第133号『シュガー・ラッシュ:オンライン』ネタバレ感想

いきなり観た直後の感想ツイートを載せていますのでどういう感触だったのかはもうおわかりかと思うのですが、まあ、酷かったですね。

本当に“ディズニー製作でこんなコトってあるの!?”って思いました。

ディズニー映画はどれも壮大で暖かくて子どもから大人まで誰もが楽しめる映画作品であって、いつも脚本や作品にテーマやメッセージがしっかりと定められています。(だからいつでも何回でも観れる)

私の感想としては“本作はそうではなかった”ということです。

『シュガー・ラッシュ:オンライン』は『シュガー・ラッシュ』の続編でありシリーズ最新作となります。(前作を観ていなくても見れます)アメリカのとあるゲームセンターの中にある架空のゲームの中に生きるキャラクター二人が主人公です。アーケードゲーム「フィックス・イット・フェリックス」の中の“悪役”ラルフと、レースゲーム「シュガー・ラッシュ」の中の少女レーサーであるヴァネロペ。ラルフとヴァネロペは大の仲良し。前作でも別のゲームの中に入り込んで大冒険を繰り広げました。

それから6年。ヴァネロペの住まいであるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」の筐体のハンドルが壊れてしまい(お客様が遊べないので)ゲームセンターの店主によって電源を切られてしまいます。このままでは筐体ごと廃棄処分されてしまうのでヴァネロペは住まいを失ってしまいます。

インターネットの中のオークションサイトにならハンドルが売られていることを知ったラルフとヴァネロペは、お店に新たに設置されたWi-Fiからインターネットの世界に飛び込んでハンドルを落札しにでかけるという流れです。

これが本作『シュガー・ラッシュ:オンライン』のあらすじです。

ここからが完全にネタバレ感想となりますので承知の上で読んで下さいね。

【インターネットの可視化が凄い】これは本当にお見事。二人がインターネットの世界に飛び込んですぐにその広大で壮大な世界の表現は本当に素晴らしい。何度も話しかけてくる広告ポップが擬人化されていたり、世界中のインターネット利用者がアバターとして表現されていて雑多で混沌とした世界が見事に表現されています。検索エンジンに話しかけるとひとこと声をかけただけで“先読み”でいくつも候補を挙げてきたりするところは思わず笑っちゃいました。サイトにアクセスすると広大な世界の中に作られたエアレールの上を高速で移動してそのサイトに運ばれる表現もイメージ通り。これはよくわかっていない子どもたちにも“インターネットの世界ってこういう風に出来てるんだよ”って説明できる教材的表現です。

ツイートでも書いてますが、本作で褒められる要素はここだけです。ここからはずっと“なんでだよ!?”という感情と違和感が最後まで続きます。

【目的とテーマが途中で変わる】最初に提示された目的は壊れた「シュガー・ラッシュ」のハンドルを落札して購入する、というものでした。ふたりはその為にインターネットの世界に来たわけですから。目的のオークションサイトで落札した二人は今度はお金を持っていないことに気づきます。目的が“ハンドル”から“それを購入するためのお金”に切り替わるのですがこれは正しい。あくまで“ハンドルを入手する”という目的は変わっていないのですから。問題はこのあと。お金を手に入れるために二人はあるオンラインゲームにたどり着きます。それは「スローターレース」と呼ばれるオープンワールドタイプのゲームでこれまた広大なゲーム世界の中で“なんでもできる”世界です。恐らくは「グランド・セフト・オート」のようなオープンワールドゲームをイメージして作られた世界です。そのゲームの中にあるレアリティの高い車を盗んでアイテム換金サイトでお金に換えようと二人は侵入するのですがここで異変が起きます。ヴァネロペがこの広大なオープンワールドの世界に魅了されてしまうのです。これが一時的な感情ということであれば気持ちはわかります。だってヴァネロペはスタンドアローンのアーケードゲーム筐体の中で生きてきたわけですから。何度も繰り返し同じステージの同じコースに退屈していたということもよくわかります。そこでいきなりオープンワールドゲームの“なんでもできる”広大な世界を目の当たりにするとそりゃ誰だって惹かれるでしょう。しかし残念ながらこれは一時的な感情ではありませんでした。ヴァネロペは本気で「スローターレース」というオープンワールドの世界で生きていきたいと決意するのです。それを知ったラルフは悲しみヴァネロペに戻ってきて欲しい一心から「スローターレース」をウィルスに感染させて住めないようにするのです。ここからはウィルスが暴走してインターネット世界全体を巻き込んだ危機をみんなで力を合わせてなんとかする、というある意味お決まりの盛り上がり方を見せるのですが。

