タダシ「CO-WORKING TITLE」Vol.2インタビュー【後編】

二ヶ月連続のシリーズライブ「CO-WORKING TITLE」のVol.2を11月16日に開催したタダシ。Vol.1から一ヵ月というスパンにも関わらず、新たなコントの数々で会場を盛り上げた。
披露した全てのコントを振り返りながら、シリーズの総括までを語るインタビュー。チャレンジに溢れた今回のライブでタダシが掴んだものとは?
(取材・編集 / PLAN C制作部)

前編はこちら
https://note.com/plan_c/n/n2671a7ab7e60

つっきーに「可愛げ」を

04.beautiful japanese
美しく、奥ゆかしい日本語。それ故に、日常生活では色々と支障を来すものである。そんな場面をシチュエーションで再現し、対処法を紹介していくコーナー。

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──バラエティ番組風の、Vol.1の「あの時、君は輝いていた」と対を成すようなコントです。

最初は「あの時、君は輝いていた」の女性バージョンを作ろうと思ったんです。でも全然思い浮かばなくて、ネットを頼りにしようと「女性、カッコいい瞬間」って検索したら、「女性がドキッとするような男性の仕草」とかそんなんばっかりで。「違う! そういうことじゃねえ!」ってなって(笑)。それでこの内容になりました。

──でも、これはこれであるある系というか、「『よろしく言っておいて』の『よろしく』って何だろう?」とか、つい使っちゃう言葉をピックアップしていて面白かったです。

乱暴に言うと言葉狩りですな。

──このコントは肝月さんのアドリブも多かったとか?

結構色んなポイントでやってもらって、最後まで決め打ちしてないところもあります。僕は稽古でずっと笑ってたんですけど、本番が近付いてきたあたりでつっきーが、「何が面白いのかわからなくなってきました」って言い出して。何周もして見失っちゃったんでしょうね。

──そこでどういう言葉をかけてあげたんですか?

「基本になるボケがあったはずだから、そこを思い出してやろう」とか、そんな感じのことを言いました。ボケって色々手を尽くすとわけわかんない方向へ陥ることが多いんで、初心を忘れないようにボケましょうと。あと、このネタでちょっとした話があるんですけど、いいですか?

──何でしょう?

ケース1でつっきー演じる後輩が打ち合わせ先の会社に入ってくる下りがあったんですけど、あそこで扉を開けるマイムを自然と入れてたんです。僕は何にも指示してないのに。そういうちょっとしたディティールを気にするところがね、役者さんやなぁって。……すいません。

──いえ、いいエピソードでした(笑)。

05.胸騒ぎの恋人
付き合って間もないマモルとテルコは初の映画デートをすることに。しかし、鑑賞マナーの悪いマモルにテルコはショックを受ける。上映後、二人の間に小さな溝ができはじめる。

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つっきーに「可愛げ」を要求したネタです。色んな芝居で彼女を見てますけど、シンプルに可愛らしい役ってあまり見たことがなかったので、チャレンジしてもらいました。最初は苦労してましたけど、キャラクターをモノにしてからは強かったですね。

──付き合いたてのカップル、女の子の方のやきもき感がよく出てました。「彼氏にちゃんと注意したいけど、言えない」という心境。

初々しかったですよね。対する僕の役の印象がまー悪い(笑)。

──アンケートでも、女性のお客さんから「こんな彼氏イヤです」と散々でした。

まあ、そこ狙って作ったんですけどね。常識欠けてるわりに「真剣に付き合うならお互い遠慮はいらない」とか正しいことを言ったり、「何なんだこいつ?」っていう癖のある彼氏にしたくて。

──ただのカップルの痴話喧嘩にしないところ、昔からあるタダシさんらしい、ちょっと捻った切り口のコントですね。あーうーっぽいと言うか。

そうですね。以前からよくやってるやつですね。去年の「よってたかって気後れ3」の「Public and Private」とか、ああいう妙な恋愛モノがやっぱり好きなんです。

何やってもいいんですもん

06.超能力
超能力に関するショートコント集。

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これは歯医者に行って、帰ってくるまでの間にできたネタです。

──あっという間にできたんですね。

近所の歯医者なんで歩いて行くんです。テクテク歩きながら、「テレパシーならこう、念動力ならこう……」という風に考えて、診察してもらって、帰ってすぐパソコン開いて書きました。

──珍しくベタなショートコントですね。

昔はこういうの全然書けなかったですし、どこか照れもあって。ちょっとはベタに寄せられるようになりましたかねえ。稽古でもアレコレ遊んで遊んで。

──確かにお二人とも楽しそうで、肝月さんのツッコミも決まってました。

つっきーはツッコミやらせてもうまいからぜひやってもらいたくて。もうバッチリですよ。

──最後の「時間を止める能力」で、お客さんにもフリーズしてもらうという演出を取って会場に一体感が出ましたね。

ショートコント集は最後のネタが一番難しかったりするんです。歯をイジられながら考えた結果、音楽ライブみたいに「みんなで会場を一つにしようぜ! 動くなよ!」って呼びかけてみようと。

──実際、お客さんも一気に緊張感が出てましたね。

うん。身構えがすごかった(笑)。

07.ルチーノの森
世界のどこかにある不気味で真っ暗な森に住むルチーノという少年と、彼のそばにいる「声」との話。

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──2012年にタダシさんが脚本を提供した宇宙ビールの朗読劇をセルフカバーという形で。少し神秘的な話だったこともあり、会場の雰囲気もガラリと変わりましたね。

客席も息を呑むって言うんですかね、真剣に見てくれていたのがすごく伝わりました。これはやれて本当によかったです。

──MCでも話されてましたけど、ずっと以前からやりたかった脚本だったんですよね?

