見出し画像

名作すぎて手が出ない、三国志

読もう読もうと思ってもなかなか手がでないのが往年の名作というもので、そのなかでも特A級の重厚さを誇る三国志は多くの知人友人からおすすめされていたにもかかわらず読む機会がなかった。
おすすめされたから読もう、という気軽さで読み始めたら無礼千万!と突き返されそうな分厚さ(巻数)だし、そもそも中国史をいまいち理解していないので、どうせ読むなら司馬遼太郎とか浅田次郎的な日本の歴史小説を、と思ってしまう。三千年の歴史とか四千年の歴史とか、歴史積み重ねすぎだよ中国。それでも昨今はキングダムという大人気漫画のおかげで中国史も身近なものとなり、そういえば封神演義も大好きだったことを思い出し、さらにいうと旅行で兵馬俑(秦の始皇帝のお墓)にも行った。なんだ自分って意外と中国好きなんじゃないか。

ということでまとまった時間もできたのでいざ開戦。第一巻はしがない町民である劉備玄徳が母親のために茶を買い求めに行くところから始まる。三国志については三國無双(ゲーム)の知識しかなく、私のなかの劉備はきらびやかな服をまとった蜀の総大将。そんな彼の始まりは武将でも武士でもなく、ただの凡夫。まじかよ。衝撃。茶を買う道中で世紀の大悪党・黄巾賊と出会ったことをきっかけに、様々な敵、味方と出会い、劉備は成り上がり道をすすんでいく。

読み進めて感じるのは、長編小説の良さでもあり悪いところでもあるのだが、登場人物がかなり多い。そしてけっこう丁寧に描かれた人物もばんばん死んでいく。さらに衝撃なのが、みんな自己中で、そんなことしたら絶対失敗するよということを平気で繰り返す。そして死んでいく。この直情さ加減は、なんだか神話を読んでいる気分である。そのなかで誰よりも理性で動く劉備がとりわけ輝いて見える。完全な主人公である。

最近の小説では、直情的なキャラクターが少なく、頭で考え行動する理性的なキャラクターが多い気がする。感情にまかせて動くことが良しとされない世の中であるから、そういう人物はあまり共感されないのだろうか。どこまでも理詰めで作られ、物語から神さまがいなくなった感じがして、少しさみしい感じもする。

まだ三国志の旅は半ばで、とうとう呂布が死んだほどのところを歩いている。劉備はまだ一武将だが帝に気に入られ、その聡明かつ義に厚い性格から一世の英雄と目され、覇権を手に入れんとする曹操の部下たちから煙たがれている。これからいよいよ魏呉蜀の三国時代になっていく予感がする。

いつになったら諸葛亮孔明は出てくるだろうか。趙雲子龍もまちどおしい。十数年ものあいだ読もうとしなかったのに、気がつけば三国志ばかり読んでいる。往年の名作は、やっぱり名作である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?