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世の中には


「それって、違うんじゃないですか」
お局様の突然の切り出しだった。

な、なんだなんだ?何を言いだした?
そして説明は、ない。
違うとする中身は言わない。

どうしたいんだ?何が言いたいんだ?

その後に考えた。
これは、彼女のわがままを通すフレーズなのだ。
意味は、問うてはいけない部類。
何が違って何を求めているという問いは、彼女にとっては論外なのだ。
お局と言ってもだいぶ年下で、先にいたというだけの先輩だ。
仕事内容も違う。

彼女の強みは、この理不尽な言動だ。
気に入らなければ叫び出して、押し通す。
そんなことを仕掛ける相手は選ぶので、計算しつつである。
居丈高に振る舞う相手は、怒鳴れば引き下がるとふんだ相手だ。

どれだけわがままに育ったんだろうと思っていたが、どうも父親がこの態度で家族を制圧し押し通し成功体験を重ねていたと思う。
彼女は、酷い被害者なのか。
そして学んだのだろう。
このクレーマー気質で成功するヤクザな、やり口は半端ない。

彼女の子分らは、結局みな辞めてしまった。
私も10年我慢したが辞めた。
彼女を下支えしてた社長は代替わりしたが、役員としているらしい。
繰上げ社長は彼女の天敵だったが、双方で歩み寄ったのかなと思う。

ムリが通れば道理引っ込むで、こんなすさまじいのも世の中にいるのだと思うしかない。
相手に叫ぶというのは比喩でも何でもなく、15分くらい平気で大音量で叫び続ける。
その後は、しらっとしている。
恥の概念がない。
敵と決めた相手には何でもありで、追い出すまでやり続けやり遂げる。
そこには微塵も揺るぎはない。
私がビビったなと「ふふっ、コワいコワい」と彼女が、耳元で言う。
ドラマかよ。下品すぎて絶句。

私の住んでいる地方でも、ここまでの人はそうはいない。

時々思い出すが、それにしても私は辞めて良かった。
精神がやられる。



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