高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」…

高柳カヨ子

精神科医/元法医学教室助手/少女批評家/Bunkamuraギャラリー「新世紀少女宣言」/『夜想ーゴス特集』インタビュー/『夜想ー少女特集』評論/『S-Fマガジンー伊藤計劃特集』アーバンギャルド論/gallery hydrangea「少女観音」/霧とリボン「少女の聖域」

マガジン

  • 少女主義宣言

    少女とはなにか。少女であるとはどういうことか。 あらゆる時代と時間を超えた少女たちに捧げる少女論。 「不在の少女」を探して言葉の森に分け入る試みを始めよう。 ヘッダー:「運び屋」chigusa 作

最近の記事

287回 サニーサイドアップ

「卵は物価の優等生」と言われて久しいが、最近ではどうもこれは怪しくなっている。 そもそも物価の上昇や円安などの影響を受けないわけがないのであって、それを安価なまま維持するとなればどこかに歪みが生じるのは当たり前だろう。 卵の安売りは、1人1パックまでと書かれたスーパーのチラシの目玉であった。ただそういった安売りの卵は、すぐに割れてしまいそうな程に殻が薄かったり、黄身が盛り上がらずのっぺりと潰れていたりと、どこか頼りない。 最近では売られている卵の種類も様々で、餌となる飼料の良

    • 286回 アップデートの準備ができました

      最近評判になったTVドラマのキーワードは「アップデート」だった。 昭和と令和の二つの時代を行き来することで、当時当たり前だった価値観が今や古く差別的で時代にそぐわないものであることを浮き彫りにするという、秀逸な脚本である。そしてこのドラマが優れているのは、単に前の時代が問題だったと糾弾するのではなく、現在もまた時代が進めばあの時の常識はおかしかったと言われるであろうという、相対的な可能性をきちんと示していたところだろう。 いつの時代も後から振り返れば、なんであんなことが罷り通

      • 285回 Under Pressure

        年度末になるので早くストレスチェックを受けろと言われて、お馴染みの質問にPCで答えてきた。毎年やらされているので慣れたものだ。サクサクとチェックを入れて、ものの5分程で終了。 非常に沢山の仕事をしなければならないとか、注意を必要とする仕事だとか、頭痛や腰痛があるとかの質問に、うむうむと頷きながら「常にそうである」に沢山チェックを入れているにも関わらず、忘れた頃にやってくる結果には「大したことないですね(意訳)」と書かれているのはどうしたわけか。 このストレスチェック、201

        • 284回 歌の翼に

          驚くべきことに、かつて歌を習っていた。 いや、これを読んでいる方は驚かなくていい。自分で驚いているのだ。 かつてと言っても小学生の頃だから、今はもう昔ではあるのだが、それでもしっかりお教室に通って習っていたにもかかわらず、このていたらく。 つまり何が言いたいかというと、私は歌が下手なのである。 カラオケに行く機会はまずないのだが、もし行ったとしても徹底的に他の人の歌を聞く側にまわる。聞くのは好きだ。下手でも上手でも、他人が歌っているのを見たり聞いたりするのは、非常に興味深い

        287回 サニーサイドアップ

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        • 少女主義宣言
          287本

        記事

          283回 My Hair is Good

          最近若い人の髪の色が以前より暗くなったような気がする。 茶髪、という言葉も今はあまり聞かない。もちろん髪を染めている人は沢山いるが、同じ染めるにしても黒に近い暗めの色を選んだり、明るい色はせいぜいメッシュで入れる程度という印象を受けるのだ。 コギャルやアムラーが流行った90年代、病院の看護師さんたちの髪の色はそれはもう明るかった。殆ど金髪に近いまでに色を抜いた髪のスタッフもいて、結構自由だったと思う。面白いことに、髪型は清潔を保つために縛るように指導されていたようだが、髪の色

          283回 My Hair is Good

          282回 アブラハダブラ

          1970年代はオカルトの時代だった。1973年には、『ノストラダムスの大予言』『恐怖新聞』『うしろの百太郎』が発行されている。これだけで何かむずむずするような時代の空気が伝わらないだろうか。 言わずと知れた『ノストラダムスの大予言』。著者の五島勉が晩年「人類滅亡の件は間違っていた」と言ったとか言わないとかだが、今更そんなことを言われても。 そもそもノストラダムスというのは16世紀フランスの医師・詩人・占星術師であった実在の人物で、彼の4行詩形式で書かれた『ミシェル・ノストラ

          282回 アブラハダブラ

          281回 きっと来る

          意外に思われるかもしれないが、結構ホラー好きである。 昨今はホラー小説もホラー映画も隆盛を極めており、よりどりみどりの様相だ。TVやYouTubeなどでも、ホラーを扱った番組は人気だと聞く。 ホラーと一口に言ってもその中身は幅広い。またその内容もモンスターパニックにサイコホラーにジャパニーズホラーなどなど、そして怖さやグロさの程度も子供でも読める/観れるものから、R18のレイティングがされたものまで、様々だ。 なぜ人はわざわざ怖いものを見たがるのか。 人間の恐怖の根本は、喰

          281回 きっと来る

          280回 Goodnight、Sweetheart

          「枕が合わない」という言葉があるくらい、枕は睡眠にとって重要な位置を占める。 我々人間は人生の1/3は寝ているので、その毎日の眠りに使う枕が大事なのは当たり前だ。掛布団や敷布団が合わないということはあまりない。厚みや素材などを季節によって替えれば済むことである。身体に合わない布団などという言い方は、あまり聞いたことがない。 しかし枕となると少々話が違ってくる。枕は布団に比べて、極めてパーソナルな存在と言っても良い。頭の形や首の角度、寝る姿勢や寝返りの頻度など、ひとりひとり異な

