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第144号『弱い時だけ君を呼んだりしたくないから』

“俺はいつも負けるもんか負けるもんかと思ってる”

そんなストレートな歌詞を唄った歌がヒットしていた90年代。

1996年2月16日に有限会社サイバーコネクトという会社が誕生しました。

大学時代の漫画研究同好会にいた友人からある時“一緒にゲーム会社を作らないか?”と声をかけられた事がキッカケでした。

よくわからないゲームの世界を“その歴史”から大阪市の図書館で徹底的に勉強して、ふとゲームは“総合エンターテインメント”であることに気づいた瞬間に決意しました。

“なんだよこれ、俺が子供の時からやりたかった漫画、アニメ、映画、CG、バラエティ番組、なんでもアリじゃん、なんでも出来るじゃん、それなら全方位的に闘えるぞ、よし、人生全部使って始めてみるか、ゲームクリエイターってやつを”

最初に集まったのは10人でした。

福岡県のインキュベートオフィスを借りてスタートしましたが部屋にはパソコン一台しかありませんでした。

みんなで企画書を作ってコンビニのコピー機でコピーして封筒に入れてゲームメーカーに送りました。

“我々にゲームを作らせてください”

返事があったのは3社でした。

1社は“契約してもいいけど資本を入れさせて。経営はこっちでやるから”と言われたので断りました。

1社は“素晴らしい企画だ。けどこれを完璧な仕様書に落とし込むまでトコトン煮詰めようよ、一緒に、金は一銭も払わんけど”と言われたので断りました。

最後に残った1社と契約しました。

その会社からは“僕らはゲームのことは素人だから、なので君達が考える最高のゲームを作って出来上がったら見せてください”って言われたけどスタッフには嘘をついて“クライアントには毎月進捗を報告して最新ビルドを提出しなければならない義務があるから”と説明して、頼まれてもいないのに毎月送り始めました。

その会社こそがバンダイでした。(現バンダイナムコエンターテインメント)

当時の私は25歳、ゲームクリエイターとしての人生をスタートしました。

ハード(ゲーム機)はプレイステーション、セガサターン、ニンテンドー64という時代でした。

TrueSpaceやLightWaveというツールを使ってCGデータを作っていました。

テクスチャーは基本的に16色。(“抜き”があるので実質15色)

少しでもデータ量を抑える為に一度作ったデータを何度も作り直して手作業で処理不可軽減を行なっていました。

開発終盤はスタッフ全員で24時間交代でデバッグしました。

土曜も日曜も関係ありませんでした。

もちろん疲労はありましたがそれ以上に自分達が今まさに作っている“これから誕生する新たな作品という生命に対する期待と希望の方が上”でした。

自身の体内からマグマのように噴き出す“無限のエネルギー”を感じていました。

“今ならきっと月にも手が届く”

本気でそう思って毎日会社にいて、仕事が出来ること自体が嬉しかった。

“現代”とは全く違う時代。

法律だってもちろん今とは違う時代でした。

スマホもSNSも無い時代。

あれからちょうど今日で丸23年。

俺は少しはマシになったのかな。

会社設立から4年後、私が社長になりました。(ツーになりました)

バンダイ、バンダイナムコエンターテインメントには恩を返せただろうか。

昔より期待してもらえる会社になってきたかな。

ワクワク楽しみにしてもらえる会社になってきたかな。

きっと選択肢は増えたと思う。

やれる事もきっと人数と会社の規模が増えた分広がったと思う。

気持ちはどうだろう。

今でも俺は燃えているか?

間違いなく燃えている、きっと前以上だ。

けど世の中は変わった。

みんながみんな自分と同じじゃあない。

“同じ”じゃ務まらないし勤まらない。

同じなわけがない。

だから。

だから全部を受け入れて受け止めて足りない分はベヘリットで補って強引に強制的に無慈悲に無理矢理に自分を捻じ曲げてヒン曲げて生きている。

その痛みも“心地よい”とニヤリと出来るくらいのタフネスは身につけてきた。

なんにもブレずに流されずに。

自分だけは。

変えずに。

変えられずに。

これからも、いや、これまで以上にもっと。

仲間たちと、友人達と、戦友達と、強敵達と、共に切磋琢磨しながらやっていく。

壮大なペテンをかけながら。

魔法のようにカジュアルに。

だって。

それでも。

いくら周りが。

世の中が。

“そうじゃない”

って言い続けても。

きっと、上手くやる。

大丈夫。

きっと、大丈夫。

だって、ずっと。

ずっと、思って生きてきた。

ずっと、願って。

ずっと、恋い焦がれて。

だから、曲がらないし、負けないんだと思う。

“弱い時だけ君を呼んだりしたくないから”

って、ずっと思っているから。

ずっと、思い続けて生きてきたから。

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私もそんなあなたが大好きです!ありがとうございます。
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松山 洋 サイバーコネクトツー

株式会社サイバーコネクトツー 代表取締役 ゲームソフト開発タイトル代表作『.hack』シリーズ 『NARUTO -ナルト- 疾風伝 ナルティメット』シリーズ 『ジョジョの奇妙な冒険』 著書『エンターテインメントという薬』『熱狂する現場の作り方』漫画『チェイサーゲーム』

#ゲーム 記事まとめ

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コメント6件

毎回毎回感動するお話をありがとうございます。
そう思っていただけると嬉しいです。
今日だけは、ひとりのファンに戻ってコメントすることをお許し下さい。ここにいるのは15年前の自分です。

社長、私ね、あのゲームと出会わなかったらずっと人なんて信じられなかった。社長が会社を立ち上げてくれなかったら私はたぶん、今もそのままだと思う。他人のために働くことも出来ずにひきこもってたよ。

それが今はあの頃の自分と同じ人たちが社会に飛び立つお手伝いをしてるんだ。立ち上がる勇気をくれたのは社長。私も死にもの狂いで頑張る。走るから。
だから、星の果てまてでもあなたの道をひた走って下さいね。

世界中の.hackersがあなたと一緒に走ってる。あなたがしんどいときに代わりに何でもしたい奴らがここにいる。同じように作品の完成を待ち望んで、アツくなれる奴らが。

忘れないで。
『私は、ここにいる』よ。
うう、なんか逆に励まされてしまいました、本当にありがとうございます。そう言っていただけるとクリエイターとして本望です。大丈夫ですよ、これからも一緒に頑張っていきましょう!よろしくお願いします。
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