身近に潜む悪魔の微笑

少し前に、「性の喜びおじさん」という人物がネット上で流行った。

電車の中で「性の喜びを知りやがって!許さんぞ!」と大きな声で叫び続けるという動画なのだが、これがインターネットのミームとなり話題を集めた。

ネット上での知名度については本人も認知しており、ファンと交流を深めていたのだが、彼は不慮の事故で亡くなってしまった……

あの当時は僕も何とも思わずに笑って動画を見ていたりしたのだが、改めて考えると「身近に変な人がいるならば撮影してもいいのではないか?」という考えがSNS上に存在しているのではないかという危険性を感じている。

それこそ、あの当時は電車に潜む変な人を撮影してSNS上に上げてRTやいいねを稼ぐ人たちが多かった気がする。今回はこれについて考えていく。

まず第一に盗撮はいけないことである。

(風景を取ろうとしてうっかり移りこむなどといったことはあるかもしれないけれど)見ず知らずの人間を堂々と撮影する人なんてまずいないだろう。

それこそ電車の中でカメラを回すなんて絶対怪しまれる。

本人の許可なく撮影をするのは法律上ダメなことだし、迷惑行為をする人であれば撮ってもいいというのは明らかにおかしい。

撮る側は逆に撮られてネット上に知らない人に晒されて見て欲しい。

そうでもしないと自分のやっていることが悪いってことに気づかないかもしれない。

次に電車の中で奇異な行動を取る人物には脳や精神を始め何かしら原因があるということを考えて欲しい。

トゥレット症候群というものを聞いたことがあるだろうか。

本人の意思に関係無く、突如体が動き出したり声を上げてしまったりなどと言った症状を発する障害である。

バリバラがこういった症状の当事者からメッセージを募集したところ「電車や街で暴力をふるわれた」「絶望的な生きづらさ」などといったメッセージをいただいたそうだ。

君たちの中にも電車の中で奇声を上げる人や、やたらと頭や身体を叩いたり、足を叩いたりする人を見かけたという人もいるとは思う。

実際、動画として上げられる人の中にはそういった人達がかなり見受けられる。

実際トゥレット症候群を持つ人達はそうした不随意運動が生じる度に奇異な目で見られるという理由で外に出づらいと感じる人も多いと言われている。

そうした不随意運動を奇異な目で見られ、見ず知らずの人間によってSNS上に晒されるとしたらどうだろうか?

インターネット上のデータはなかなか消えないものであり、似たような症状を持つ人が同様の被害を受けるリスクを感じると外へ出ることが怖くなると思うだろう。

それでも彼らは社会に出たいと強く願う。けれどそこに壁を作っているのは無理解な君たちであるということがどういう結果を招くかは考えて欲しい。

そして、RTやいいねを稼ぎたいという目的で彼らを見ないで欲しい。

「そんな人いるの?」って思う人もいるかもしれないけれど、実際にいる。僕はその光景を目にしたことがある。

というか変な人を撮影して自分の知名度を上げようなんて考えが正直バカバカしい。

そう思うんだったら自分が電車の中で暴れてみたらいかがだろうか?まあ、そんなことしたら今のご時世炎上するだろうけどね。

しかしこれだけ書いてあれだけど、僕もかつてはああいった動画を見て笑っていた側の人間だったりするので、何言ってんだこいつみたいな目で見られても仕方がないよなぁ……。

障害を持つ者にならなきゃ人を見る目って変わらないなぁとつくづく思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?