ニコルの事があって、「自分がホントに立たなくちゃいけない」と思った。

その日、もうすぐで我が家という、近所のお宅の前を過ぎる時、小さな子が泣きじゃくっていた。お母さんは洗濯物の取り込み中で。少し珍しく暗い表情で、ため息交じりでお子の所へ抱きに行っていた。

抱かれたお子はワン達を見せられてすぐに泣き止み、いつものように「バイバイ」と言って、我が家へ帰宅・・・。

門扉を開けてすぐに玄関へ早足で引っ張ろうとしているニコルの様子に「どうした？」と、そこから”？”が始まっていた。

扉を開けると一番に入り込み、いつもならそこでリードを外し、足拭きの準備をしている間は皆と待っているのだけども、待たずに家に上がって来てしまう。何度降ろしても上がってくるその様子が「ねぇ、どうしたの？」と、手を動かしながら玄関の先を見るニコルの様子に注目していた。

私は何も感じなくても、きっとこの子は何かを感じるんだろうと、一応その場と部屋をティンシャを鳴らしておいた。

夕方。私が横になるとワン達はその周りで寛ぎ眠るのだけども、ニコルがムクッと起きてお尻を着けて座る。震えている訳じゃないけど、何か緊張している感じ。

横になったままその後姿を見ていると、少し前方を何かを追うような小刻みにアタマが横へ動いていくのを見ていた。眼鏡をはずしている事もあり、私には何も見えない。何も感じない。犬だって視力は良くない事も考えて、「音」を追っているのかと耳を澄ましても、いつもと変わらずの音位しか聞こえてこない…（飛行機の音）。

その後も主人の帰宅後にその話をしておいて状態は把握してもらっていた。「ニコル、ニコル…」と当然ありがちな対応をしようとする主人に、「気にはなるけど、いつも通りにしてあげて」と、普段と変わらない”フ～フフ～～ン”というマイペースで協力してもらった。

「・・・、上がって来たよ」

いつもなら私のそばにいる事が多い時間帯に、スマホをいじる主人の脚の上をニコルが占領して座り込んでいた。

「いつもそんな事、しないからね」

様子が違う事だけを確かめていた。「ニコルの様子」で見たこれは数日続いていた。

これ自体へできる事は特になく、変な勘繰りをする事もなく、すぐに「自分との関係」に気が向いて行った。

（ボクは寝るzzz～～）

我が家に来たのも月齢が進んでからの子で、でも特に何も手こずる事なくいつも「良い子」でいてくれて私にとっては「非常に助かる子」だった。基本的に教えた事の呑み込みが早く、その度”ご褒美”がもらえるから食いしん坊のニコルは私のそばにいる事も多かった。

原因を探った事はないけども、昔から何度かデリケートな状態を見せられていて、どうしてそうなるのかは判らず、ただ少し心配気味に様子を観ていた。そんな所のあるニコルだから、たまの”悪さ”をしても「ダメでしょうよ(*^^*)」と、ヤンチャなピースとは態度を自然と変えていた。

（ニコルとの関係は頼りにされるもあるけども、「報酬欲しさ」という面がある事も気づいていて、その関係を変えたいと何年か前に一度意識に上げている。）

そういう私の接し方を直そうと、「気になる」度合いが強く・濃くなるの気配を感じた時に、思い切り「私」のままでいた。

普段だったらもっと、もう少しニコルを撫でているだろう、褒めるだろう、という状態のそれと比較すれば「冷たい」態度で接した。ただ自分がピシッと、他の子よりも幾らか傾くような気持ちの時に、真っ直ぐのままに徹しただけ…他の子との差をなくしただけの事。

自分が真っ直ぐに立ったままにしていると、相手の傾きもその様になる。というより、ニコルがその様に見えたのは「私が傾いている」という事の現われと、私にはその様に見えた部分を「自分の在り方」として直したかった。

ニコルが特別な訳じゃない。他の子もそれぞれに可愛いし、個性的で本当に色んな事を見せて教えてくれる存在なのだけど、何かニコルには、この子の目をジッと見ると、中にカンタンに入って行くような奥行きを感じたりするし、心を持っていかれる（笑）

他の子のそれも心がキュンなんてするのだけども、比較的軽く・浅く、すぐに離れる（？）感じでちょっと、やっぱり雰囲気が違うもの。

自分の心を持っていかれない様に、ココにぶっ刺しておく事って、意志を持って行わないとフラ～っと行っちゃうもんです(*^^*)　だってホントにみんなの顔を見てると可愛いもの。

それが何か悪い事なんじゃなくて、それによって長引かせる事もあるから。そんな風に思って、これも自分の学習へと変えました。

ニコル、ありがとう。

（ボクは飛ぶ～～）

「犬は人に影響されやすい」というのは、人と犬の昔からの関わり方（関係性）からも当然で、見えない領域を感じ取ると私も思っています。