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『投資家の日常は、いとをかし。』 #3 2024年2月 前編テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。


年始からの株価上昇が止まらない

renny:1月の収録でもお話したかもしれないですが、日本だけではなくアメリカも相変わらず株価が高いというか、バブルの頃の最高値を超えそうになっていますが(収録日は2月19日)、吉田さんはどんなふうにご覧になってますか?

吉田:指標はあまり見てないんで、わからないですが、自分の運用成績が今年に入ってから異常な状態で、たぶん2割以上増えちゃっていて。そろそろ投資始めて24年になりますが、1ヶ月間で増えた額として過去最高だと思うので、なんだこれは?っていう状況ですね。

renny:僕は1月に追加で投資をしたんで、それが取得価格を引き上げるようなところがあったんで、そこまで増えてはいないですけれども、確かに単月で見たときに高い数字になった株価の状態でですね、なかなか新しい投資を手控えたいな、という時期かなと思います。1月2月で何か追加で投資をすることってありましたか?

吉田:いや、何もしてないです。

renny:僕は昨年12月に旧NISAが期限を迎えたものがあって、それを換金して年明けに新NISAで取得しようと1月にちょこちょこ買ってたんですけど、日本株のファンドを買うには株価の急騰にちょっとついていけないなと買えずにいます。金利の問題とか岸田首相の人気のなさを考えると、今は株価を下げるようなことはしたくないんだろうな、というようなこともあって、しばらくちょっとこういう状態続いちゃうのかな。外的要素、例えば為替がどうなるかっていうのはあるとは思うんですが、円安になる分に関しては、むしろ株価上がっていくのかなと思うんで、次の買い時は3月決算が出そろったあたりで、来期の見通しとかってすごくコンサバに出す会社が多いでしょうから、そこで何か売りが入るのかなとか、そこを乗り切れるとちょっと買うタイミングというのがないなと思って困ってます。吉田さんはもうとにかくなすがままという感じですか。

吉田:そうですね。それにもう今年はこれ以上増えなくてもいいや、みたいな感じになっちゃったので、あとは米ドルの定期預金とアメリカの長期国債でも買うぐらいで、今年の投資は終わりでいいかなぐらいの感覚ですね。

renny:株より債券というような感じなんですね

吉田:はい。

renny:ただ一方でアメリカのインフレが収まってないんじゃないか、みたいな話もあって、もうちょっと逆方向も考えないといけないんじゃないか、みたいな声もちらほら出てますよね。

吉田:そうですね。今ちょうどみんながビビリ気味なので、債券は今かなとは思ってるんです。

renny:債券の利回りが下がれば、債券の価格も上がっていくっていうことになると思うんで。基本的には下げる方向に行くということみたいなんですけど、どうなるのやらっていうような感じですかね。

配当を重視した投資について

renny:今年から新しいNISAが始まって、世間的には「オールカントリー一択」という話がある一方で、高配当の企業をNISAに入れる、あるいは高配当の会社を集めた投資信託でかなり安い信託報酬で設定されてるものが結構話題にというか、目に留まることがあって、ちょっと配当について吉田さんのお話をお聞きしたいなと思ってます。というのは、吉田さんの20数年の投資の中で、配当を重視されてるみたいなお話も目にしたことがあったんで、配当についてお話していただけますか。

吉田:2016年ぐらいまで、投資を始めてから15年から16年ぐらいまでの間は配当を重視して投資をしていて、年間決まった額ではないですが、大体決まった額の配当が入ってくるようになると、下げ相場の時にも精神的に落ち着いて投資に向き合えるようなるという効果もあります。

renny:そのときは配当利回りを気にされてましたか?