私は観ながらずっとドッタンバッタン世界中を巻き込んだ凄い映像が繰り広げれている中

“え、いや、待って、確かに世界中が大変なことになってしまってそれをみんなでとにかくなんとかしよう、って流れになってるけど、肝心のヴァネロペの気持ちって変わるの?変わってないよね?それを抱えたまんまでいくら凄い映像を見せられても気持ちがついていかないよ?ねえ、ヴァネロペ、俺はラルフと同じ気持ちだよ、目を覚まして一緒に元の世界に帰ろうよ、ねえ、みんな、めっちゃ闘ってるけど、ヴァネロペは今どー思ってるの?ねえ、そこ気にならない?いーの?そこを置いてけぼりにしたまま進めちゃって、ねえ、俺とラルフだけ?そこが気になってるの?”

もうホントにそこが気になってずっとモヤモヤしながら超絶映像を見ていたのですが、闘いが終わってウィルスを退治してラルフにヴァネロペがこう言うのです。

“私はやっぱり「スローターレース」で新しい人生を始めるよ!”

って、もう、ね

“なんでだよっ!?つか、むしろ思ったとおりだよ、だから言ったじゃん、なんの意味も無い闘いになってんじゃないの?って!え?いつから?いつからテーマが「古い世界からの脱却」と「少女の自立と成長と挑戦」に切り替わったの!?中ぶらりんのまんま話を進めるから問題が解決しないんじゃん!?ようし、ラルフ、もっかい行こう!もっかいウィルスばらまこうぜ!そして「スローターレース」を今度こそぶっ壊そうぜ!いや、ダメだ、なんも解決しない、違う、その前にヴァネロペと話し合おうぜ!俺たちが住むあのゲームセンターに帰ろうぜ!って!それから改めて「スローターレース」をぶっ壊そう、徹底的に!

心の中で全力で突っ込んでましたが、無常にもエンディングに突入して結局二人は離れ離れ。ゲームセンターにはなんやかんやハンドルが戻った「シュガー・ラッシュ」は再稼動してはいるもののそこにヴァネロペの姿はありません。(なんなら誰も遊んでいない)

傷心のラルフはインターネット通話でヴァネロペと会話しながらも“新しい友達もできたから寂しくないよ、2ヵ月後にヴァネロペに会えるのを楽しみにしているよ”と告げて寂しく電話を切るのです。

“なんだよ、これ”

映画館出る時に周りにいた子どもたちの感想をディズニーの製作サイドに聞かせてやりたいよ。

“ラルフ、かわいそうだったね……”

これだぞ!?感想!子どもたちの!いいのかよ?これで!?

何を与えたかったんだよ、子どもたちに、観た全ての人達に。

こんなに後味の悪いディズニー映画なんか初めて観たよ。

あー、もー、ホントにやり直して欲しい。

つか、俺がやり直したい。

脚本全部。

では、【自分ならどうするか?】って構成を最後に書いて終わります。

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コメント3件

スタンドアローンの世界からインターネットの世界にキャラ達の舞台を移すと必ず出てこないとおかしいのが、『他の店舗のシュガーラッシュたち』と『現実世界との隔たり』なんですけどね。前回ではそれがあったからお話が成立してた部分があるわけで。
このヴァネロペがずっと『スローターレース』の中に住まわれると“元の店舗の“シュガーラッシュも不具合だし、インターネットの中のヴァネロペなんて最早“バグ”以外の何者でもなくなるんですよね。そういう設定の矛盾が僕はとにかく気になりました。
インターネットの世界観の表現とかそういった所は僕らが見たいものをきちんと見せてくれたってのがあるだけに余計に気になりました。
最近の若者の行動傾向に似てる気がします。最近ではないのかもしれないですが、、、、ゲーム制作でもこんな感じで、制作プロジェクトを一緒に立ち上げたのに、途中でプロジェクトほっぽって違う事やりだすヴァネロペ見たい方って多いんでしょうか。
ハマノさん、さすがに途中でほっぽってという事はあまり聞かないですね。みんなちゃんと相談して時期も調整してから次の新天地に向かうことの方が多いと思いますよ。もちろん例外もあるとは思いますが。
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