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鈴木康広 近所の地球 旅の道具 @松屋銀座7階・デザインギャラリー1953

 松屋銀座7階にある デザインギャラリー1953 で開催中の「鈴木康広 近所の地球 旅の道具」展。小さいギャラリーでの展示ですが、鈴木康広さんの作品世界がぎゅっと濃縮された面白い展示でした。オススメポイントを3ポイントでご紹介します。

① 身近なものが ”こんな風だったら面白いな” にあふれた世界

 小さなギャラリーながら、その作品数は40点以上。真っ先に目につくのは、会場の真ん中にある巨大な透明なトランク。なかにたくさんの作品が収められています。

 たくさんの作品が収められたトランク…といえば、デュシャンの「トランクの箱」を連想してしまったりもしますが、ここに収められているのは、ミニチュアではなく実物大の作品たち。

 例えば、水面を”開く”「ファスナーの船」や、スプーンですくった砂がそのまま砂時計になる「時間を測るスプーン」、レンズのまんなかにレンズを通さない世界が見えてしまう「ルーペの節穴」など。身近にあるものをモチーフにしながらも、”あたりまえ”を少しだけ崩してくれるような作品たちに、思わず笑顔になってしまいます。

② 見ている側も空想の世界へ… 頭の中が覗けるスケッチ

 今回の展示では、壁一面に 鈴木さんがその”作品”をつくるときに描いてきたイメージが描かれています。鈴木さんの作品は、説明がなくても”直感的に”面白さが伝わってくるような作品ですが、作品の近くにスケッチが描かれていることで、その面白い世界がさらに広がっていくようでした。

 特に、こちらの「りんごのけん玉」には、作品のまわりの黒板に、手書きで発想の広がりが記されていて、この作品をめぐってどのようなことを考えたのか、鈴木さんの思考を追体験するようでした。

 こんなスケッチのおかげもあって、なんだか作品をみていても、いつの間にか作品を通じて自分の中の空想の世界にはいりこんでしまいます…半分は自分の頭の中で想像することで完成するような作品です。

③ 静かな ”うごき” を楽しむ展示

 こちらは百貨店の中でのギャラリーですが、落ち着いた静かな雰囲気です。そんななか、約1分おきに、「気分を測るメトロノーム」のカチっという音が聞こえ、また、会場入り口にある「水の切り株」には、しずくが1的ずつ落ちてきます。見る場所によって見え方が変わってくる「りんごのレンズ」や「レンズの人」などといった作品群では、体を動かして様々な角度から眺めてみたり…

 静かな展示ながらも、ただ”見る”だけでなく、目で見て、耳で聞いて、想像をふくらませて… といった相互作用が面白い展示でした。

 2月17日(日)までです。


【展示概要】鈴木康広 近所の地球 旅の道具

会期:2019年1月23日(水)〜2月17日(日)
会場:松屋銀座7階・デザインギャラリー1953
時間:日によって異なる。HP参照。(最終日午後5時閉場)
入場料:無料
展覧会担当:原研哉

鈴木氏は、日常の風景や現象を独特の視点で観察し、作品へと昇華させるアーティストとして、注目を集めています。その創作活動は、およそ20年に亘りますが、本展では、その間に作り出された数々の作品を改めて見つめ直します。思わず、微笑んでしまう心あたたまる鈴木康広の世界観を体感していただければ幸いです。

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