”推し”のための厨子《推し厨子(おしずし)》を作って、”推し”に見てもらって、大反省した話。
▍きっかけは、国宝展での出会い。
きっかけは、今年1月に見に行った、奈良国立博物館の「春日大社 若宮国宝展」。ここで出会ったのが、ひとつの「厨子(ずし)」。
南北朝時代(14世紀)につくられた《春日神鹿舎利厨子》。小さな箱に入った美しい神鹿像と舎利容器、それに小さくてかわいい飾りの組み合わせ…
本当に小さな箱の中に出来上がった、ひとつの世界。その様子にどうしようもなく心を引かれ… 素敵すぎる…欲しい…でも、買えるものじゃないから…
「そうだ!自分用の”厨子”を作ろう!!!」と帰りの電車で決意したのでした。
▍無信仰のわたしがつくる”厨子”とは…?
まずは見た目に惹かれたものの、そもそも「厨子」とは?と調べ始めると、もともとは仏像を安置するための箱で、仏像や経典などを納めた、「身近に置けて信仰の対象を入れる箱」のこと。
うーん… 「厨子」が欲しいと思ったけれど、無信仰のわたしにとって、”神仏を祀る”というのはどうもしっくりこない…
自分がつくるなら…自分が信仰するものといえば…
「自分にとっての神=”推し”」?!
「”推し”のことを考えて作る厨子」…そうか!「推し厨子(おしずし)」だ!!
そうしてコンセプトだけひらめき、知識も技術もないけれど、熱意だけでわたしの”推し”である、アーティスト・明和電機の作品を祀るための厨子を作り始めたのでした。
※ なお、「二次創作」には賛否両論あるかと思いますが。明和電機はご本人の審査を経て、明和電機のショップで二次創作グッズを販売させてくれたことがあったりと、節度を守れば(勝手に販売したりしなければ)ある程度は寛容であることを踏まえて、今回、制作・公開しました。
▼明和電機のショップで「自分で作ったモノを売る」にチャレンジした様子はコチラの記事に。
▍制作とは… ひょっとしたら世界一幸せな「修行」なんじゃないか…?
さて、厨子を作るにあたって、入れ物(箱)の部分は購入しようとするも、良いものが見つからず、「じゃぁ作るか…」と、絵画用の額をベースに作り始め。
外装は、工芸品ぽく漆と螺鈿ぽい仕上がりにしたいけど、さすがに無理だから何か代用できないか…と探し、「ホログラム折り紙」と「マニュキア」で作る方法を見つけたりと、作業はひたすら手探り。
外装のモチーフは、明和電機の作品の魚型の電気コード《魚コード(なこーど)》に、魚らしく伝統的な青海波をあわせて。
それから、中に納めたいなと思ったのは、明和電機の象徴的なプロダクトのひとつの「電飾看板」。こちらは、ガチャガチャの光る看板をベースに組み立てたりと。どれもこれも、手元にあるものをフル活用してDIY。
…ところが。
楽しく図案を考えていたものの、それを螺鈿っぽく表現するために必要だったのは、モチーフの魚の骨1本1本をカッティングシートからカッターでひたすら切り出す作業…
細かい…目が痛い…肩がこる…
これは…もはや…修行…?
でも、推しのためなら頑張れるし、集中できる…
それって、ある意味写経的なものかもしれない…
これはもう、世界一幸せな「修行」なのでは…?
▍推しに見ていただき感無量… でも、大反省…
そうして出来た《推し厨子(おしずし)》がコチラ…
明和電機の作品《SUSHI BEAT(すしビート)》にちなみ、「寿司厨子(すしずし)!」と言いたいだけの厨子もあわせて制作。
完成してtwitterにupしたところ、”推し”ご本人からもコメントいただき…恐縮…!
…でも、せっかくなら本人にも見て頂きたい…!!という欲望が。
ということで、ライヴ会場に、厨子、背負っていきました。
「3千円以上購入でサイン会参加OK!」なので、グッズを買ってお話しできる権利を入手。そして…
見ていただいた…!
コメントいただけた…!!
感無量!!!!
…と、しかし、ここで重大な気づきが…
背中に背負って見せたために… 反応がなにも見えなかった…!!
友人たちから、「めっちゃ楽しそうに笑ってたよ!」と教えてもらったものの… あぁ、推しの笑顔…見たかった…(涙)
あぁぁ、作るだけじゃなくて、「どう見せるか」、さらに、「相手の反応を見る」というのはこんなに重要だったのか… と大反省。
図らずも、1年近く前に、明和電機の展覧会トークで伺った「どう見せるか」の大切さを身をもって体感したのでした。
▼「クリエイションは「つくること」だけではなく「みせること」が同じくらい重要」と語ったトーク
推しのことを思って創った《推し厨子》は、想像以上に”信仰”的だったし、修行でもあったし、そして、それを通じて”推しの言葉”の解像度まで爆上がりする体験となりました。
今回の大反省を活かし、オタクは今日も、何かを創りつづけます。
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