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2018年 展覧会 ベスト10 。

2018年に伺った展覧会(約270展) のなかで 個人的に印象的だった展覧会の Best10 をまとめました。 

 2018年は、「”人間らしさ”ってなんだろう?」「技術の変化の先に、どんな新しい”感覚”や”感情”が生じてくるんだろう?」ということを考える展覧会(作品)が強く印象に残った年でした。

 一方で、「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」や「teamLab Borderless」など、今まで ”当たり前” だと思っていた展覧会の枠組みを、軽やかに・心地よく崩してしまう展示方式の展覧会も印象に残る年でした。

 今年は 順位をつけるのがとても難しかったのですが、以下のようなBEST10にしました。

【1位】
■ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて @水戸芸術館 (2018年2月10日~5月6日)

 今年、冒頭に書いたような疑問の出発点になった展覧会で、何度も思い返す展覧会でした。技術の進歩によって「あるかもしれない未来」「すでに起こりつつある未来」を見せてくれた展覧会です。
 キュレーター・山峰潤也さんのインタビューの内容に書かれていた、意図された内容が、自分が展示を見て感じた作品の印象とやや違っていたこともあって、もう少し勉強してみよう…と、本を多く読むきっかけにもなった展覧会でした。
 この展覧会の作品のなかでも、とりわけ、エキソニモの作品は、”技術が進歩していくことで、(”現在の感覚で” 感じ・想像し得る問題 だけでなく)そもそも 人の感覚はどのように変わってしまうのか? そのなかで感じる問題は、現在想像し得る問題と同じなのか?”といった部分まで思いを馳せさせてくれるような作品で、非常に印象的でした。

【2位】
■メディアアートの輪廻転生 @山口情報芸術センター[YCAM] (2018年7月21日〜10月28日)

 こちらは上記の「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」の中でも、最も印象に残ったエキソニモが共同キュレーターということで、小さい展示ながらも、どうしても見たくなって山口まで行ってしまった展示です。
 「メディアアートの死」というと、メディアが再生不可能になったり、技術に目新しさがなくなる、といったことを想像しがちだったのが、人の考え方や社会の制度が変わることで ”作品としての意味をなさなくなる” こともあるということがまず衝撃でした。
 また、会場に多くのメディアアーティストの印象的な言葉がピックアップされている一方で、web上では、それを補足する、展示のもととなったインタビューが幅広く公開されているのも印象的で、展覧会場を出た後にも、繰り返し考える時間を与えてくれるような展示でした。

【3位】
■Parametric Move 動きをうごかす展 @東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリー (2018年6月8日〜 6月17日)

<関連> 東京大学生産技術研究所70周年記念展示「もしかする未来 工学×デザイン」 @国立新美術館3階 3B展示室

 「”生きものらしい動き”ってなんだろう?」ということについて、今年最初に考えた展示でした。美術館でのアートの展示とは少し違った、主に学生さんによる ”動きをデザイン”したプロトタイプを扱った展示でしたが、藤堂高行さんの「SEER」をみることができたのがまず嬉しかった展示です。「SEER」とともに、杉原寛さんの「READY TO CRAWL」が、とても”生き物らしい動き”なのに、どちらも実際の生き物の構造を参考にはしていないというのが、とても不思議でした。

【4位】
■真鍋大度 ∽ ライゾマティクスリサーチ Daito Manabe ∽ Rhizomatiks Research @霧島アートの森 (2018年11月16日〜2019年1月14日)

<関連>Rhizomatiks Research x ELEVENPLAY x Kyle McDonald “discrete figures” @スパイラルホール

 展示作品がすべて新作で 実験的な展示でした。その中でも、スパイラルで行われた「Rhizomatiks Research x ELEVENPLAY x Kyle McDonald “discrete figures”」の一部を取インスタレーションにした“discrete figures installation”が非常に印象的でした。
 はじめは全く人間とは思えない動きをしていた人の形の”figure”が、機械学習によってダンスを習得して”人間の動き”になっていくのを見ながら、筋肉や関節のような物理的な制約を持たないfigureが、人とは違った方法で ”人間らしい動き” を獲得していくということがまた不思議で、面白さと少しの怖さのようなものが入り混じる感覚になりました。

