タダシ「CO-WORKING TITLE」Vol.2インタビュー【前編】
二ヶ月連続のシリーズライブ「CO-WORKING TITLE」のVol.2を11月16日に開催したタダシ。Vol.1から一ヵ月というスパンにも関わらず、新たなコントの数々で会場を盛り上げた。
披露した全てのコントを振り返りながら、シリーズの総括までを語るインタビュー。チャレンジに溢れた今回のライブでタダシが掴んだものとは?
(取材・編集 / PLAN C制作部)
素晴らしいケミストリー
──10月のVol.1からわずか一ヵ月という間隔のライブだったわけですが、稽古はどんな感じで進んだのでしょうか?
僕はもちろん、つっきー(肝月)も本番が終わってすぐだったんで、スタートダッシュじゃなくてぼちぼちはじめていきました。つっきーはコントをやるのもはじめてだったから、とにかく基礎をじっくり固めて固めて、といった感じでしたね。
──Vol.1ゲストの橋本さんとは演出も変わりましたか?
それはもう全然違いました。ハシケン(橋本)は去年も一度共演していて、二周目だったから意志疎通がまだスムーズで、僕が言わんとすることをちょっとのワードで理解して組み立ててくれてました。でも、初回のつっきーとはなかなかそうはいかないんで、ままよと成り行きで練習するんじゃなく、ネタをブロック単位で区切ってきっちり説明しながら徐々に全体の流れを組んでいきました。
──やはりすぐコンビネーションは出せないわけですね。
全部一からですからね。ハシケンとはペースが全く違いました。そこが大きかったです。よく覚えてるのが、稽古の初期に僕の演出を受けたつっきーが台本に書き込みをしてたんです。最初はメモ程度だろうなと思ってどんどん話を続けてたんですけど、ものすごくきっちり書いてるのがわかってからは、書き込みが終わるの待ってから再開しました。「自分のテンポだけでやっちゃいけないな」って、ハッと気付かされましたね。
──それぞれのやり方・接し方があって面白いですね。
つっきーの懸命さがね、すっごく刺さるんですよ。一生懸命食らいつこうとする姿勢が五年前に出会った時から変わってなくて。ものすごいパッションで、「こっちもどんどん頑張らないとマズいぞ」って痛感しました。
──肝月さんの演技は本当に素晴らしかったです。
よかったですよね。五年越しの共演でしたけど、このタイミングで一緒にやれてよかったと思います。僕の方がぐっと年上ですけど、色々支えてもらいました。
──台詞覚えも肝月さんのおかげだったとか?
つっきーが先行してたんで、こっちも危機感持って早く覚えられたんです。だからあんまり苦労しなくて済みました。素晴らしいケミストリー(笑)。
──ライブ本番の手応えはいかがでしたか?
今回もよかったと思います。イメージしていたほぼその通りで終われました。客席とのあの距離感はやっぱりたまりませんね。プラセボの雰囲気じゃないと伝わらなかったところもたくさんあると思いますし、独特な盛り上がり方があるなって。改めて、あそこで開催できてよかったです。
──客席と言うと、今回は橋本さんがスタッフとしてついていて、一番間近で見ていましたが、プレッシャーはありましたか?
全然ない(笑)。「いるなぁ……」ぐらいの意識で。でも、ほほ笑ましく見守ってくれてるのはわかりましたから、心強かったですよ。つっきーのためにVol.1再現もやってくれて、いいやつです。
──肝月さんがVol.1の本番を見られなかったので、急きょ稽古で再現したんですよね。
そうです。終わって間もない時期に、稽古の時間を使ってつっきーのためにやろうって持ちかけて。一日限りの再結成、そして解散(笑)。
──「PLAN Cのハナシ」でも「すごく楽しかった」とコメントされてました。
本番じゃない開放感っていうんですかね。お互いフレッシュにやれました。
コントだからこそできる荒技
01.怪獣のバラード
地方の小さな町、怪歩町(かいほちょう)。観光課の毒島は観光客相手に町の名物を紹介していく。怪歩町の名物、それは誰も見たことがない大きな怪物「テテネテ」だった……。
──このライブの恒例になっていたコントタイトルをコールしてからのはじまりではなく、MCから徐々にコントの世界へ入って行くスタイルが珍しかったです。怪物の足音が少しずつ聞こえてくるという。
ちょっとお洒落な入り方にしてみました。そもそもネタの端緒になった部分でもあったんですよ。こういうはじまり方をしたら……っていうきっかけで書きました。最初は町民が主役の話だったんですけど、二転三転して最終的に観光課の人の話で落ち着きました。
──遊園地のアトラクションショー風の内容で、怪物の足音に合わせてものすごく動きましたね。
疲れました。体が温まってないうちにあっちこっち無軌道な動きを強いられるんで、もう終始息が荒かった(笑)。
──足音がクイーンの「We Will Rock You」的な、ドンドンパに変化するのも面白かったです。
あれは音響スタッフのアレンジです。好きに作ってもらったら、ああいう遊びが入ってて。それに合わせてちょっとだけフレディっぽい動きにしたり、いやー疲れたなあ……。もうそれしか感想がない(笑)。
02.ローラーボーイズ・ダイアリー
とある日記の朗読。日記の書き手である男子学生は、最近クラスメートの女の子に恋をしている。何とか彼女と仲良くなりたいが、なかなかうまくいかない。そんな中、彼女との些細な出来事が彼をどんどん勘違いさせていくのだった。
──ただの日記の朗読かと思いきや、終盤であっと驚く展開がありました。まさか拾った日記を読んでるだけとは。
このコントはそこに勝算があって、日記の内容が最高潮になったところでお客さんを「え?」って落としたかった。でも、日記の持ち主である「なにがし」の恋の奮闘を面白おかしくしないと効果が出ないので気をつけました。大きなアイデアだけが目立っちゃうのはよくないので。
──ちなみに一本目の「怪獣のバラード」も、「実は毒島のショーの練習だった」という劇中劇の手法で、続くこのコントもメタ構造でした。今回こういったどんでん返しのある作品を敢えて連続でやろうと思ったんですか?
