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”美しさ” と ”不安” の間の風景 ー岩崎貴宏 Layer and Folding @銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

“繊維” でつくられた 精巧 だけど 壮大な世界

 華やかなGINZA SIX の中に、1.6M×2.2M という巨大なフレームが5枚 ジグザグと折りたたまれた、巨大な作品が展示されています。

(「アウト・オブ・ディスオーダー  Layer and Folding」/ 岩崎貴宏)

 銀座 蔦屋書店の中で開催されている、「岩崎貴宏 Layer and Folding」展。2017年のヴェネチア・ビエンナーレの日本館アーティストでもある岩崎貴宏さんの個展です。

 遠くから見ると、夕日の逆光の中、シルエットで鉄塔や山が浮かびあがる壮大な風景。

 一方で、鉄塔やクレーンに近づいてみると、とても精巧にできた模型に驚きます。針金のような ”硬い” 素材で作られているように見えますが、これらは糸のような細い ”繊維” を接着剤で固めて作られています。

 遠くから見た時に地層のように見えたものも、近づいてみると、テクスチャの異なる様々な布を何層も重ねてつくられていることに気づきます。

 本当に見たことがあるかわからないけれど、日本に長年住んでいたら、誰もが ”昔どこかで見たことがある” ように感じてしまう 美しい風景なのではないかと感じました。

これは ただ ”美しい風景” なのか?

 でも、これは ただ ”美しい風景” なのでしょうか?

 地層をよく見ると、その一部では ”ズレ” が生じ、その上にその 見覚えある…わたしたちの身近にある風景 が”乗っている”ように見えました。

 作品タイトル「Layer and Folding」の ”Folding” は、「折りたたむ」という意味で、はじめは、作品のフレームがジグザグと折りたためるような構造ようになっているのを指しているのかと思っていました。

 一方で、調べてみると、 ”Folding” は、地学では「褶曲(しゅうきょく)」(地層の側方から大きな力が掛かり、地層が曲がりくねるように変形する現象のこと)を指すようでした。プレートの移動などで長い時間をかけてできた「褶曲」の上にあるのは、人工の針葉樹林を想起させるような、同じ形の綿棒を並べて作られた山や、何台ものクレーンを使ってつくられていく建造物…「褶曲」の長い時間と、短期間でつくられていく人工物の対比のようにも見えてきます。

 また、真っ黒な綿棒やデンタルフロスは”汚染”されたようにも見えれば、真っ黒な布は、オイルを拭った後のウェスのようにも見えてくるし、もしもこの地層のズレが”断層”で、その上に巨大な建物や人工的な山がつくられているのだとしたら…

 ふとした瞬間に、同じ”黒い”風景が、幻想的な風景から”不安”な風景に 一瞬で変化して見えるような作品です。

書籍の意味するものは…?

 今回の展覧会では、書店の展示にちなみ、書籍の「しおり」を固めてクレーンをつくった「テクトニック・モデル」のシリーズも展示されていました。しおりのクレーンが、ビルのような書籍を ”つくっていっている” ように見える作品です。

 先ほどの巨大な作品「アウト・オブ・ディスオーダー  Layer and Folding」とどう繋がるのか…と考えていったものの… 読んだことのない書籍ばかりで、この作品との関連は十分に掴めませんでした…(教養のなさが辛い…)ただ、なんとなく、日本の歴史や、美術に関するものが多かったような…(あぁ、せめてタイトルをメモしてくるんだった…)


 理解しきれない部分は残りましたが、繊細な造形が美しく(影まで美しい!)、ぜひ実物を見ていただきたい作品です。書店の中での展示なので気軽に入れるのも嬉しい展示です。2019年1月14日(月・祝)までです。


■岩崎貴宏 Layer and Folding @銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM

会期:2018年12月27日~2019年1月14日
会場:GINZA ATRIUM(GINZA SIX 6F, 蔦屋書店内)
時間:10:00~22:30
休廊日:1月1日

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