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初めての配当金で買ったもの

正社員を辞めるべく株式投資を始めた筆者。それは、まだ朝晩は寒いが、桜の蕾が大きくなった頃のことだった。

投資経験者ならご存知の通り、この時期は決算期末に伴う権利確定日を設定する企業が多い。権利確定日に株式を保有していると、配当金や株主優待の対象になる。

短期売買で株を売り買いしていた筆者は、「配当金」に心憧れ、とある企業の株式を権利確定日に持ち越した。あまりよく知らない企業だったので、リリースされているアプリも使ってみたが、正直使いにくく、今では株を買うこともアプリを使うこともない、縁のない会社の株である。


配当金が入金されるのは、権利確定日から約3ヶ月後になることが多い。季節は変わり、夏を思わせる蒸し暑さを感じ始める頃だ。

初めての配当金。

人生で初めての経験に、まるで子供がサンタクロースを待つような、過剰な期待度を持っていた。

「配当金で何か美味しいものでも食べよう!」

レベルの低い筆者は、物理学の天才も驚いたという「複利」なる呪文を知らなかった。


ところで、配当金を受け取るためには4つの方法がある。

・株式数比例配分方式
・配当金領収証方式
・登録配当金受領口座方式
・個別銘柄指定方式

出展:配当金受け取りサービス(SMBC日興証券)

一般的には「株式数比例配分方式」が選ばれることが多い。2013年から始まった「NISA(一般NISA)」では、非課税メリットを受けるために、株式数比例配分方式を選ばなくてはいけない。

しかし、筆者。

・NISAはよくわからないから始めない(当時NISA口座未開設)
・何を思ったか、窓口で配当金を受け取る「配当金領収証方式」を選択

発行会社から郵送される配当金領収証を、ゆうちょ銀行等の窓口に持参することで、配当金領収証と引き換えに配当金を受け取る方式です。
出展:配当金受け取りサービス(SMBC日興証券)

なぜ「配当金領収証方式」を選んだのかは忘れてしまった。

口座に入金されるよりも、現金でもらうのが嬉しかったのかもしれない。証券口座に入金される、というイメージがつかなかったのかもしれないし、投資ブログのネタとしてそうしたのかもしれない。

仕事から帰宅後、自宅に届いた配当金領収証に感動し、小躍りした。


さて、平日で会社員が時間を取れるタイミングといえばもっぱら昼食時間である。勤めていた会社は就業時間中に自由に抜け出せるような雰囲気ではなかったので、昼食時に最寄りの郵便局へ急いだ。

最寄りの郵便局は、なぜか大行列ができていた。

「みんな配当金もらいのきたの?」

「お昼時だから用事足しにきたの??」

「もしかして、いつもこうなの???」

一人一人に聞きたくなるぐらい、とにかくたくさん並んでいた。

先の方をみると、老人が筆者と同じような紙切れを何枚か提出し、お金をもらっている。「ああ、あの人も投資家なんだ」と一方的に親近感をいだいた。

次の人は窓口であーでもないこーでもないと5分近く占拠していた。「急いでるんだから早く!」と少し苛立った。

結局、筆者の番が来た頃には、お昼休みはほぼ終わりそうな時だった。「配当金を受け取って、今週の生活費を下ろして、それからちょっとリッチな昼食を」というプランを立てていたのに、一番最初の配当金のところで頓挫してしまった。

配当金を受け取って郵便局を出たのは、午後の始業10分前。郵便局から会社までは走っても5分はかかる。

ここでどうする?

行き先は1つしかない!

こうして、筆者が初めて配当金で望んだリッチな昼食は、ちょっとお高いコンビニのオニギリになった。普段のラインナップとは違う、高級そうな雰囲気を出す150円ぐらいのものである。素材にこだわっているのか、パッケージのシズル感にこだわっているのか、そういうやつ。

残り5分で口の中へ。あとは飲み物で流し込む。

そして額の汗を拭き、素知らぬ顔して、午後の就業時間を迎える。初めての配当金で食べたオニギリの味なんて、始業10分で忘れてしまったし、そもそもただの「苦い」思い出でしかなかった。


その後、投資家としてレベルを上げた筆者は「人類最大の発見」とも呼ばれる秘法「複利」の呪文を覚えた。配当金をしょうもない飲食費に回すこともなくなったし、おとなしく「株式数比例配分方式」を選び直したので、配当金と生活費は「分別管理」になった。今では毎月分配型ファンドの分配金でモヤシを買ってる程度しか浪費していない。


オニギリを買って残った配当金は、帰宅途中にある小さいスーパーで販売していた唐揚げに化けた。

子供の頃、筆者の誕生日には決まって母が唐揚げを作ってくれた。こんな素晴らしい唐揚げを食べられる筆者は、きっと特別な存在なのだと感じていた。

特別な日には唐揚げ。

そのスーパーの唐揚げは食べ慣れていたが、この日だけは特別な味がしたような気がした。

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Mirai Takebe

投資ブロガー。投資信託特化「東北投信 https://blog.tacos-heaven.xyz 」と資産運用全般「インストックネット https://www.instock-ex.net 」運営。問い合わせ→ https://planet-f108.net/contact

投資の体験談

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