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牡鹿半島で初めての風景と価値観に出会う ーReborn-Art Festival 2019

 2019年の夏も、瀬戸内国際芸術祭あいちトリエンナーレなど各地で芸術祭がスタートしています。どちらから行こうか悩みますが、わたしはまず、8/3に宮城県石巻市〜牡鹿半島で開幕したReborn-Art Festival 2019へ。

 今回は1泊2日で桃浦・荻浜・小積・鮎川のエリアを訪問しました。初めて訪れた場所というのもありますが、牡鹿半島の歴史、食も含めた文化、自然に触れられて。各地区ごとのテーマも感じられ。もやもや考えるよりも、素直に「良いなぁ」と思える作品が集まった芸術祭でした。

 石巻駅を起点に、石巻駅前・石巻市街地・桃浦・荻浜・小積・鮎川・網地島の7カ所で、それぞれ異なるキュレーターさんのキュレーションによる展示が行われています。(※網地島エリアは8月20日より開催)

■小積(こづみ)エリア

《Post humanism stress disorder》/ 志賀理江子

エリアテーマ:鹿に導かれ、私たちを見るとき
キュレーター:豊嶋秀樹

 森の中に小さなパビリオンのような小屋が並び、この中で1アーティストずつの展示が行われているエリアです。淺井裕介さんの《すべての場所に命が宿る@牡鹿のスケッチ》は、小屋の内側いっぱいに描かれた泥絵と、風景写真に絵が描きこまれていて、洞窟絵画のようにも見えてきます。

《すべての場所に命が宿る@牡鹿のスケッチ》/ 淺井裕介

 こちらのエリアでとりわけ印象的だったのは、森の風景の中に、白い地面と白い木々が現れる志賀理江子さんの大規模なインスタレーション作品《Post humanism stress disorder》。地面の白は大量の貝殻。木々は白く塗られ、穴もあけられています。方孔石のイメージのようにも、(このエリアのテーマに含まれる)狩猟のイメージのようにも見えます。

《Post humanism stress disorder》/ 志賀理江子

■荻浜(おぎのはま)エリア

《White Deer (Oshika)》/ 名和晃平

エリアテーマ:プライマル エナジー - 原始の力
キュレーター:名和晃平

 メインビジュアルにもなっている名和晃平さんの《White Deer (Oshika)》のあるエリア。駐車場から作品展示エリアまで10分ほど歩きますが、こちらのホタテの養殖の道具が積まれた風景も印象的でした。

 《White Deer》の立つ真っ白い浜は、大量の白い貝殻からできているようです。岩場のように見える場所も、貝塚のようにホタテの貝殻と土でできているのに驚きます。

 こちらには、旧日本海軍が魚雷を格納するために作られたという洞窟を使ったWOWの《Emerge》をはじめ、ヘルメットを被って洞窟の中に入っていって観る作品が3つ、そして、海沿いの風景を取り込んだ作品が3つあります。

《Emerge》 / WOW

 自然と一体化した作品が印象的なエリアでした。

《Flame》 / 名和晃平

■桃浦(もものうら)エリア

《新たなる空間への道標》/ 草間彌生

エリアテーマ:リビングスペース
キュレーター:小林武史

 旧荻浜小学校の廃校舎をつかった展示がメインで行われています。

 こちらで印象的だったのは中﨑透さんの作品《Peach Beach, Summer School》(2019)。住民の方へのインタビューを中心に、土地の文化や歴史をインスタレーションにした作品。こちらの作品を体験していく中で、他のエリアで見てきた作品のなかに隠れていたものがつながってくる作品でした。

《Peach Beach, Summer School》/ 中﨑透

 海沿いに立つのは「MoMA」ならぬ「WoMA」。SIDE COREによるウォールアートについてのリサーチ作品《Lonely Muuseum of Wall Art》。こちらも見応えがあり、じっくりと作品を見る時間が必要なエリアでした。

《Lonely Muuseum of Wall Art》/ SIDE CORE

 草間彌生さんやアニッシュ・カプーアさん、増田セバスチャンさんの作品などもこちらのエリアに。

《ぽっかりあいた穴の秘密》/ 増田セバスチャン

■鮎川エリア

《白い道》/ 島袋道浩

エリアテーマ:目をこらす 耳をすます
キュレーター:島袋道浩

 列島の突端にあるこちらのエリアで印象的だったのは、島袋道浩さんと石川竜一さんのインスタレーション。2箇所で異なる作品が展示されていますが、その2カ所がつながってくるような作品です。

 鮎川東部にあるコバルト荘跡地では、石川竜一さんの”写真家"のイメージを覆すような大地の彫刻作品《掘削》(2019)と、島袋道浩さんの、どこまでを作品ととらえてよいのか分からない壮大な《白い道》(2019)。

《掘削》/ 石川竜一

《白い道》/ 島袋道浩

 そして、鮎川中心部の石巻集会所には、石川竜一さんの写真を使ったインスタレーション《跡》と、島袋道浩さんの《鮎川の土ー起きる/鮎川展望台》(2019)。このエリアではボランティアさん達が熱心に案内してくださり、この集会所にまつわる震災の体験をお話してくださったりも。こちらの地区を歩いていると、まだまだ続いている大きな工事の様子も見えてきます。

《跡》/ 石川竜一

《鮎川の土ー起きる/鮎川展望台》/ 島袋道浩 から見た風景


 作品のテーマは ”楽しい” 内容ばかりではないものの、ポジティブな雰囲気で純粋に作品を楽しむことができたのは、日本人作家が中心で、また、初めて訪れる場所でありながらも多くの説明がなくても場所の背景を感じることができたからかもしれません。こうした場所で風景に触れ、作品を観て、お話を聞き… 貴重な体験のできる芸術祭でした。

 2019年9月29日(日)までです。

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【開催概要】Reborn-Art Festival

会期: 2019年8月3日(土)- 2019年9月29日(日)
※水曜休祭予定(8月14日およびイベント開催日は除く。詳細は後日発表)
※網地島エリアは8月20日より開催
鑑賞時間:
平日…10:00~16:00(最終受付15:30)
土日祝日・お盆期間(8月13日~16日)…10:00〜17:00(16:30最終受付)
※施設、作品によって異なる場合もありますので各作家のページにてご確認ください
会場:牡鹿半島、網地島、石巻市街地、松島湾
(宮城県石巻市、塩竈市、東松島市、松島町、女川町)
パスポート
一般 3,000円 (税込)、高校生・大学生・専門学校生 2,500円 (税込)、16歳未満 無料

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※オマケ※

 この時期の屋外の芸術祭、とにかく暑い!!(炎天下で誘導してくださるスタッフさんの体調も心配になります…)水、タオル、日傘か帽子、日焼け止めetc 暑さ紫外線対策お気をつけください。

 今回訪れた桃浦〜荻浜〜小積のエリアは、ガイドに載ってた「食堂いぶき」に行ってみたら”しばらく休業”、コンビニもなく、ごはんが食べられるのが荻浜エリアのみでお昼時は満車で入れず…で、初日は昼ごはん難民になりました(^^; 水と食料は準備されていくことをオススメします。(鮎川まで行けばコンビニも食堂もありました。)



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