見出し画像

坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME @ICC

 展示室は真っ暗で、作品があるのか、人がいるのかどうかもわからなかった。

 こんなに真っ暗な中で、本当に5分後にライヴ・パフォーマンスがはじまるんだろうか…?

 手探りで展示室をすすんでいくと、人だかりで遠くからは見えなかったけど、1台のピアノが薄暗い照明で照らされていた。

 坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME @ICC

 「"ライヴ・パフォーマンス"というのだから、きっとこのピアノでなにかをするんだろう」と、わたしも一緒にピアノの前で時間が来るのを待っていたけれど、パフォーマンスが始まると自然とみんな移動していった。

 フルートやクラリネット、ビオラやアコーディオンを持った演奏者たちが、ふだん自分が考えている”楽曲”とは違った音楽を奏でながら会場中を歩き回って、それから、やっぱり自分が考えている”詩”とは違った詩(※)を輪唱のように朗読しながら会場中を歩きまわった。そして、時折、ピアノから小さい音が聞こえてくる。
(※ 松井茂《純粋詩第11番(2001年9月11日)》《純粋詩第687番(2011年3月11日)》

 楽器の音も声も、近づいたり離れたり立体的に聞こえて来て、なんだか不思議な気分だったけど、そういえばこんなに間近で…自分の真横で生の管弦楽器の柔らかい音を聞いたのは初めてだったんだなぁと気づいた。

 30分ほどのパフォーマンスが終わり、今度は本来の展覧会の作品が始まった。ワタリウム美術館での展覧会は見ていなかったので、展覧会タイトルの「設置音楽」ってなんだろう?と不思議だったけど、作品を見た後にはその初めて観る言葉がすとんと腑に落ちた。

 音が、会場に”置いて”あって、会場を散策すると、風景が変わるように聞こえる音が変わってきて、同時に高谷四郎さんの光のインスタレーションの見え方も変わってくる。さっきのパフォーマンスは、自分のまわりに音の風景を作り出してくれたけど、今度は自分で動き回りながら風景を作っていく感じだ。

 会場のピアノは、”東日本大震災の津波で被災した宮城県名取市の高校のピアノ”で、”世界各地の地震データによって演奏”しているそうだ。楽器から”ものに還ったピアノを新たに地球の鳴動を感知させるためのメディアとして「転生」させる”というステートメントに書かれている内容までは、わたしは感じることはできなかったけれど、でも、様々な楽器や人の声が、”風景”に変わる、不思議で幸せな展示だった。

 ライヴパフォーマンスは月に数日だけ、各日14時から開催されているけれど、入場料500円で、インスタレーションとともに体験できるので本当におすすめです。

**************

会期:2017年12月9日(土)—2018年3月11日(日)
時間:午前11時—午後6時
* 12月10日は午前11時—午後3時(入場は午後2時30分まで)
* 休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日 なお,2/12[月]は休館,2/13[火]は開館),年末年始(12/28-1/4),保守点検日(2/11)
入場料:一般・大学生 500円/高校生以下無料

本展覧会は「坂本龍一設置音楽展」(ワタリウム美術館)に続く二番目の「設置音楽」シリーズです.展示されるIS YOUR TIMEは,坂本と高谷史郎によって,今回の展覧会のために制作された新作インスタレーションです.


最後まで読んでいただきありがとうございます。良かったらサポートいただけたら嬉しいです。サポートいただいたお金は 記事を書くための書籍代や工作の材料費に使わせていただきます。