おれが2年半サラリーマンをやって来れたのは運がよかったから part.2

おれは興味があることにはとことんのめり込むが、興味がないことには見向きもしないタイプの人間だ。

だから、長い付き合いの先輩の仕事のことを全く何も知らなかった。

その先輩の会社に就職が決まったときも特になにも調べず、先輩に仕事の内容を聞いても「ルートセールスだからそんなにキツくないよ」とのことだったので、(ルートセールスだからそんなにキツくないんだ・・・)と受け止めて、ルートセールスがなんのことだかよくわからないまま、楽で給料高くて正社員ならなんでもいいや!と不安を振り払うかのように、3年間の実家暮らしで貯め込んだ貯金で一人暮らしの準備に追われた。

結論から言うと、入社してから1年間は最高だった。

最初の頃、その当時配属された営業所に居た面々の社会人としての意識の高さに戸惑った。
入社する前に社会人としての立ち振る舞いやマナーをネットで調べて実績していたが、全然準備が足りなかったみたいで、色々注意された。
とりあえずおれは、挨拶だけは元気にして爽やかさを演出した。。

それが功を奏してかはよく分からないが、社内の人間関係にもなんとか溶け込み、仕事も順調に覚えた。
飲み会や社交(麻雀、フットサル、ゴルフ、etc.)、日々の業務をこなしていくうちに見えてくるものが沢山ある。

まず、ルートセールスというのは既に弊社の商品を契約しているお客様先に定期的に納品やメンテナンスに伺うのがメインの業務だが、その契約しているお客様を増やすための飛び込み営業というものがある。
業態によって違いがあるのだろうが、おれが入った会社はその飛び込み営業で得る数字が評価の大半を占める。
つまり定期的な作業もしつつ営業の成績を伸ばさなければならないゴリゴリの営業会社だ。

それに、新人研修の合宿で一堂に会する同期たちの中で研修の先生が野球部の人手を挙げてと言ったら25人中20人が野球部というゴリゴリの体育会系である。。

おれも小、中と野球、サッカーを嗜んでいたがメンタルは根っからの文化系男子だ。
話が全く合わないし、ノリに付いていくのが疲れる・・・

体育会系の営業会社でなにが生まれるかというと、それは勿論「競争」だ。
出世というポジション争いに競合他社との顧客の奪い合い。
数字は嘘をつかないし差は顕著に現れる。
できる社員、できない社員の明暗はくっきり別れる。

おれは最初の頃は意識高いイケイケの新人を演じていたので、できる人たちの輪に呼ばれる。
営業の話やなんだか意識の高い話、そして俺たちが会社に金をもたらしているのに数字を持ってこない連中はなんなんだといった悪口・・・

はたまたできない人たちの輪の中は中で、言い訳や開き直りや悪口、悪口、悪口・・・

どちらの気持ちも分かるけど、大きな組織の中で色んな人が集まれば考え方の違いは生まれる。
違う考え方を持った他人をひたすら悪く言う会話は面白みに欠けるとおれは思う。

そんな軋轢を抱えつつも、一年目は会社に入ったタイミングがよかったのか全てが上手くいった。

おれを紹介してくれた先輩が他の営業所に異動した後釜として同じルートを引き継ぎ、先輩が仲良くしていたお客さんとそのまま仲良くなれた。
先輩が異動しておれに引き継ぐまで代わりにルートを回ってた上司は次に入ってくる新人(つまりおれ)のためにあらかた営業しやすいところの目星をつけてくれていて、その上司の言う通りにしていれば数字も上がった。

プライベートも充実していて、平日の夜は会社の先輩たちと遊び、休日は大学や地元の友達と釣りやキャンプに行ったり、女の子とライブに行ったり夜の街に繰り出したり、仲良くなったお客さんとバンドを組んで地域のお祭りでライブしたり・・・

まさに絵に描いたような順風満帆のサラリーマンライフ。

さらに研修期間が終わり半年が経った頃、自分のルートの大型ショッピングセンターの大改装が完成し、新しいクリニックモールも建ち莫大な営業成績が入った。
そこに新人特有のフレッシュな営業でかなり業績を伸ばし、その半期の表彰式で表彰された。

普通の社員じゃ一生かかっても手に入れられない人もいるという営業成績の上位に入った社員が貰える営業賞、新人賞、優秀営業所という三冠を大した苦労もなく手に入れた。。。

それでもおれは先行きに不安を感じていた。