吉田:見てましたけど、配当利回りっていうより、どちらかというと連続して増配してるかですね。

renny:株価に対する配当の額ではなく、配当の支払い方みたいなところに注目されてたって感じですかね。

吉田:ただそういう企業って、めったに株価が下がらないんで、リーマン・ショックの時にごっそり買いました。

renny:たしかにリーマン・ショックの頃は安定配当をしてた企業も業績に対してどういうインパクト出るか?配当が維持できるかどうか?という経済環境だったと思いますが、そこら辺はどういうふうにご覧になってたんですか?

吉田:あまり気にしてなかったですね。生活必需品の手堅い会社、たとえばP&Gとかから投資をはじめて、もう少し考え方を広げて、世の中のインフラとして必要な会社に、という投資の仕方だったので。

renny:いくら経済が不透明になっても、ここの商売は間違いなく続くだろうというようなところで、しっかり配当がされてる会社を、ということですね。P&Gのお話をされましたけど、個別の会社でですね、投資されてた中で印象に残ってる会社とかってありますか?

吉田:印象的っていう感じでもないんですけど、リーマン・ショック時に結構大きな額を投じたのはジョンソン・アンド・ジョンソンでしたかね。生活必需品の中でも社会的に信用されている会社を選んでいきました(今で言うESG投資のような感覚で)。この先10年後も必ず社会から必要とされるであろう会社を選ぶっていうのを重視してたんです。

renny:でも今出てきたのはいずれも米国企業でしたが、日本企業で配当はそんなに意識されてなかった感じなんですか。

吉田:最近はちゃんとしてきたんですけど、当時の日本企業はなんかよくわかんない配当の仕方をしてる会社が多くて…

renny:そうですね、安定配当もありますし、赤字配当みたいなのもありますからね。

吉田:そうなんですよね。結局リーマン・ショックの頃に買ったのはトヨタ自動車ぐらいじゃないかな。

renny:日本でも連続増配企業もあったりすると思うんですけれども、あまり気にならなかった感じですか。

吉田:連続増配の日本の代表格に花王が出てくるんですけど、花王とP&G比べたら、P&Gが欲しくなっちゃう。

renny:今現在は投資判断において配当をどれぐらいで考慮されてるんですか。

吉田:今はそれほどでもなくて、2016年か17年頃から配当を元手に、成長企業とくにIT企業に投資してます。実はそれまではいわゆるIT関係の企業にほとんど投資してなかったんです。

renny:逆に言うとIT関連の企業ってあまり配当しない会社が多いですよね。

吉田:そうですね。今まで築いた企業から出てくる配当を元手に、無配当の会社の株を買っていくっていうような形ですね。

renny:なるほど。そこがお聞きたかったんです。配当でキャッシュが来るわけじゃないですか。それをどういうふうに扱われてたのかなと。2016年17年頃からはITの会社に投資されるというお話でしたが、それ以前の配当はどういうふうに扱われてたんですか。

吉田:それは再投資みたいな感じですね。

renny:同じ会社に再投資っていうような感じですか?

吉田:同じ会社だったりしますし、P&Gの次はユニリーバにも投資してみてとか、、、あの頃はリーマン・ショックの時にP&Gを買って、何年か経って今度、欧州債務危機があったときにユニリーバを買ってとかだったかな。

renny:P&Gとかユニリーバはずっと持たれてるんですか、それとももう今手放されたんですか。

吉田:今もずっと持っていて売ったことがないです。

renny:なるほど。P&Gは15年以上ですね。リーマン・ショックのタイミングからいくと、その間ずっと配当は受け取って、受け取った配当を別のITの会社中心に投資するっていうような。

吉田:そうですね。生活費として必要なる状態にならなかったから、っていうのもありますね。

renny:なるほどね。すごく不思議なのは今例えばNISAで高配当というか配当がより多く出るような会社に投資される投資家がいますと。それでその人たちは配当もらってそれどうするのかなと。もちろん生活費に充てられることはあるのかもしれないですけれども、仮にそういう使い道がなかったら、その配当どうすんのかなっていうのが素朴な疑問だったんです。

