第115号『イラストレーターを安易に目指すな』

先日、専門学校の先生達と懇親会を開いてぶっちゃけた話をしました。

そこでわかったことをまとめると。

①ゲームコースの志望者が減っている=なんかいっぱい勉強しなきゃいけないイメージがある。実力がものを言う世界というイメージ。
②コミック&イラストコースの志望者が多い=正確にはコミック(漫画)ではなくイラストコース=イラストレーター志望が多い。

①のゲーム業界志望者が減っているのは悲しい限りですが。(それはそれとして大問題と認識していますし個人的にもサイバーコネクトツーとしても様々な対処・対策を進めているので今回はいったん置いておきます)

今回は②のコミック&イラストコースについてのお話。

そもそもコミック(漫画)コースの志望者が減っているのは何故か?

学校関係者いわく“みんなお話を考えるのが苦手だから”だそうです。

な、なるほど。

だから消去法でイラストレーターを目指している、と。

これを聞いて私は先生方に

“え、イラストレーターなめてんの?”

って言ったら

“なめてます”

って言われました。

いやいやいやいや、そこは先生たちが指導しなさいよ!?

って伝えましたが

“生徒の自主性に任せている以上それを否定することは立場上出来ません”

って言われて。

さすがに、イラッとして

“あのね、学生に自主性なんてあるわけ無いでしょ?なんでロクにものを考えずに馬鹿な道に進もうとしている学生を見殺しにしようとしてんの?そういうあなた達の責任感の無さが今の状況を作ってるんじゃないの!?”

と吼えましたがやはりモヤッとした反応しか返ってきませんでした。

“駄目だ、こいつら、早く何とかしないと……”

ということで何故安易にイラストレーターを目指してはいけないか?という話をします。

【安易にイラストレーターを目指してはいけない理由】

理由①単価が安い=まずイラスト1枚の値段をちゃんと調べてみてください。びっくりするほど安いです。(日本イラストレーター協会のウェブサイトにはモノクロイラスト1点が3,000円から10,000円、カラーイラストで5,000円から20,000円と相場が記載されています)ゲーム業界だとスマホゲームのカードイラストでもだいたい1枚の相場が50,000円から100,000円くらいです。“え?カードイラストってそんなにもらえるの?”って思った人は次の理由②をよく読んでください。

理由②生産効率が悪い=ではカードイラスト1枚を描くのにどれくらいの時間・日数がかかりますか?“え?集中してやれば○○時間でイケますよ!”って言っちゃう人は仕事だってことを忘れてますよ。イラストの仕事には必ずクライアント(場合によっては版権元)が存在します。集中して絵を描くだけならば○○時間かもしれませんが、実際はそうはいきません。世界観・設定などがすでに存在していて、まずはそれに準拠したラフを数点制作してそれを提出。その後クライアント側から“確認します”と言われて数日後(だいたい翌週)に“もっとこうしてください”というリクエストが返ってきます。その修正案を描いたらまた提出して返答待ち。その後に線画→着彩→仕上げという工程の度にチェックバックを待たなければなりません。たった1枚の絵を完成させるのに10日から2週間かかるのが実態です。相手あっての仕事ですから。これは避けて通れません。

理由③生活が出来ない=1枚の絵の仕事を着手から完成させるまでかかる日数を仮に10日として、その報酬が1枚50,000円だったとして。月に3枚その仕事を受けたとしても月の売上は15万円です。そこから確定申告して税金を納めるんですよ?とてもじゃないですが生活は出来ませんよね?そうなるとどうなるかというと結局バイトをしてしまうのです。全くイラストの仕事とは関係の無いバイトをね。こうなるともうお終いです。生活のためのバイトだって体力を使いますし人間関係だってあるわけですから、もうイラストのことなんか全然考えられなくなってしまいます。だんだん“きついのでイラストの仕事減らしていいですか?”ってワケのわからない思考になったりもします。こうなるともう“職業=イラストレーター”ではありません。

今回はあえて“ひどいパターン”のイラストレーターの末路を紹介させていただきましたが、もちろんそうでない方もいらっしゃいます。

ライトノベルの表紙に大抜擢されてその作品が大ヒットしてアニメ化したりして、一躍有名イラストレーターになって一気にギャラが高騰した例ももちろんあります。けど、そんな例ってどれくらい転がってますか?(しかもそんな有名イラストレーターも最初は上記のような条件からスタートしています)

(ここであえて『左ききのエレン』を引用させてもらいますが)

日本を代表するイラストレーターの名前って何人言えますか?イラストだけで食べているプロのイラストレーターやキャラクターデザイナーの名前ですよ。10人くらいは言えますか?

