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ジュリーの世界

"浮浪者であって、浮浪者でない。河原町のジュリーは、やはり、この街の中で特別なのだ。いや、もしかしたら、それを受け入れている京都の人々が特別なのか。"2021年発刊、京都本大賞受賞の本書は実在のホームレスにして今や伝説的な人物を題材に70年〜80年代の京都を描いた良作。

個人的には京都本大賞受賞を機に手にとってみました。

さて、そんな本書は1960年代から1980年代に四条河原町付近を徘徊していた実在のホームレスにして、いつしか地元出身の当時大人気だった沢田研二のニックネームから【河原町のジュリー】と呼ばれた人物。そして円山公園で凍死後に、2000年代にネットを中心に【当時の京都を象徴するリベラルな存在】として半ば伝説化した人物を後景に、警察官の木戸、バーで働きながら写真も撮る柚木、サザン好きな少年、池島を主な語り手にして【1970年代の京都カルチャーの様子】が色濃く描かれているのですが。

まず、今も続く『六曜社』かってあった『ほんやら洞』などなど。本書には京都を代表するカルチャースポット、飲食店がこれでもかと京都豆知識を挟みながら登場するので『かっての京都』をリアルタイムで知る人は懐かしくてたまらないんじゃないか。と思いました。

また、タイトルでもある『河原町のジュリー』を語り手に過去の太平洋戦争での従軍の様子も描いているとはいえ、京都で【ホームレスになってから何を考えていたか】は専ら読み手の想像に委ねられているところも良かったです。

70年代、80年代の京都を懐かしく思う方はもちろん。全ての京都好きにオススメ。


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