吉田:でもその方が何を目標にしてるかわかんないですけど、例えば年間200万円の配当を目指しているとかいう目標があるならいいのかな。働いて得られる給料って自分が病気になったり、人間関係で失敗して急になくなっちゃったりする。それに比べたら、いろんな会社に分散投資して、配当が100万、200万入ってくるんだったら、それは人生の選択肢が広がる土台ができるみたいな感覚だと思うんで、そこまで考えると結構賢いかも知れないですね。(補足:私自身も受取配当額が増えてきたから、普通の仕事をやめて格安の報酬でNPOの運営を引き受けるという選択ができたところがあります。)

renny:でも年間200万円を配当利回り4%で逆算すると5,000万円ぐらい必要になっちゃいますよね。

吉田:だから株価が安いときに買わないと意味がない。安い時に買って増配していくのを10年ぐらい待つ必要がありますね。

renny:そうですよね。だから今、配当利回りが良かったとしても、配当の持続性みたいなんて問題も当然あると思うんで、利益の成長が見込みづらいような企業を今の数字で投資するのは、ちょっと危険かなと思ったりはしますね。

吉田:今の時点の配当利回りからだけ見て、例えば配当利回り上位20社に投資します、みたいなことをやるとたぶんダメ。

renny:そうですよね。でも増配や配当還元に関してちゃんとポリシー持っている会社は株価が安くならないですよね。あとそもそも先行きが危ういから株価が安くて、結果的に配当利回りが高くなってるっていう企業もありますよね。

吉田:いっぱいありますね。

renny:だからそういうのをちゃんと見極めないと。僕も昔っていうか、投資始めた頃に配当に注目して、少しだけ個別の会社を買ったことがあって、その代表格が東京電力だったんですよね。

吉田:あーッ!

renny:東日本大震災で株価がドーンと下がって。。。ちょっとね東京電力のケースは特殊ですが、配当利回りだけ、今の数字だけを見て決めるってのは。ちょっとしんどいかもしれないですよね。

吉田:そうですね。今みたいに相場全体が良いときに投資するものではないかなっていう印象はありますね。

renny:だからそういう意味ではリーマン・ショックみたいなことが仮に起きるか、というと今の感じだとそこまでのことは起きないかも、もどうなのかな、わからないですが、そういうのが来たときに吉田さんは備えられていると。

吉田:そうですね。去年の春頃もアメリカの金融機関が破綻しましたが、たぶんあの問題は根本的には解決されてないんで、どこかでまた表に出てくるだろうなとは思ってるので。

renny:単純な計算からいくと、今、アメリカの10年国債って4%、4.数%ぐらいだと思うんですけど、一方でS&P500のPERとか見ると、ほぼリスクプレミアムがないに等しいぐらいの水準になっていて、ゴムを伸ばしすぎてパチンといきそうな感じがしてならないというか、それに比べると日本はまだ金利がないような状態なので全然余裕なのかな。

レストランがインパクトレポートを公開

renny:このポッドキャストでは今年から株式投資にこだわらず、いろんな「をかし」と思ったことをお話していますが、ここ最近、吉田さんの中でこれは!ということはありましたか?

吉田:昨年末にインパクトレポートを出したレストランがあって、たぶん初めてのことだったんじゃないかなという例が、表参道のミシュラン三ツ星のフランス料理店「レフェルヴェソンス」です。

吉田:生産者さんの取り組みを紹介したり、自分たちが料理をしていく上で、ゴミが何キロ出て、電力はこれぐらい使って、どれだけ二酸化炭素だけ排出しましたとか、上場企業が最近のESG投資の絡みで発表しているようなデータをレストランが出すっていうのを初めて見て、この店には行ってみなければ!と思ってるんですよね。

renny:他のレストランと明らかに違うようなところがあるんですか。環境への負荷のかけ方は食材とかその生産者の人がどういう人だっていうので、よっても違ってくるのかもしれないんですけれども。