          280回 Goodnight、Sweetheart

          279回 推しも推されぬ

          世の中、推し活が盛んである。 推し色、推し香水、果ては推し概念というものまである。 誰も彼もが誰かや何かを推しているわけではなかろうが、今や経済活動にまで多大な影響を与えているであろう、推しという存在。 「推し」という言葉が登場したのは、モーニング娘。やAKB48などといった大人数のアイドルが出てきた頃と言われている。 アイドルオタク、所謂ドルオタと呼ばれるファン達の間で、グループの中で自分が積極的に応援するメンバーを「推しメン」と言うようになったのが起源とか。好きなメンバ

          279回 推しも推されぬ

          278回 シャンプーが目にしみる

          入浴中にふと、この頃リンスって聞かないなと思いついた。 昔はシャンプーとリンスはセットだった。それが今はリンスではなく、コンディショナーになっている。 いつからリンスは消えてしまったのか。いや、そもそもリンスとコンディショナーは何が違うのか。 結論から書くと、リンスとコンディショナーに違いはない。 なんとなくコンディショナーの方が高級そうに思えるがそんなことはなく、どちらもシャンプーで髪の汚れを落とした後に、髪の表面をなめらかにしてキューティクルの痛みを防いでパサつきを抑え

          278回 シャンプーが目にしみる

          277回 みんな笑顔であたたまる

          身体を冷やすと胃痙攣を起こしやすくなる。今でこそ頻度は減ったが、昔は夏は冷房冬は低温にやられて、しょっちゅう悶絶していた。 胃痙攣に限らず、冷えは身体の大敵である。立春を過ぎた途端に大雪になるなど、この時期は特に油断ならない。気分は春に傾いているが、実際はまだ冬である。特にお洒落は季節を先取りするので、迂闊に春物を着たりしてしまうと、てきめんにやられる。痩せ我慢より健康。 家に居れば暖房に頼ることもできるし、どんな格好をしていても暖かくしていればいいのだが、いざ出かけるとなる

          277回 みんな笑顔であたたまる

          276回 詳しい検査が必要です

          患者さんの診察をしていると、しばしば検査が必要になる。 採血、尿検査、胸のレントゲン、胃カメラ、CTなどなど。 このような検査は闇雲にやるものではない。ある程度病状からあたりをつけて行う。 例えば突然高熱が出たが、患者さんは咳をしたり呼吸が苦しそうではない。そういえばこのところ尿臭が強いという報告があった。患者さんは常日頃からあまりお茶を飲まない。そういった情報から総合的に判断すると、これは肺炎よりも尿路感染症の可能性が高いのではないかという疑いが出てくる。 そうすると採血と

          276回 詳しい検査が必要です

          275回 キャロット・ラペの誘惑

          大きな声では言えないが、ニンジンが嫌いだ。 子供みたいと笑われそうだが、嫌いなものはしょうがない。嫌いと言っても食べられないわけではなく、食べようと思えば食べられる。細切りにしたキンピラや生酢、甘く煮たグラッセなどは問題ない。ゴロンと大きめに切ってあるニンジンがかなり苦手である。 そして前にも書いたが、豆や芋といったホクホクした食感も好きではない。ついでに栗も食感だけで言えば苦手と言える。栗も芋も味はどちらかと言えば好きな方なので、お菓子に加工していあるものは食べるが、ホクホ

          275回 キャロット・ラペの誘惑

          274回 ウィンター・ワンダーランド

          今年は暖冬で当地でも雪が少ない。先日の雪で今年初めて5cm程度の積雪になった。 太平洋側気候の松本市と日本海側気候の大町市(間に松川村があるが)に挟まれた安曇野市は、丁度両方の気候の真ん中あたりになる。日本海側気候の冬は降雪が多いが、太平洋側気候では冬に晴天が多い。実際松本に住んだばかりの頃は、信州=雪のイメージを覆され、晴れ渡って青く澄み渡る冬の空の美しさに感動したものだ。松本が晴れている時、安曇野では雪が降ることもあるが、大町ほどの大雪にはならない。この微妙な加減が面白い

          274回 ウィンター・ワンダーランド

          273回 シャンパンゴールド

          シャンパーニュ、いわゆるシャンパンだ。 最近は元のフランス語に則ってシャンパーニュと呼ばれることが多いが、日常会話ではシャンパンの方が通りが良いだろう。普段は手頃な価格のスパークリングワインを飲んでいても、正月ということで由緒正しいシャンパーニュを開けた。 シャンパーニュは発泡している酒であるが、酒税法上では発泡酒というカテゴリではない。 日本の酒税法で「発泡性酒類」というと、ビールや所謂日本でいうところの発泡酒や第3のビールというカテゴリのものを指すのだ。ではシャンパーニ

          273回 シャンパンゴールド

          272回 新春万福

          ここ20年くらいは初詣に行っていない。 いや、もっとかもしれない。実家にいた20歳頃までは、これでもかというくらい2年参りのはしごをしていたので、隔世の感である。東京の上野で生まれ育ったので、近くに神社仏閣は沢山あった。神田の藪蕎麦で年越し蕎麦を食べてから、神田明神、湯島天満宮、五條天神社、花園神社、そして氏神様である下谷神社と回るのが定番であった。 それが信州に来て松本に住んでから、せいぜい近所の小さな神社にお参りするくらいになった。安曇野に住むようになってからは、穂高神社

          272回 新春万福