【5位】
■ PetWORKsの仕事と野望 -All about PetWORKs- @スパイラルガーデン (2018年8月18日~ 9月3日)

 こちらは 展示はもちろんですが、展示に向けたクラウドファンディングのリターンとして、アーティスト・八谷和彦さんの行なっているOpen Skyプロジェクトのテストフライトを見にいくことができたのがとても嬉しかった展示です。
 2004年の「六本木クロッシング」@森美術館で初めて見たときには模型だったOpen Skyプロジェクト。ジェットエンジン付きになった機体のテストフライトに行くことができ、その機体が数十メーター上空を旋回しながら飛行するという「いつか実現したらすごいなぁ」と夢のように思っていたことが目の前で現実になっていることが感激でした。
 また展示の中では、三面スクリーンの「きみはテト」や、フライトシミュレータ&VRで、八谷さんの視点での疑似体験ができ、様々な視点から1つの作品に触れることができるというのも素敵でした。

<関連>Open Sky テストフライト

<関連>三人展-Forward Stroke 明日への眼差し- @佐賀県立美術館 (2018年9月30日~ 2018年11月18日)

【6位】
■AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展 @21_21 DESIGN SIGHT (2018年6月29日〜10月14日)

 こちらを今年の1位にするか、最後まで迷っていた展覧会です。会場全体を同じ音楽で全て包み込み、ひとつの音楽だけで空間を構築する という方法がまず衝撃的で、さらに、こうしてつくられた空間で映像作品を観るのがこんなにも心地よいのか ということにも衝撃を受けた展覧会でした。
 同じ音楽に対してフィールドの異なる9組の方々が映像をつけ、それぞれの解釈で再構築したものを一度に見られるというのもまた印象的な展示でした。

【7位】
■MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: teamLab Borderless

 こちらもまた、他の「展覧会」と規模やテーマが違いすぎて、どこに入れて良いのかわからなくなってしまった展覧会です…
 ”決まった展示室に作品が設置されていて、鑑賞者がそこに作品を見にいく” …という、当たり前の仕組みを崩し、作品が展示室を出て動き回ったり、他の作品とコレボレーションしたり、時間によって異なる作品が現れたり…と、いったことを、説明もなく 普通に成立させてしまうのが衝撃的な、本当に「ボーダレス」な展示でした。
 今の”美術館”の枠組みとは違った、新しい展示方法がまだまだある という可能性を示してくれるような展示でした。

【8位】
■落合陽一、山紫水明 ∽ 事事無碍 ∽ 計算機自然 @EYE OF GYRE (2018年4月20日~6月28日)

 個人的にはもともと”技術が面白い”と思っていた落合陽一さんの作品のイメージから少し離れたような展覧会で、戸惑いながら見ていった展示でした。前著「魔法の世紀」の記述から読み解いて行こうとしていましたが、展覧会の会期後半に発売された落合さんの著書「デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂」を読んで、もっと噛み砕いていかないといけない展示だったなと思っています。
 「デジタルネイチャー化した世界」の後に社会に起こることや、その時の感覚の変化 といったことに目が向けられている展覧会で、今もまだ、書籍を読み返しながら内容について考えている展覧会です。

【9位】
■2018 年のフランケンシュタイン バイオアートにみる芸術と科学と社会のいま @EYE OF GYRE (2018年9月7日〜10月14日)

 こちらの展覧会は、個人的には ”全ての作品がよかった” というものではなく、もやもやが残り続けたり、受け入れ難かったり、解説がないと理解しがたい作品もあったり…と、どちらかといえば、ひっかかることが多い展覧会でした。しかしながら、なかなかまとめて作品を観る機会に恵まれなかった「バイオアート」の作品を数多く観ることができ、なおかつ、テーマも幅広く扱われている展示が見られたことが本当によかったと思える展覧会でした。これから、もっとこういった作品を見られる機会が増えていったら良いなと思います。