吉田:たとえば余った食材を発酵させてパンの種に使ってるんだったかな、それでパン屋さんをはじめてみたりとか。

renny:三ツ星のレストランがそういうことをやられてるのですね。

吉田:だから三ッ星だけじゃなくて、グリーンスターという環境にやさしいレストランの称号みたいなのもついてるはずです。

renny:そんなのがあるんですね。レストランといえば家畜というかよく牛のゲップの話を思い出してですね、ああいうのも環境に負荷がかかってると認識してるんですけれども、でも間違いなく牛肉が出てくるんでしょうから、あとフレンチだったらあんまり水産物を使わなかったりするのかな、って思ったりもするんですよ。

吉田:高級フレンチって、今まではフランスから高級食材を輸入していたんですが、これからはそういうのはやめようっていう方向なんで。輸送で環境負荷がかかるから。

renny:地産地消みたいな話ですね。だからそういう意味では、東京ではなく食材が近くにあるようなところにお店を構えるっていうのも環境に負荷が少ないっていうことになりますよね。日本の場合、ロジスティックスにかかる環境負荷は相当ありそうですし。

吉田:だからフランス国内でも有名なシェフがパリに店を出すんじゃなくて、地方に移転するとかっていうのも結構あるみたいで、そこを目指して旅行をするみたいな、食が中心の旅行みたいなのが結構流行ってるらしくて、日本でも広めようよみたいなことを活動してる人もいらっしゃいます。

renny:すごくヨーロッパ的な発想ですね。そういうのもありかもしれないけど、お店が自分で発信していかないと、なかなか難しい。発信力問われますよね。インパクトレポートを出すレストランって、後に続くようなとこ出てくるんですかね。

吉田:どうなのかな。レフェルヴェソンスは1人36,000円ってお値段だからこそ、環境配慮までできるんだろうなと思います。1人5,000円とかのレベルだと、そこまで配慮するのは難しいだろうな。

renny:レストランの話で思い出したんですけど、最近、北海道のニセコとかで、インバウンドのあおりを受けて、外食産業の値段が上がるは、周囲の町から人がそっちに移動して、周囲の町がなかなかやりくりつかなくなるとかっていうようなことが起きているそうです。日本の外食は安すぎるよねと徐々に認識されている一方で、まだそういう話は普段の生活からはあんまり感じないんですけれども、吉田さんは感じられますか?

吉田:ものすごいです。要因は外国人だけじゃなくもちろんインフレもあり、あとはコロナのときにお酒を出すなっていう話が出たじゃないですか。飲食店のビジネスモデルって料理の値段を安くしておいてお酒で稼ぐような形だったのが、コロナを機に料理の値段を上げようっていう方向に移ってきた印象ですね。私はお酒飲めないから、値上げをダイレクトに感じますね。

renny:なるほど。

吉田:まぁこれが適正な値段だったんだなと感じていますが。

renny:僕はそういうお店にあんまりお世話になってないせいで、そういうインパクトはあんまり感じてないんですけど、やっぱりそういうふうになってるんですね。

吉田:そうですね。私は天ぷらが大好きなので、油の値段も上がってますし、食材も魚も手に入りにくくなってるっていうのもあったりするので、7年前と比べると7割ぐらい上がってます。(補足…食材値上がりの一例として「きす」の話↓)

renny:倍近くになってるってことですか。普段チェーン店の価格しか見てなくても、確かにマクドナルドでも値上げを続けてるという話もあるけど、そこまでではない。

吉田:ちなみにさっき紹介したレフェルヴェソンスも、コロナ以前はランチは1人10,000円だったんですよ。それコロナを機に環境に優しい調理法を追求しようと厨房も全部やり変えて、36,000円に変わったという状況です。

renny:マジでそんな感じなんですね。なるほどそれはすごいな。

後編へ続く

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