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10年ぶりにブックオフで再会した

高校生のときに読んだ本と、10年ぶりに再会した。

最初はまったく気づかなかった。先入観ゼロで読み進め、あんまり面白いもんだから、この本すごく面白いよと母に薦めたら「あんた高校生の時にも同じ本薦めてくれたじゃん」と言われ仰天した。

しかし、そう言われて内容を振り返ってみるも、まったく思い出せない。本当に読んだことがあるのか? そんな自問自答が口に出てたようで、「あるって。わざわざ二冊目買ってきて私にくれたんだから」と母に念を押されてしまった。

再会したのは地元のブックオフ。10年前から続いていて、高校生のときもよく利用していた店舗である。
ここ数年は引っ越しばかりしていて、平成の葛飾北斎だな、がはは、と調子に乗りながら引っ越しのたびに持ち物を捨て、本を売り、みるみるうちに荷物は減っていく。最終的にスーツケース一つで行動するようになり、本はKindleのみになっていた。

しかし、基本的に買った本はいつまでも本棚に収めていたい側の人間である。それがお気に入りの本ならばなおさら。何度も読んで、味わえるだけ味わって、もうおなかいっぱい。となるまで読み込んで本棚の上のほうに入れておく。そして何かのきっかけでまた手にとって、ああこの本好きだったなと感慨にふける。そんな楽しみ方をするのが何より好きだった。

ようやく北斎生活もひと段落つき、久々に本を集めようと思ってブックオフに赴いていた。
さて、どんな本を買おうか。振り返ってみれば自分は目先の話題作ばかり読んでいて、過去の名作を読んでいない。じゃあそういうものを。ということで目についた傑作、名作を手に取っていった。古事記、日本書紀、金枝篇、詩学、吉川英治、フィリプ・K・ディック、スティーブン・キング……そのなかの一冊に吉本ばななの『キッチン』があった。

家に帰り、1番薄い本から読みはじめる。『キッチン』だ。二回目だとはまったく気づかずに読み始め、二回目と気づいてからもまったく思い出せずに読み進めた。そのまま読み終わり、こんな素敵な本を覚えてなかったのか!と情けなさを感じつつも、こんな感動を再び、まっさらな状態で味わえたことがとても嬉しかった。
 
10年前に買った『キッチン』をいつ読んだのか、いつ手放したのか、どれだけ考えても一ミリも思い出せない。ブックオフで売ったのか、誰かにあげたのか。神のみぞ知るところである。
ひとつ確実なのは、10年前も『キッチン』を読んで感動したということだけ。母親に薦めたくらいだし。

今回の『キッチン』は友人にあげた。

本棚に収めて味わい続けるんじゃなくて、きれいさっぱり忘れて、何かのキッカケで手に取った時にまっさらの状態で楽しむことだってできる。そういえばカズレーサーが読んだ本は売って、読みたくなったらまた買うと言っていた気がする。そんな楽しみ方もいいよな、と思えた再会だった。


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