから、ボランティアとかも生まれると思うんだよね。ファンクラブもね。楽しくてわくわくするもんね!

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記事作成:akさん Naokoさん
記事投稿:ysさん

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