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シュート1本に80本のパスが必要?? ベティス VS レアルマドリー

リーガエスパニョーラ ベティス VS レアルマドリー
まずレアルの試合最近全く観ていなかったなーと思いました。
今回は手法を変えてデータからゲームを少し考えてみたいと思います。

シュート数 ベティス9:14レアル
あーやっぱりレアルの方がシュート数多いし、押し込んでゲームを進めていたのかなーと思いきや
ポゼッション率 ベティス 73.5%:26.5% レアル
えーそうなの‼
こんなに開きが出ていてだいぶベティスにボールを握られていてレアルが張り付けられて守備をして押し込まれていてどうしちゃったの?
正直思っちゃいますよね?
当然パス数でも大きな差が開いている。
パス総数 ベティス 712本:257本 レアル

ヒートマップ見ても当たり前ですがベティスはゾーン2とゾーン3の境目が真っ赤になっているので、レアルマドリーをかなり押し込んだ状態で幅を使った攻撃で揺さぶっている時間が多かったんだろう。

モドリッチはどうだったんだろうと思って見てみるとやっぱり
あれ?だいぶ右外側でプレーしていてほとんどゾーン2の中央でボールを受けることができていない。
逆にベティス。ホアキンとカルバーリョ。あの赤い丸はなんだ?
2人だけでここで真っ赤になるほどボール触っている。ウイングのホアキンはハーフスペースに入り込んでボールを持ってプレーしている傾向が強いんだなー。
気になったのでレアルのこの前の試合のデータも見てみました。

レアルが負けたソシエダとのゲーム。
ポゼッション率 レアル 58.9%:41.1% ソシエダ
シュート数       28本:12本
凄い打ったけど決めきれなかったんだなー

ほとんどのシュートがボックス内で打たれているのに決めきれず。かなりチャンスを作って決めきれなかったことがわかる。
じゃあベティスは?

ベティスもHuesca(読み方わかりません笑)に負けている。
ポゼッション率 33.2%:66.8%
シュート数     11:7
パス総数    290:613

ベティスはボールを持って攻めてはいるけどペナルティエリアの中でシュートを打たせてもらえていないことがわかる。逆にHuescaは結構ペナルティーエリア内まで入ってシュートまでいけていることがわかる。

レアルは前回の試合ポゼッション率で大幅に上回り、623本パスを使って28本のシュートを打っている。シュート1本に必要なパスは22.25本。
ベティスとのゲームではポゼッション率は大幅に下回っているがベティスより多い14本のシュートを打っている。パス総数は257本。シュート1本に必要なパスは18.75本。負けた前回のシュート数が28本もあるのでシュート1本に対して必要なパス本数が押さえられて出ているがこんなになかなか打てるもんじゃない。仮にベティス戦のシュート数で計算してみるとシュート1本に必要なパス数は44.5本になる。

ベティスは今回のレアル戦パス本数712本。シュート数9本。
シュート1本に必要なパスは79 .11111111111........本‼
80本もパス回さなきゃシュート打てないの?
前回のゲームではHuescaがシュート1本に対して26.36本
ベティスは87.5714286本‼

データから見てみると結局ポゼッションで上回っているベティスは2試合ともシュート数で下回っているし、尚且つシュート1本打つのに80本以上のパスが必要になっている。
80本もパス回してたらかなり守備組織はコンパクトな状況になっているはず。
レアルはベティスとのゲームではパス15本でシュートにこぎ着けている計算になる。この数字を意識しているのかわからないがレアルマドリーはこのベティスとのゲームではベティスを引き込んでボールを奪って少ないパス本数でシュートまで持ち込む。相手を引き込んでカウンターを仕掛けていることがわかる。シュート一本あたりに必要なパスの本数からするとかなり効率的に攻撃を仕掛けらている。
すごく難しいのはボールを支配していたのは明らかにベティスだが、ゲームを試合していたのは?
結局勝ったのボールを支配され続けていたレアルマドリー。
ボールを支配して勝つことが難しくなってきているんだなーと改めて考えさせられるし、私自身も指導者として考えさせられるデータだなと改めて思う。そんなことを考えながらゲームを観てみました。


