週刊少年松山洋_タイトル_修正

描きたいものが無いんです

先日、専門学校のマンガコースの学生を対象に講演を実施した際に出てきた質問というか相談がコレでした。

“描きたいものが無いんです。先生達はよく「とにかく何でもいいから描きなさい」って言われるんですけど、そんなに描きたいものって簡単に浮かんでこないんです。どうしたらいいですか?”

また同時に

“ゲームソフトを作る時のアイデアとかってどうしたら浮かんでくるんですか?アイデアってどうしたら生まれるんですか?”

という質問もいただきました。これは私がゲームクリエイターであり普段ゲームソフトを作っているからこそ、こういった質問をして少しでも自身の作品作りのヒントを掴むために出てきた質問であることを理解しました。

いつもみたいに“あー、なんもわかってねーなお前”とは不思議と思いませんでした。なぜならその人が“足掻いている人”だったからです。

むしろ、なんか嬉しくて(私にしては)随分と優しく話をしたと思います。

“うん、何も間違ってないよ、きっとあなたは正しい。「そこ」で悩んでるんだったら大丈夫。簡単だよ、あとは「やるだけ」だから、いい?わかりやすくシンプルに言うよ?”

“描け”

“「なんでもいい」んだって。いや、わかるよ、「なんでもいい」は描けない、おかしなものは描きたくない、描く以上はちゃんとしたものを描きたい、人にキチンと見せられるものを思いついたら作品としてお披露目できるようにしたい、だから「なんでもいい」って言われても簡単には描けない、そう思ってるでしょ?”

“だから描けないんだって。実際にあなたは描いていないでしょ?ちゃんとしたもの?キチンと見せられるもの?そんなものを完璧に思いつく日がいつか来ると思ってる?来ないよ?そんな日、ずっと来ない。待っていたってそんな日はやってこないんだよ。わかる、わかるよ、俺だって今まで読んできた沢山の面白い作品達っていうのはみんなどれも作者がずっと明確に温めてきた間違いのない信念をぶつけて形にしたメッセージの塊のような魂を完璧に描き連ねたものだって思っていたし信じていた。けど、実際は全然そんなことじゃあない。もちろんボンヤリとしたイメージはあったのかもしれないけど描いてきた人たちはみんな口をそろえて「こう」言うよ”

“全然考える時間も無くてなんとなく描いてました。とにかく毎週毎月の時間に追われて原稿と向き合って今の自分が最大限に楽しい面白いと思うものをただぶつけてきました”ってね。

“実際にそうなんだよ。描くしかないんだって。準備不足でも、思いついてなくっても、なんだっていい(うるせえ、ガタガタ言うな)今日のお昼ご飯の時に友人と話したエピソードでもいい、ネットでくだらないニュースを見て思ったことでもいい、テレビの芸人の話でもいい、遊んだゲームの感想だって構わない、とにかくまずは「なんでもいい」からカタチにするんだ。1ページでも1コマでもいい、描く、まとめる、そして発表する、SNSでもなんでもいいから人に見てもらえる場所に晒す、ここまでがワンセット”

“人に見てもらった瞬間から「ソレ」は作品になるんだよ。「読者」がいて初めてソレは作品になる。だから、描いて、見せる、発表する。そうすると反応が少なからず返ってくる。「無反応」だって立派な反応なんだよ、じゃあ、「次」はひとりでも誰かから反応を貰えるようにするためにはどうすればいいのか、ってことを初めて考えられる。そして対策と戦略が生まれる。そしてそれを繰り返す。たぶん、あなたの今の感覚では「出版社に作品を持ち込んで編集者に読んでもらう」以前の感覚だよね?だって読んでもらう作品どころか、何を描けばいいのかすらも思いついてないんだから”

“大丈夫、描け”

“描くしかないんだって、あなたにも、俺にも他に道なんてないんだから”

“え?まだ他にも自分の可能性があるかもしれないとか思ってる?うーん、やっぱり怒ろうかな、それは駄目だよ、オマエ。何言ってんの?まだ他の何かにしがみつこうとか思ってんの?無駄だって、無理だって、他に可能性があるって思うんならソッチをやる可能性は今までだってあったでしょ?やらなかったってことは選ばなかったってコト。もうソッチのルートは終了、無い、もう「店じまい」で閉じてあるって、だから、もうソッチ見るな、他に可能性とか見ようとすんな、馬鹿、無駄だから”

“自分にはコレしか無くて、これがいい、これがベスト!ってまずは最低限そう思ってくれ。そうじゃないとまたブレる。「ひょっとしたら自分には向いてないのかも」って思ってしまうから。少なくとも自分の墓穴くらいは自分で掘って、そして退路を失くそう、とっくの昔に決めた事だから、たぶんきっとソレがいつだったのかも思い出せないけど、もうとっくに選んだ道の果てに「今」があるんだから、そう思い込め”

“そうすると自然と描けるよ”

“机に座って、描く”

“なんでもいいから、描く”

“無理矢理でもいいからひねり出して、描く”

“面白くなくても、描く”

“面白くないことにショックを受けながら泣きながら、描け”

“そしてそれを人に見せて晒して恥をかいて情けない思いをして悔しいと思いながら復讐を込めて、描け”

“何もネタが浮かばないカラッポな自分に絶望した日のことを思い出して泣きながら、描け”

“描け”

“繰り返し、描け”

“そうしたら、きっと、「作品」が生まれるよ”

ここまで伝えて“あ、最後にもうひとつ。

『左ききのエレン』を100回読んでそれからまた、描け”って言いました。

完璧に伝わったと思います。

そして世界中の「足掻いてる人」に届くといいな、と思って今回の記事を書きました。(世界にはまだまだ俺が必要だな、って思いながら)

さて、後半部分はそんな私が初めて描いた漫画の内容を公開しようと思います。

原稿自体はたぶん福岡本社の社長室のダンボール箱のどれかに入っていて今は発掘するのが難しいと思うので、テキストで内容だけ公開します。

10代のころの私がどれだけ未熟で恥ずかしい漫画を描いていたのかを笑いながら読んでいただければと思います。

【私が過去に描いたオリジナル漫画作品】

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