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未来からのホットライン

"ふたりがいっしょにいられるかどうかさえも、たしかめる方法はない。彼をおびえさせたのは、その思いだった(中略)『忘れてなんかいなかったわ』と、彼女はいった。"1980年発表の本書はSTEINS;GATEの元ネタ、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||でも再注目されている時間SF傑作。

個人的には著者の本はデビュー作の『星を継ぐもの』につぐ2冊目として手にとりました。

さて、そんな本書はスコットランドの古城の地下室で老科学者が開発したタイム・マシン?【60秒過去の自分へ、6文字までのメッセージを送るプログラム】の実験に巻き込まれる、老化学者の孫にして数理物理学者のマードック、そして日本は大阪(!)生まれの親友のコンピューター技師のリーの2人のアメリカ人+猫のマックスウェル)を主な語り部にして、80年代のハードSFとしてタイムパラドックスによる危機が描かれているわけですが。

まず、テクノロジーが飛躍的に発達し、大容量データが飛び交う現在感覚から見ると、タイムマシンはおろか、ラストの五十メガバイト(!)にも【懐かしさや古さを感じるし】実験を繰り返しながら仮説を検証していく【展開もやや冗長に感じる】ものの、こちらがそもそも先で、かつ『セカイ系』ではありませんが。まんまプレイしたこともある人気ゲーム&アニメSTEINS;GATEなので、胸熱というか【おお、これが元ネタなのか】と感慨深いものがありました。

また2021年現在、劇場公開中の新劇場版エヴァンゲリオン4部作の最終作『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』英語版サブタイトルとして、【本書の原題『THRICE UPON A TIME』が使われている】ことから、作品解説や考察記事であらためて注目が集まっているわけですが。『存在しなかったこと』と世界をリセットするも【どこかで『ちゃんと覚えている』描写がある】本書。鑑賞済の新劇場版を思い出しつつ、WEB検索での本書と絡めた感想も楽しませていただいていたり。

古典ハードSF、タイムパラドックスSF好きな方。あるいはSTEINS;GATEやエヴァンゲリオンが好きな人にもオススメ。

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