ベティス 組織的攻撃 → ネガトラ
             VS
          レアル 組織的守備 → ポジトラ(カウンター)

スターティングラインアップ

ベティスがボールを握って押し込んで攻撃をし、レアルが守備でボールを奪ってカウンターを仕掛けるという構図が90分間続いていく展開でした。メンバーが違うということはもちろんありますが、ここまで徹底してベティスにボールを持たせるということをするのかというくらいチームとして徹している。そこに驚きを覚えました。
レアルは珍しく3バックを採用しています。そしてこのゲーム、今までのレアからすると特殊な守備の方針を打ち出したと思います。

相手コートでのレアル プレッシング

レアルの相手コートのプレッシングの構図です。
相手コートにボールがある状態の時には3バック以外マンマークでとにかく人を押し出して守備を行います。ここはある程度マンツーマン気味でどこを追うのかが明確になっていたと思います。3バックも後方で3対3の状況で構えています。
ベンゼマ&モドリッチ&ヴィニシウスで2CB+アンカー、カゼミーロ&バルベルデでインサイドMF2人、カルバハル&レギロンの両WBはSB、3バックは3TOPを抑えにいってた。
3TOPにいい状態でボールが入ってしまった時には3バックは後退して時間を稼ぐ。

第3レイヤーにいい状態でボールを入れられると3バック&全体が後退する。

間に入れられても潰せると判断した時には強く奪いに出て行き、ボランチ2枚のプレスバックで挟み込む。

前線からのプレッシングしているときは後方の3バックは3TOPの同数の状態を受け入れて守っている。

ここはレアルのDFが中に絞ってプレーしてくるベティスの3TOPの構造を理解した上でこの3対3では自分たちは質的優位があると踏んでいるのだと考えられる。

レアル 自陣での守備

表記知れば5-3-1-1(5-3-2)とでもいえばいいのでしょうか。
8人+1(ヴィニシウス)でペナルティの前のスペースを守ります。
ここでは自分のゾーン(位置)について守備を開始しますがボールホルダーが前にボールを出せる状態の時には自分のゾーンに入ってきた選手を一度掴んだらそのままマンマークして厳しくチェックしていく傾向にあるように見えました。ボールが前に進んでこない状況にボールホルダーがなったときに自分の持ち場に帰って待ち構えるているように見えました。マークを掴む基準は自分の持ち場に来たとき、離す基準はボールホルダーの状況、ただしボールにアプローチしている選手のカバー当然行うので、ボールが出てきそうなエリアで待ち構えている選手がタイトに掴む。
ボールが入ってきそうなエリアの選手のマークの基準は①ボールの状況②敵との距離③味方との距離、その周辺の選手の基準は①ボールの状況②味方の距離③敵との距離なのかなと感じました。

相手コートからベティスが前進してきたときにWBはただ3バックの脇に降りるのではなくボランチのサポートしている場面が見られた。

中のスペースが空いてしまうと直接DFラインに仕掛けられてしまうので3バックの前のスペースをブロックしながらサイドへのパスを選択させている。これはここへのパスが出て、たとえ少し遅れてクロスを上げられたとしても3CBならはじき返せるという考えに起因していると思うし、それよりも中に入れられて崩されることを警戒している表れだと考える。

レアル 1点目 カウンター
レアルは左サイドから上げられたクロスを防ぎZ1でポジトラを迎えると相手ゴール前まで少ない手数で仕掛け最後はモドリッチのミドルシュートから先制した。この場面や他のカウンターの場面でも見られるのがボールを奪ってからベンゼマ&ヴィニシウスに預けるもしくはMFが前を向いてボール保持できたときには、3バック&カゼミーロ以外の7人がスプリントしてカウンターを仕掛けている。特にバルベルデはボランチの位置から一気にゴール前まで駆け上がってカウンターを仕掛ける。ポジトラ(カウンター時)のカゼミーロとの役割分担がはっきりしていたように思える。

後半になるとレアルはリードもあり、さらにディフェンスの意識を高める。

モドリッチが一列下がったような状態になり、基本的には左SBフランシスをマークに付く。これによって自陣では実質6バックのような形になった。
ベティスは17ホアキンが第2レイヤーに降りてプレーして18グアルダードがハーフスペースに出入りすることが多くなったが、レアルに中を固められているので、第3レイヤーにいる選手に届けることができない。

