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キジと小さな天狗

 一本道をキジが、ひょこりひょこりと歩いておった。
 時おり、キジはケーンと鳴いておったよ。
 そこに向こうから、子どもの天狗が下駄の音を鳴らして歩いて来たんだよ。
  キジを見た小さな天狗は、やおら杖を構えて何か言ったと思ったら術でキジを人間にしてしまった。
 おやまぁ、変な人間が出来ちゃったねぇ。
 突然、その人間は怒り始めたよ。
 そりゃそうだ。地面を見ながらウキウキと歩いていたら突然に目線が高くなって、自分の体から両腕がにょきっと生えているんだから。
  せっかくできた腕だ手だ、それを振り回して小さな天狗の頭をポカポカと殴り始めたよ。
  殴られてびっくりしたので後ろにさがったら、石につまずいてたおれてしまったよ。
 天狗のくせに大声で泣きはじめたね。
 まぁ、静かだったのに、あたりいっぱい泣き声でうるさいこと。
 おや、空の高いところからつむじ風がビューと吹いて何かが落ちてきた。
 天狗のおとうさんだ。
 こっわい顔して
「今度は何をしたんだ!」
「知らないよー、突然この人がなぐってきたんだよーっ」
 キジは顔を真っ赤にして
「違う!おらは、キジだ!」
と人間の声で叫んだよ。
 おとうさんはすぐに子天狗のいたずらだとわかったさ。
 さっきよりもっとこわい顔をして小さな天狗をにらんだね。
 子天狗が握りしめている杖を取り上げて、何か言いながら杖をさっとふると、あっという間に元のキジにもどったさ。
 おとうさんは小さな天狗の手をつかむとそのまますごい勢いで空に飛んでった。
 おさまらないのはキジだ。
 ケーンと鳴いては真っ赤な顔で足で地面を蹴っている。
 それ以来、キジの顔は赤いまんまさ。

 どっとはらい。

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