では世の中でイラストレーターを目指している人は何人いるのでしょう?専門学校や大学の数に加えてフリーターなんかも入れるとその数は10万人以上ですよ。

そうなると1万人に一人がプロになれるって計算です。

文字通り「万が一」の確率でしかプロのイラストレーターにはなれないんですよ。

それをわかった上で“イラストレーターになりたい”って言うのであれば良いと思います。

ただ、忘れないでほしいのです。

イラストレーターの実態を。

世の中には“自称・イラストレーター”がいかに多いかってことを。

ほとんどの人がただの

“イラストを描いてお金をもらったことがある人”

ってだけで、イラストを描くことだけで生活できている人なんか本当に希少です。

“一度でいいからイラストを描いてお金をもらってみたい”って思ってるのであれば、どうぞ好きにしてください。

若いうちの良い思い出になるかもしれませんね。

職業としてイラストレーターを目指すのは本当に簡単ではありません。

ではどうすれば良いか?ということは以前こちらの記事“第27号『アラブの石油王なんて存在しないんだから』”に書いてありますのでご参照ください。

学校の先生が学生に教えてあげられてないから私が直接ここで伝えさせていただきました。

なので今回は全文無料公開です。

沢山の人に届くといいなぁ。

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私もそんなあなたが大好きです!ありがとうございます。
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松山 洋

あなたと社会と世界の『未来』を変えるイイ話

かつて私たちの夢見た豊かな暮らしは、もはや待つだけでは手に入らない。独立自存により『自由』を得て、自分を取り巻く世界の『未来』を変えるための道は、おのずから動く者にのみ開かれる。そのヒントは先達の教えに、世界の歴史に、同業者や異業種の成功事例に――あるいは地下鉄の壁や長屋の...
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コメント12件

イラストレーターの話ではなく学校の話で終わってしまいますが、
学校側に熱意があるとしても私の通う学校にある一例でしかありませんが
意思疎通ひとつが難しい、上記現状が他の学校にもあるとすれば割り切った対応を生徒にせざる負えません。

ですので松山さまに歯切れの悪い返答をしたのでないか思い、
学校側も苦しんでいるという事をお伝えしたいと考えた次第です。


初にも関わらず大変な長文、乱文、連続投稿を大変失礼いたしました。
松山さまのお仕事が毎日大変お忙しいのは充分承知しておりますので、
目を通して頂けるだけでも非常に有難い事です。
仮にもしお返事をして下さるとしても簡素なお返事で結構でございます。

投稿したコメント全ての内容が不味い場合は全て削除します。

末筆ながら松山さまのますますのご活躍をお祈り申し上げます。
コメントありがとうございます。

学校の実情や先生方の内情もわかった上で記事を書かせていただきました。読み方によっては学校サイドが“何もしていない”と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、少なくとも私はそうは思っていません。むしろそこはいつの時代も関係なく、“言えない・指導できない”現状があった上でそれぞれの志望者自身が考えて決めて行動しなければならないということを一番伝えたいと思っていました。

学校がビジネスであることは構造上至極もっともなことなのですが、今回の記事でそちらも掘り下げると伝えることがふたつになって焦点がブレると思い絞って書かせていただきました。

貴重なご意見すごく参考になりました。

今後ともよろしくお願いいたします。
noteでも、イラストや漫画に対するボクの評価は厳しいから、滅多に読みません。
良く出来ているもの意外も掲載されているから、困ります。
自己満足で、と書くとボクの記事もそうなってしまうけど、
「人に見せても恥ずかしくない」ものだけにしてもらいたいのです。
わがままでしょうか?
それは人それぞれ意見があって良いと思いますよ。
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