ベティスはCBーSBーIMFーWingのダイヤモンドの構造をローテーションして相手を外してスペースをつくる崩し、中に絞ったウイング2人とCFWが第3レーン内でボールを引き出して中央を崩していきたいはず。
レアルもその構造を理解しているので人を基準にマークして隙を与えない。

しかし、67分に選手交代直後のスローインからレアルの中央を割ってゴールを生み出す。この場面ではレアルディフェンスの準備も悪く、第3レイヤーでボールを持たれて焦って前に出たS・ラモスが与えたスペースに流し込まれてカナーレスに決められた。あの場面は持たれても焦らず出なければやられずにすんだのではないかなと思う。この試合で唯一といってもいいくらいの決定的な判断ミスを犯した。レアルは前半の意識を強めてゴール前を固めてヴィニシウス中心のカウンターを仕掛けていけば、残り45分はチャンスを作られず、カウンターからあわよくばゴールを奪えると踏んでいたのではないか。

勝つためにはゴールが必要になったレアルは74分にセバージェスを投入すると4-4-2に陣形を変化させ、それと共に守備の基準をゾーンに戻した。

そして88分マンディから中央のレアルの構造の中のホアキンに打ち込まれたパスに対して一気にスペースを圧縮されボールを奪われてゴール前まで前進されファウルを犯してしまい、後退で入ったセバージョスに決められてしまし2-1でレアルが勝利した。

ベティスのネガトラの問題
ベティスは組織的攻撃の局面で両SBが高い位置を取り、後方に残っているのはCBとアンカーのみになる。アンカーのカルバーリョも反転したときのことを意識できているのかなと思うようなポジショニングなので実質2バック状態。局面が反転したときのカウンター対策が非常に甘い。アンカーが残っていたとしてもCBの前のスペースの横幅68mを1人で見ることができる選手って世界の中でも非常に少ない。その3人(CB2人&アンカー)がサイドに寄ってしまえば逆には大きなスペースができてしまうことになる。でも押し込んでこの状況になることは想定できること。組織的守備 → ポジトラの流れが非常に整理されてきている現代サッカーはここが重要なる。
カウンターを受けてしまえば下がらざる負えなくなってくる。
点が欲しい状況こそ点を与えてはいけない状況。
点が欲しい&攻め続けたい、押し込み続けたい
のであれば組織的攻撃の中にカウンター対策 → カウンター対応を組み込んでおかなければならないし、そこを考えるのであればボールを持って押し込むときの構造も工夫をしていかなくてはいけない。そういう意味でベティスはレアルにしてやられたし、レアルは計画通りのゲームと勝利となったんだと思う。

まとめ

まず凄いのがレアルの前節との変化。大きくゲームモデルを変えてやることができる選手の柔軟性の凄さに驚きました。日本だと試合ごとに大きく変わることはまずないと思いますし、まして今回のように試合の中で大きく変化をつけられない。フォーメーションを変えたということではなく、ゲームの中で捉え方を変えたことが凄い。

オランダのプロチームの育成ダイレクターが行っていました。「日本はゲームに変化がない」と。ゲームごと、時間帯、様々な基準となるもの中で変化を起こせない。自分たちの考え方があるのはわかるし、それは素晴らしいことではあるけど相手がいることだし、なぜ上手くいかなくなったものをそのまま続けていくのかわからないとも行っていました。

ビジャレアルの育成コーチの講習会でも「哲学」がありきなんだといっていました。ビジャレアルはボールを持って相手を押し込んで攻め続けていくという考え方のもとサッカーをするそうです。でも「勝つため」にその「哲学」を時にはある意味捨てていくことも大切なことだとも言っていました。目的は「勝つこと」だからだそうです。でも「哲学」を実践する。

その話を思い出しました。

何事も「中庸」が大切だなと。
このゲームチーム同士ですごい駆け引きが繰り広げられていたのだと思いました。それはこのゲームだけではなくて、その前のゲームから、その前の前のゲームから。
この試合から「中庸(バランス)」 「広い視点」 「柔軟性」の大切さを改めて感じることができました。

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