第21回 準宝石の螺旋のように


パワーストーンという言葉が一般的になったのはいつの頃からだっただろう。
水晶にしろラピスラズリにしろ、以前は一部の好事家のものであったのが、いまでは様々な石のブレスレットを着けている人を普通に見かけるようになっている。
鉱石マニアでなくても、ターコイズ、オニキス、アメジストにローズクォーツなどは名前は聞いたことがあるというくらい、最近では石は我々の日常に溶け込んでいる。もう少し興味がある人だと、石の効能まで聞かせてくれるかもしれない。ローズクォーツは恋愛運を上げるよとか、シトリンは金運アップだとか。魔除けならターコイズ、いやラピスの方が最強でしょう、などと言うようになれば、もう立派なパワーストーン好きと言えるだろう。
そもそもどの時代どの文化に於いても、貴石・半貴石に力が宿るという考えは結構見受けられる。これは単純に美しいからという理由が大きいと思われるが、古来から石は人類を魅了してきたのだ。貴石と半貴石の違いはモース硬度と希少性だが、高価な貴石でなくてもどの石もユニークで眺めるのは楽しい。

ニューエイジやスピリチュアルと言われるものには興味がない私だが、石自体は大好きなので結構集めている。
なかでも特別思い入れがあるのが、ハーキマーダイアモンドだ。ダイアモンドと名が付いているがこれは水晶の一種で、アメリカのニューヨーク州ハーキマー地区でのみ産出される特殊な水晶がこう呼ばれている。普通の水晶とは異なり、最初から両端が尖った18面体のダブルターミネイティッドという形で産出され、優れた透明感と強い光沢感を持つ。ドリームクリスタルと呼ばれることもあり、予知夢を見るだとか悪夢を祓うだとか言われているが、下手な効能よりもまずこの石自体の美しさを愛でてほしい。
レアストーンというほどに稀少ではないが、それなりに特別な石であるハーキマーダイアモンドは、水晶という性質上ひんやりと冷たくどこまでも透明で硬い。その上両刃の劔のように尖った先端は、触れるのを躊躇うほどりんとして屹立している。
私が考える少女性というものは、このハーキマーダイアモンドに良く似ている。なぜ優しい色のロードクロサイトでもサンタマリアアクアマリンでもなく、ハーキマーダイアモンドなのか。なんらかの色が予めついていない無色透明の水晶だからこそ、どんな色とも対等に対峙できるところ。一本筋の通った強靭さをその中に秘めながらも、あらゆる光を透過させる柔軟さも備えているところ。そんなところが少女というものの本質を想起させるからなのである。
そしてただ透明であるのではなく、大なり小なり何らかの内包物を有しているところも。完全無欠ではない、この瑕疵もまた少女らしいではないか。

信じた価値観は譲らず、繊細でありながら決して弱くはない。
そんな精神の在り様こそ「少女」というものに不可欠であると考えている。


登場した用語:モース硬度
→鉱物に対する相対的な硬さの尺度としてよく用いられるもので、当然ダイアモンドが一番硬い10になる。硬さと割れやすさというのは別物なので、以外とダイアモンドは強く叩くと割れる。ちなみに水晶のモース硬度は7。
今回のBGM:「THE FRAGILE」by NINE INCH NAILS
→硬い。なんといってもインダストリアル・ロックだ。うちでは工事現場と呼ばれている。音のクリアさ・粒立ちが素晴らしく、爆音で聴いていると気持ち良くてトランス状態になりそうである。モース硬度10だと思う。

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