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「グリーンランド」中谷芙二子+宇吉郎展 @銀座メゾンエルメス フォーラム


 「わたし、死んじゃったんじゃなかろーか…」

 3年前、はじめて中谷芙二子さんの「霧の彫刻」を体験したときに感じたことだ。

 屋外なのに目の前はただ真っ白で、隣にいるはずの人も見えなくて、ひんやりとして。静かな中に”さーっ”という水の音だけが聞こえる不思議な空間。

 そんな「霧の彫刻」が、今度は屋内でつくり出される。

 「グリーンランド」中谷芙二子+宇吉郎展 @銀座メゾンエルメス フォーラム

 世界で初めて人工的に雪の結晶をつくり出した科学者・中谷宇吉郎さんと、その娘で「霧の彫刻」で有名なアーティスト・中谷芙二子さんの2人展だ。

 まだ霧がつくり出される前の会場には、宇吉郎さんの撮影したグリーンランドの壮大な風景のスライドが映し出され、そのまわりにはごつごつとした石や頑丈そうな靴などが。「中谷宇吉郎 雪の科学館」をつくる際、”日本の石では少し違う…” と、中谷芙二子さんとお姉さんが、グリーンランドまで拾いに行った石なのだとか。

 霧の彫刻のパフォーマンスがはじまると、霧でいっぱいになった室内には うっすらとドラム缶や岩や、人のシルエットが浮かび上がった。”氷の大地”に見立てられた銀座メゾンエルメスのガラスブロックからは、夜の銀座の灯りもうっすらとさしこんでいた。

 実際のグリーンランドを探検したら、ひょっとしてこんな風景がみられるんだろうか。

 霧の彫刻は毎時15分・45分と、30分おきに展開されている。今回は夜に行って、薄暗く幻想的な空間を体験したけれど、時間帯や天気によってはまた違った雰囲気に見えるのかもしれない。

 このほか、大阪万博ペプシ館などの芙二子さんの過去の霧の彫刻作品の映像や、実験的なビデオ作品映像も展示されていて、その一方では宇吉郎さんの雪の結晶写真や、研究道具、絵画の展示なども行われていた。

 研究に没頭しているとき;ただ、その対象物質に向かい合って深く考えている時間のことを考えた。宇吉郎さんが低温実験室の中で実験をしているとき、ひょっとしたら この霧の彫刻の中にいるのと同じような感覚だったのかもしれない、なんて想いも巡らせてしまった。

 駆け込みで閉館1時間前に入ったけど、見切れないくらい、素敵で見応えある展示だった。

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■「グリーンランド」中谷芙二子+宇吉郎展 @銀座メゾンエルメス フォーラム

会期:2017年12月22日〜2018年3月4日
時間:11:00〜20:00(日〜19:00)
休廊日:不定休(エルメス銀座店の営業時間に準ずる)

 霧のアーティストとして国際的に活動する中谷芙二子と、その父で科学者の宇吉郎の展覧会。本展では、晩年の宇吉郎が雪氷研究に打ち込んだ地、グリーンランドをタイトルに掲げ、銀座メゾンエルメスのガラスブロックを氷に見立て、室内で霧の実験に挑む新作《Glacial Fogfall》を発表。2人の作品を通して、自然を観察、記録、再生するという行為を重視する親子の、世代を超えた対話を見出すことができるだろう。

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