たまたまです。出来上がったネタをVol.1と2に振り分けたら、こうなったってだけなんですけど、たまにはわざとこういうのが連続するのも悪くないかなって。ただ、二本目はちょっと斜め上を行きすぎですよね。メタっていうか、もうちゃぶ台返しもいいとこで。でも、コントだからこそできる荒技を楽しんでもらえたんじゃないかと思います。
ほんと安易にやったらアカンぞと
──「ローラーボーイズ・ダイアリー」が終わって次のMC中に、突然「プランシーショッピング」が入りました。ゲンタ・マクフライさんのZINE販促のためのショートネタです。プログラムにも載っていなかったのでサプライズでした。
結構ギリギリに決めたことだったんで、プログラムには書けなかったんです。マクフライもビックリしてましたね。ずっと前にあーうーの公演で粗品タオルっていう物販があって、販促の映像を作って幕間で流したことがあったんです。今回はそれの応用って感じですね。
──予め収録していた橋本さんの海外通販番組風のナレーションに合わせてタダシさんが動くという、これはこれでしっかりネタとして完成していましたね。
でも、あんまり練習してなかったんで口パクは超適当ですよ(笑)。意外と動きを合わすのが難しくて。でも、CMの効果で買ってくれた方もいてよかったです。
03.ひとりジャイブ~台詞編~
即興コントコーナー。観客から募集した「台詞」を使って、「色」をテーマにコントを作る。
鬼門!
──盛り上がったじゃないですか?(笑)
まあ大きく失敗はしなかったですけど、やればやるほどインプロの難しさを感じましたね。ほんと安易にやったらアカンぞと。
──Vol.1とはまったく違ったアプローチにしようと思ったのは?
前回の音編は「そろそろソロコント」からやってたことですし、違う方法で自分をまだまだ追い込もうと思ったんです。
──でも、さすがに色をお題にコントを作るのは難しかったんじゃないですか?
確かに稽古ではじめてやった時はあまりうまくいかなかったです。色のイメージが貧困で跳ねなかった。でも何度かやって、ちょっとコツを掴めたので本番は何とかうまくいきました。ほんとギリギリ何とか!
──各回を振り返っていいですか?
どうぞ(笑)。
──昼の回のリクエストが「エメラルドグリーン」と「赤」。プロポーズをする男性の設定で、心情を「真っ赤に燃えてる」と例えて、指輪をエメラルドグリーンにして。
こっちはまだシチュエーションも作りやすくて、プロポーズの言葉をお客さんの台詞にして、シンプルにやれましたね。
──「YOUTUBERは大変」の台詞は大盛り上がりでした。「価値観が合うって大事でしょ!!」もシチュエーションにピッタリで。
ピッタリくるのもあるし、面白いのもあるし、「なんじゃこりゃ」っていうのもある。ほんとこのコーナーはお客さんのセンスと運次第でしたね。
──夜の回が「虹」と「すみれ」。
こっちはキツかったっすわ……。どっちも「そんな色、言う?」って(笑)。
──結果、ツイてない男が虹を見て、人生の再起を図ろうとする話になりました。鼻歌で「すみれSeptember Love」も歌って。
正真正銘、苦肉の策でした(笑)。でもぶっちゃけ、こっちはスタートしてしばらくは「失敗するかも」と冷や汗かいてました。
──そうだったんですか?
台詞カードを使ってもあんまりウケなくて、場がしぼんでいくのを感じちゃって怖くなったんです。「これはマズいぞ。何とかしないと」って内心めちゃめちゃ焦ってました。
──そこから「おい、ハシケン!出てこい!」という台詞があり、客席にいる橋本さんを利用しながら話が転がりはじめます。
プランシーショッピングの下りでハシケンの紹介をして、認知されてたおかげですね。そうじゃなかったら誰のことかわからないお客さんもいただろうし、もうすべてがうまく回収された感じで助かりました。
──そして最後は、橋本さんに向けて「助けてドラえもーん!!」。
拍手笑いで終わりましたね。この回はオチをお客さんの台詞任せにしようと思って賭けてみたんですけど、ほんと運がよかった。コントの神様の横顔がチラッとだけ見えました(笑)。
<後編に続く>