【10位】
■デザインあ展 in TOYAMA @富山県美術館  (2018年3月21〜5月20日)

 大好きなEテレ「デザインあ」の世界が、5年前の展覧会からスケールがさらに拡大して、番組の中のコーナーそのものとは少し違った方法で、「観察」「体感」「概念」を扱った作品を展開しているのがとても面白い展示でした。「もん」などを実際に体験すると、番組の中で見て「すごい」と言っている時とは違った驚きを感じたり、疑問を感じたりと、番組ではなく「展示」という形のなかでこそ感じられるものがあったのも良かったです。

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 10個だけでは選びきれない…というのが正直なところで、他にはこのような展覧会やイベントが印象に残っています。

<美術館>

(明和電機ナンセンスマシーン展 in 大分 @大分市美術館)

■明和電機ナンセンスマシーン展 in 大分 @大分市美術館
■石内 都 肌理と写真 @横浜美術館
■モネ それからの100年 @横浜美術館
■ 内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える @水戸芸術館
■霧の抵抗 中谷芙二子 @水戸芸術館
■フェルメール展 @上野の森美術館
■ 江之浦測候所

<ギャラリー>

(岩崎貴宏 Layer and Folding @銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM)

■八木夕菜「NOWHERE」 @ポーラミュージアムアネックス■SHIMURAbros「Seeing Is Believing 見ることは信じること」 @ポーラ ミュージアム アネックス
■Unknown Sculptureシリーズ No.7 #6 末永史尚「ジェネリック・オブジェクト|Generic Object」 @gallery21yo-j
■WOW Visual Design Studio ―WOWが動かす世界― @スパイラル
■「イメージの観測所」岡崎智弘展 @松屋銀座7階・デザインギャラリー1953
■Chim↑Pom グランドオープン @ANOMALY
■続々 | 三澤 遥 @ギンザ・グラフィック・ギャラリー
■岩崎貴宏 Layer and Folding @銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

<イベント>

(落合陽一×日本フィル プロジェクトVol.2《変態する音楽会》 @東京オペラシティコンサートホール)

■ ピカチュウ大量発生チュウ!「SCIENCE IS AMAZING かがくのちからってすげー!」@みなとみらい 「Pokémon Synchronicity」
■ 落合陽一×日本フィル プロジェクトVol.2《変態する音楽会》 @東京オペラシティコンサートホール
■earth music&ecology チームラボ かみさまがすまう森 @御船山楽園


 2018年に印象に残ったのは、美術館では横浜美術館水戸芸術館
 ギャラリーでは…(特定のギャラリーではなく「場所」ですが)、EYE OF GYREと、スパイラル
 また、アーティストでは、とにかく考えるきっかけをくれ、未来にあるかもしれない感覚を伝えてくれるようなエキソニモ、それから 谷川俊太郎展(※ここでは、展覧会よりも この作品1点を見られたことがよかったと感じられる作品でした)・デザインあ展・AUDIO ARCHITECTUREのコーネリアス×中村勇吾さん、展覧会だけでなく、書籍や講演会などを通じて、これからあるべき社会の姿や、起こりうる新しい知覚など、多くのことを考えるさせてくれた落合陽一さん が印象的でした。

 今年も素敵な作品と出会えますように!

なお、過去の「BEST展覧会」はこんな感じでした↓↓↓
◆2017年:2017年 展覧会 BEST10 【美術館編】
◆2017年 展覧会 BEST10 【ギャラリー編】。
◆2016年:● 2016年 展覧会 BEST 5 ●
◆2016年 アート作品 BEST 5 ●
◆2015年: かってに選ぶ BEST展覧会 -2015。
◆かってに選ぶ BEST作品 -2015。
◆2014年:かってに選ぶ BEST展覧会 -2014。
◆2013年:展覧会2013。(展覧会BEST3)
◆2012年:展覧会2012。(展覧会BEST3)
◆2011年:展覧会 2011。(展覧会BEST3)


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