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ウガンダで内戦をくぐり抜けたムシシさんは「美しいルウェロ」を目指し故郷での活動をつづける

生まれ育った場所が「美しい」場所であってほしい。ウガンダの内戦を経験した故郷で、15年もの間、故郷の人々のために尽力してきた人がいます。

内戦、HIV/エイズ、差別、貧困など多くの困難に立ち向かってきた強さ以上に、優しさを感じさせるしなやかな語り口のムシシさんのお話です。

内戦が始まり、故郷へ

1959年にウガンダ共和国のルウェロ県で生まれたムシシさん。

ムシシさんは、子ども時代をこう振り返ります。

「その頃のウガンダは、イギリスから独立したばかりで、私が子どもの頃のウガンダはとても混乱していました。
ルウェロでも銃声が響きあうことがありました。
その混乱が静まってからは、無事に教育を受けることができました。」

何とか教育を受けることができたムシシさんは、学校を卒業後、首都カンパラの企業に就職。管理職として働くことができ、順風満帆の社会人生活の始まりに思えました。

「けれども、その時ですね、人生が大きく変わったのは。
1980年代、ウガンダで内戦が始まったのです。」

故郷のルウェロは内戦の影響を大きく受けて、親戚も亡くなりました。
ムシシさんは地元に戻り、偵察隊の一員として内戦下をくぐりぬけました。

「内戦の状況はひどいもので、食料も少なく、衛生的な飲み水はなく、たくさんの人が日常的な下痢にも苦しみました。」

内戦後、自身のHIV陽性をきっかけに団体設立へ

「1986年に内戦が終わってからは、保健センターで働いていたのですが、そのときに自分がHIV陽性だとわかりました。」

それから17年後の2003年。
ムシシさんはHIV/エイズなど予防できる病気に命が脅かされることなく人々が生きられる社会をつくることをビジョンに、「マルチパーパス」という団体を立ち上げました。

現在ではHIV/エイズによる影響や貧困を解決するために、HIV陽性者が自身の力で問題を解決するために活動することをミッションとしています。

活動を立ち上げた原点を、ムシシさんは振り返り、語ってくれました。

「故郷の人々が、戦争やHIV/エイズなどで苦しむのを目のあたりにして、彼らを助けたいと思ったのが原点です。

ルウェロは戦争で苦しんだ人もたくさんいますし、HIV陽性者も多くいます。戦争の影響で両親を亡くして孤児になった子どもや、保護者のいない子ども多くいました。

しかし、私は内戦を経験したHIV陽性者ですが、健康に暮らせていますし、5人の子どもたちを育てました。
エイズなどで苦しむ人たちが健全な生活を送れるように助けたい、という気持ちが原動力です。」

高い志で始めた活動。しかし、設立当初は、困難が多かったといいます。

HIV陽性者が立ち上げ、陽性者が活動する団体。偏見から活動するメンバーはなかなか増えませんでした。

この団体に所属することは、「HIV陽性者である」ことを周りに知らせることを意味していたからです。

わたしたちの夢は、実現しはじめている

「エイズへの正しい理解を促す啓発をとおして、エイズに対する意識を変えることができたと思います。
いまでは1,023人のメンバーからなる組織に成長しました。」
とムシシさんはこれまでの活動を評価します。

HIV陽性者への差別や、陽性者自身の劣等感も減ってきて、メンバーは進んで活動に参加するようになりました。

いまではエイズの問題について気兼ねなく話すことができ、人目を気にすることなく、地域の人たちがコンドームを取りに来るようになりました。

活動はさらに広がり、女子教育にも力を入れています。
今年は私たちの支援で7名が大学に進学できました。来年には5名が大学を卒業します。

PLASとの事業では、HIV陽性シングルマザーと、その子どもたちの自立のための生計向上支援やライフプランニング支援を行っています。

生計向上支援では、シングルマザーたちが村の中で小さなカフェを開業するための研修や訓練、初期投資の提供を行い、ビジネスが立ち上がるまで根気強くフォローしています。

ライフプランニング支援では子どもたちが前向きに将来を選択していけるように、母子へのカウンセリングやワークショップ、研修の提供を行ってきました。

こうした活動を通じて、シングルマザーたちはスキルを身につけ、自立して暮らし、子どもたちを支えることができています。そして子どもたちは学校に通い、将来を前向きにとらえることができるようになっています。

「私たちの夢は実現してきている、と言えるでしょうね。」
ムシシさんが力強く語ってくれました。

「美しいルウェロ」をめざして

「10年後、人々にとってエイズが脅威でない、そんな地域を実現したいです。これを私は「美しいルウェロ」と呼んでいます。」

美しいルウェロのために、これまで15年の活動をつづけてきました。その中で、HIV陽性者への偏見や差別が少しずつ和らいできたことを感じているといいます。

もちろん、陽性者だと打ち明けることは、多くの人にとって簡単ではないですし、差別や偏見の問題は今でもあります。
けれども、一歩一歩あゆみを進めていくことで、地域が変わってきたことを知っているムシシさんだからこそ、次の10年に向けて、前向きで現実的な展望を描くことができているのです。

「美しいルウェロを実現するためには、政府が目指す「90-90-90」をクリアしなければなりません。」

「90-90-90」とは、
(1) HIV陽性者の90%が検査を通して自分のステータスを知る
(2) 陽性と診断された人の90%が、定期的な抗レトロウイルス治療を受ける
(3) そのうちの90%がエイズを発症しないようウイルス量を抑える
というものです。

「美しいルウェロ」を目指して、PLASと共にさらに活動を大きくしていきたいと語ってくれました。

最後に…
「日本の支援者のみなさまに、心より御礼をお伝えします。」
ムシシさんから、日本のみなさまへ、日頃のご支援への感謝のメッセージです。

★★★

PLASではムシシさんと共にエイズ孤児たちが自分らしく前向きに人生を切り拓くことができるよう活動を行っています。これらの活動は寄付によって運営されています。

是非月1000円からのマンスリーサポーターによるご支援をお願いします。


いただいたご支援(サポート)は、PLASの活動を通じてケニアとウガンダのエイズ孤児支援のために使わせていただきます。