ポーラミュージアム アネックスで開催中のSHIMURAbros「Seeing Is Believing 見ることは信じること」展。視覚トリックのようなひとつひとつの作品と、展覧会の会場全体でひとつの作品になるような構成がユニークな、とても面白い展覧会でした。

　SHIMURAbros（シブラブロス）は、シムラユカさんとその弟ケンタロウさんからなる姉弟ユニットで、2014年よりオラファー・エリアソンのスタジオにて研究員もされているアーティスト。

　今回の展覧会の会場に入ると、まずは中央に穴のあいたオブジェが。

（「Half Moon, Sunset」 / SHIMURAbros (2018))

　でもなんだか違和感を感じて、近づいてみると…あれ？！（ネタバレにならないように写真は伏せますが）早速、視覚トリックに騙されたことに気づきます。

　ということは、その隣の噴水にも何か仕掛けが…？と近づいてみるも、こちらは特に変わったこともない様子。

　きれいだったけど、あの噴水は一体なんだったのか…ともやもやしながら次の展示室に入ると、今度は映像作品。１つの壁面には 先ほどの噴水と同じサイズで 螺旋を描いて落ちる噴水とダンサーの映像、もう１つの壁面には 様々な動物たちがこちらを見つめる映像。それから、部屋の隅には音の聞こえてこないスピーカーも。

　螺旋を描く不思議な水はCG …？などと考えながら映像を見続けるも、まるでそんな疑いに対して「タネも仕掛けもありませんよ」というかのように、ダンサーがその噴水の前後を横切ったり、水と戯れたり…

　40分と長編ながらも美しくて見入ってしまう映像映像を、最後まで見続けたものの違和感は解決せず、最後にプリント作品を見たのちに、再び先ほどの噴水へ。

（「Taumatrope - John Ayrton Paris 1824」 / SHIMURAbros (2018)）

　あの映像はなんだったんだろう？スピーカーの意味は？最後の部屋の絵の意味は？　…などと、次々と浮かぶもやもやを抱えたまま、この展覧会のタイトルを思い出していました。

「Seeing Is Believing 見ることは信じること」

　噴水の作品も、映像作品もまた、これと同じタイトルだなぁ…と考えながらじっと噴水を見つめていると…

　…あ、そういうことだったのか！

　と、そこですべての作品や、関係性がわからなかったものが一気につながってきます。

「あなたが見ているのは本当の世界の姿なのだろうか。実は一つの方向でしか見えておらず。もっと多面的に存在しており、ただ見えていないだけなのではないか。」

　展覧会のステートメントに書かれたその言葉の意味がわかり、この会場全体がひとつの作品だったのか、と気づかされます。

　ひとつひとつの作品が ゆっくりと見ていられる美しい作品でありつつ、展覧会を通じて「あなたが見ているのは本当の世界の姿なのだろうか？」といったことを気づかせてくれる、とても面白い展示でした。

　なお、このビルの1Fのショーウィンドウにも、SHIMURAbrosの作品が２点展示されています。こちらも、光を利用し、角度によっていろんな表情に見える、美しく・面白い作品でした。ぜひこちらもあわせてどうぞ。

　また、箱根のポーラ美術館では、2018年12月8日（土）〜2019年3月17日（日）の間、現代美術展示スペース「アトリウム ギャラリー」にて、SHIMURAbros『Film Without Film 映画なしの映画』展が予定されています。こちらでは、映画をもとにした彫刻作品や、プロジェクターを用いた作品などが展示されるようで、こちらにも期待です。

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■SHIMURAbros「Seeing Is Believing 見ることは信じること」

会期：2018年10月5日〜11月4日
会場：ポーラ ミュージアム アネックス（東京都中央区銀座1-7-7ポーラ銀座ビル3F）
時間：11:00〜20:00
休廊日：無休

SHIMURAbrosは、ユカとケンタロウからなる姉弟ユニット。　本展では、映像と噴水を中心にした新作インスタレーションを発表。「あなたが見ているのは本当の世界の姿なのだろうか。じつはひとつの方向でしか見えておらず、もっと多面的に存在しており、ただ見えていないだけなのではないか」という問いを起点に、「見る」という行為の本質を投げかける。