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じっくり観察して、虫から学ぶデザイン ー虫展 −デザインのお手本− @21_21 DESIGN SIGHT

 ハスの葉の構造を真似た”中身がくっつかないヨーグルトのフタ”や、蚊の針を真似た”痛くない注射針”など、身の回りには、生き物の構造や機能を真似てものづくりに生かしているものがあります。

 21_21 DESIGN SIGHTで開催中の「虫展 −デザインのお手本−」は、生き物のなかでも特に「虫」に着目し、人工的な「デザイン」に取り入れる試みの展示です。虫の色や形といった見た目の部分から、動き、体の構造、巣の作り方や形など、博物館的な展示とはまた違った角度から展開していく展示でとても面白い展示でした。

 わたし自身、「虫」は苦手なので、見る前はちょっと警戒していましたが、基本的には”昆虫”を扱っている(多足類などはいない)ので、カブトムシ、チョウ、セミあたりが苦手でなければ本当にオススメの展覧会です。


 まず、面白かったのが、”昆虫のミュージックビデオ”ともいえる映像作品「虫のかたち」(阿部洋介)。写真は小檜山賢二さんと円山宗利さん。音楽は蓮沼執太さん。

(「虫のかたち」/ 阿部洋介)

 4Kプロジェクターで高精細&鮮やかに映し出された昆虫の形や色に魅了されます。登場する昆虫のいくつかは展示室の後方に標本で展示されていますが、実物は驚くほど小さく、肉眼では分からない魅力が映像から伝わってきます。


 今回の展示で特に面白かったのは、三澤遥さんの「視点の採集[ゾウムシ編]」。”昆虫の中でもっとも種が多い”と言われるゾウムシを、分類したり、比較したり、近づいて見たり遠ざかって見たり…と様々な観点で観察していきます。

(「視点の採集[ゾウムシ編]」 / 三澤遥)

 20万種類いると言われているゾウムシのうち、実際に発見されているのは6万種とのこと。最後には「想像してみる」と、まだ見つかっていない新種を考えてしまう作品(しかも動く!) も。まさに「観察」して、「参考」にして、新しいものを「創造」していくという過程を見ていくような作品でした。

 パーフェクトロンの「キレイとゾゾゾの覗き穴」も、視点がとても面白い作品でした。

(「キレイとゾゾゾの覗き穴」/ パーフェクトロン)

 1つの万華鏡の中に1種の虫がいますが、万華鏡を回すごとに 同じ虫でも「キレイ!」と「これは無理(ゾゾゾ)」な部分が現れてきます。何の虫か書いてないので、覗き込む時も、これは何だろう?って回すのも、かなりドキドキしますが…普段「ゾゾゾ」と思っている虫の「キレイ」なところ、「キレイ」と思っている虫の「ゾゾゾ」なところが見えてきます。

 このほかにも、昆虫の翅の構造を機械的に再現した「READY TO FLY」(山中俊治+斉藤一哉+杉原 寛+谷道鼓太朗+村松 充)や、水の中に巣をつくるトビケラの巣をヒントに人間スケールの構造物をつくる「トビケラの巣」(隈研吾建築都市設計事務所+アラン・バーデン/江尻憲泰/佐藤 淳)、スピーカーと光を使って虫の”存在感”を再現する「昆虫体験」(石黒 猛)など、見た目だけではない様々な観点で虫の捉える作品が20作品揃います。

(「READY TO FLY」/ 山中俊治+斉藤一哉+杉原 寛+谷道鼓太朗+村松 充)

(「トビケラの巣」(隈研吾建築都市設計事務所+アラン・バーデン)

 また、会場のあちらこちらに、今回の企画監修で解剖学者・養老孟司さんによる「養老語録」や、虫に関する豆知識の「虫マメチ」が掲出されています。「へぇ〜」というものから、くすりと笑ってしまうようなものまで。

 大人になると、じっくりと虫を観察する機会もあまりなくなるものですが、様々な視点から観察することが、デザイン、アート、工学など、様々な分野の”お手本”につながる、その過程を見られるような展示でした。

 「虫展 −デザインのお手本−」は、11月4日(月・祝)までです。

■虫展 −デザインのお手本− @21_21 DESIGN SIGHT
会期:2019年7月19日(金) - 11月4日(月・祝)
休館日:火曜日(10月22日は開館)
時間:10:00 - 19:00
入場料:一般 1,200円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料

自然を映し出す存在である、虫。私たちの身近にいながら、実はそのほとんどの生態はわかっていません。虫の色、質感、構造、また習性には、私たちの想像をはるかに超える未知の世界が広がっています。人類よりもずっと長い歴史のなかで進化を続けてきた多様な虫の姿からは、さまざまな創造の可能性が浮かび上がってきます。本展覧会は、知れば知るほど不思議な虫たちを「デザインのお手本」にする試みです。


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