もう何年も頭の中にはずっとあったんですけど、いつもの単独ライブでかけたらさすがに浮くし、だからってどこでやればいいんだろうかって迷ってたんです。でも、今回の「CO-WORKING TITLE」っていう企画と、つっきーっていうキャスティングでようやく実現できました。

──肝月さんのルチーノがすごく印象的でした。真っ暗な森の中でも明るく暮らすポジティブさと、どこかポツネンとした寂静感も表現できていて。

読み合わせの時点でうまいく確信がありました。歌もね、つっきーは客前で歌うのはじめてだったんですよ。本番はたぶんめちゃくちゃ緊張したと思うんですけど、よく頑張ってくれました。しっかりルチーノの歌になったと思います。

──ラストの余韻も素敵でした。観客の想像にゆだねるような作品ですね。

そうですね。ハッキリ何かを問うてる話ではないです。脚本もほとんどリライトしてなくて、七年前のほぼまんまです。ただ、僕が演じる「声」について言及している台詞だけは削りました。重要な部分ではあったんですけど、敢えて大事なことは言わないようにしようと思って。

──そういった部分も含めてコントらしくない話ではありましたが、やるにあたって不安はなかったんですか?

もちろんありました。「これはコントなんでしょうか」って声もアンケートにありましたし。でも、そこは覚悟の上でやりました。笑いの部分は少ないですけど、こういうのもコントの一つなんだなって知ってもらえたらいいなと思って。ほんと、コントは何やってもいいんですもん。

楽しく満足を見出せた

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──レーベルを立ち上げて初のライブが二ヶ月連続ということで色々と挑戦の多い内容でしたが、無事に終わって今の心境はどうですか?

二本ともうまくいってよかったです。とにかく楽しかった。稽古も本番もずっと楽しくて、冗談半分でハシケンとつっきーに「12月にVol.3やればよかったね」って話したぐらい。

──三か月連続ですか?

ハシケンとつっきーと三人で。「三本目でようやく三人が集結!」みたいな。アベンジャーズ的な。

──確かにその共演は見たかった気はします。

それぐらいノレたってことなんです。

──お二人のおかげで様々なコントにもチャレンジできましたね。

ハシケンのギターテクを目先の笑いのために使うなんてほんとはめちゃくちゃ贅沢なことなんですけど、歌ネタって自分ではなかなかできないし、「ルチーノの森」もつっきーとやるためにこうして長い間寝かせてたんだなと思います。コントの可能性をグンと広げてくれました。財産も増えました。二人に感謝です。

──ではやはり、「CO-WORKING TITLE」Vol.3は三人で?

それもいいんですけど、「CO-WORKING TITLE」はもっと色んな形でやりたくて、もっと遊べる場所にしたい。今回の二部構成が基本形ってわけではなくて、フォーマットもどんどん変えて、僕はMCだけやって誰かがコントやってくれてもいい。それぐらい自由な枠にしたいんです。

──今回やってみて、その可能性を感じたわけですね。

あと、ひとりコントもまだまだ開発しなきゃですね。グループでやるコントの歴は長いですけど、ソロって全然浅いんでもっと努力しなきゃいけないとは思ってます。

──ともかく充実したライブになりました。

僕もハシケンもつっきーも、見に来てくれたお客さんも、みんなが楽しく満足を見出せたのであれば何よりです。

──では最後に、PLAN Cのこれからの展望を聞かせてください。

展望は、ない(笑)。だって、次は何をするか決まってないし、すぐ決める気もないし。

──そんな無責任な……。

とりあえず遊びたいんです!(笑) 映画もぜんぜん見れてないし、しばらくはインプットの時期に入らないと。でも、「もろもろソロコント」はやりますよ。しばらく作れなかったんで。

──当面はそういう方向ですか?

そうなりますね。ライブの企画もそのうちにって感じです。今回で掴んだものも結局次に活きてくるので、嫌でも更新していかなきゃいけないのは確かです。ぼちぼちやっていきます。そうこうしているうちにまたどこかでハシケンとつっきーと共演できる機会があるかも知れませんし。何て言うか、年輪ですね。

一輪が増えて、太くなっていくと。

ひとまずこのPLAN Cという木を何とか倒さないようにしないと。今はまだ細っそいから(笑)。一から出直して、また頑張ります。

──今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

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