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【建築屋】《建築業3年生》クリティカルな作業

建築業3年生の7月にあった自分としてはクリティカルヒットな作業だったと思ってる話し。



7月のある金曜日の夜にかかってきたOB客からの電話。

「収納部屋の片引戸に内側から物が引っ掛かって戸が開かなくなったので、開けてほしい。
いろいろやってみたがどうしても開けられない。」

という悲痛なSOSだった。

ただ、電話でのお客様からの説明では、今ひとつ状況が掴めず、その二日後に伺わせてもらう事にした。



そして当日趣いた現地にて、驚愕の状況を目の当たりにすることになる。



戸が開かないとは聞いていたが、本当に1cmほどしか隙間が出来ずにビクリともしなかったのだ。

果たして、物が引っ掛かった程度でこんな状況になるものなのか?

まるで内側から鍵を掛けた様な状況だった。



立ち会って頂いたご家族からの話を聞くには、収納してあったビニルのロールが倒れて挟まったのだろうとの事。



しかし、ここまで引戸を微動だにさせないほど、物がはまり込むものだろうか?



確かに戸の引き込み側から結構厚めのビニルのシートが引き出されてはいた。

ご主人が何とかそのビニルのロールを外そうと格闘した跡のようだった。



幸い、その引き戸は吊り戸だっため、5mm程度ではあるが床と戸板の隙間が幅広く空いており、ひとまず、1mの金物差しをその隙間に差し込み、中の状況を探ってみた。



ところが、予想した箇所に感触がなく、何も無いだろうと思われた箇所に障害物があったりで、戸板の向う側の状況が全く想像できなかったのだった。



そこでいま一度、使えそうなツールがないものか、相棒のプロボックスに戻り、車内をさぐってみた。流石に5mm〜10mmの隙間に差し込める様な工具は物差し以外見当たらなかった。しかし、ここで一つ思い出した事があった。



以前に配管の詰まりを見るとき等に使えるかもと思い、面白半分に趣味として自腹で購入した、スマホ対応の内視鏡を車に載せておいたのだった。

購入後一度も使用する機会はなかったが、購入直後に充電だけはしておいていた。



早速そのカメラをスマホと接続し、わずかに開いてる隙間から室内に差し込んでみた。


その時の画像が ↓ である。



この映像を見たとき、一瞬、驚愕と共に絶望が頭をかすめた。マジかぁ…

倒れ掛かったロールの筒が戸板と造作棚の壁との間にがっつりとはまり込んでいるのだ。

そして、室内は物で埋まっており、ロールを完全に倒して除去するスペースもなかった。



これは、戸板を壊さなければ開けることは不可能なのではないだろうか?との思いが込み上げた。

しかし、それだけはなんとしても避けたいと思い返し、取り敢えずこの映像を録画し、一旦会社に引き上げ、治具や工具を制作する検討をして見ようと思った。そして、カメラを更に奥へ送り室内をより詳細に撮影し始めた。



一旦撮影に専念すると決めた事により、妙に冷静になれたためなのか、観察に集中したおかげなのか、ふと、この状況を突破出来るかもしれない可能性のある方法が頭に浮かんだ。



引いて駄目なら押してみな。

倒せないなら起こしてみれば。



そう。倒れ掛かった筒状のビニルロールを倒すのではなく、起こす方向に物差しで押してみればどうだろう?と思ったと同時に、カメラでロールの位置を確認しながら物差しを差し込んだ。

力を入れ物差しをスライドさせると、ロールは上手いこと動き始めた。そして更に押し込むとロールは起き上がり、ついにはそのまま自立した。



つっかえが完全に除去され、収納の片引戸は普通に開けられた。



その瞬間の歓喜と安堵感は今でも忘れられない。



終わってみればなんてことのない方法で解決した。むしろ最初から気付けなかった自分が、滑稽にすら思えてしまう。

初めて直面する状況。前例もマニュアルなどありようも無い場面に遭遇すると、自分は案外パニクってしまうもんなだなぁと気付かされた。



しかしながら現着から1時間程度の格闘でこれを解決できた自分を褒め、会心の手応えを感じた作業だった。



そして、それまで使う宛ても無かったような内視鏡をオモロそうって思いだけで、衝動的にポチッてしたあの日の自分に感謝状を送りたい。

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