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作品を通じて 土地を知る 新しい芸術祭 —国東半島芸術祭。

芸術祭だけどプロジェクト作品は全部で7つ。
ひとつひとつの作品は車で30-40分も離れていて、
中には1時間以上も登山をしてやっと出会える作品もある。

他の芸術祭とはちょっと違った雰囲気の”芸術祭”、国東半島芸術祭にいってきました。

舞台は大分の北東にある国東半島。

関東在住の私には少しハードルが高かったけど、本当に行ってよかった!と思える芸術祭だったのでご紹介したいなと思います。


■作品を通じて知った、国東半島の素敵なところ3つ

① 火山地質の土地の 美しく雄大な自然の風景
② 自然の中で感じる「六郷満山」の祈りの文化
③ 「お接待」の風習から感じる 人のあたたかさ


 ① 火山地質の土地の 美しく雄大な自然の風景

国東半島を訪れてまず驚いたのは、水墨画のような岩山の続く風景。

国東半島という土地が約150万年前の火山活動によってできた場所なのだそうで、岩肌が露出した独特の景色に圧倒されます。

こんな自然の風景を堪能できる作品のひとつが並石プロジェクト
作品に映りこんだり反射したりする光が美しい、勅使河原三郎さんの「月の木」「光の水滴」という作品が展示されています。

その作品の後ろには、かつて鬼が棲んでいたと言い伝えられる「鬼城岩峰(きしろがんぽう)」という大きな穴のあいた奇岩群が。ここはこんな岩山の中を40分ほどのんびりとお散歩できる場所になっています。


また火山の噴火によってできた半島のため、こんな岩山から車を30分も走らせると今度は海に着きます。
真玉プロジェクトの会場の真玉海岸は、大分で唯一水平線に沈む夕日を見られる場所なのだそうです。

私のいった日は満潮でしたが、干潮と夕日の時間が重なると遠浅の海岸が広がり、より幻想的な光景になるそうです。

ここで展示されているteamLab「花と人、コントロールできないけれども、共に生きる-Kunisaki Peninsula」は、たくさんの花が投影された作品。

ある程度の距離に近づくと自分の回りに花が咲き乱れるのですが、近づきすぎると枯れてしまう、というインタラクティブな作品。
自然と"ちょうどよい距離"を保つことの大切さ・難しさが伝わってくるような作品でした。


② 自然の中で感じる「六郷満山」の祈りの文化

「六郷満山」とは、国東半島にある神仏習合の独特な山岳仏教文化。
そんな文化を感じられたのが千燈プロジェクト
こちらにある旧千燈寺は、その六郷満山文化のルーツとも言われ場所。
こちらの山頂にアントニー・ゴームリーさんの「ANOTHER TIME XX」という、作者自らの全身を石膏取りして作られた鉄の像があります。

はじめは「1つの像を見るために70分歩くなんて…」なんて思っていたのですが、
自然と錆びて風化していく鉄の像と、山中で苔むしていく五輪燈群や石像のイメージがぴったりと重なり、もっとも印象的な作品になりました。

ちなみに少し危険な箇所もあるので、はじめに不動茶屋で受付をしてくださいね。(無料で保険をつけてくださいます。)


もうひとつは、成仏プロジェクト
宮島達男さんの「Hundred Life Houses」は、国東をはじめ全国から集まった100人がそれぞれ好きな早さに設定したデジタルカウンターをおさめたコンクリートハウスを大きな岩の壁に設置したもの。

この大きな岩の壁付近は、ひさしのようになって雨が降り込まず、縄文時代の住居となっていた場所なのだそうです。

国東半島には、全国の石仏の約7割が集中しているそうですが、とりわけ、岩山に直接彫刻した磨崖仏 (まがいぶつ)のスケールには圧倒されます。

(▲国東にある熊野磨崖仏。8Mもの高さがあり、実際に見上げるとその迫力に圧倒されます。)

この成仏プロジェクトの作品は、現代版の磨崖仏でもあるそうです。
人が輪廻転生していく様子が、繰り返しカウントアップ・カウントダウンするデジタルカウンターで表されています。


③ 「お接待」の風習から感じる、人のあたたかさ

そして、今回の芸術祭で本当に心に残っているのが「おせっ隊」と呼ばれるボランティアの方々の温かいおもてなしでした。

この時期に屋外の作品を観るのは結構寒かったのですが、行く先々で「お帰りなさい、寒かったでしょう?」と、作品から少し離れた場所でたき火をたいてくれていたり、お茶やコーヒー、お菓子をいただいたり。

(▲並石プロジェクトでいただいた、温かいお茶と手作りの”こっとんまんじゅう”。寒い中を歩き回った後にとても嬉しかったです。)

もともとこちらの地方には、お遍路さんに食べ物やお賽銭を差し出す「お接待」という風習があったのだそうです。

食べ物や飲み物をいただけるのももちろん嬉しかったのですが、お茶をいただきながらお接待の方々に 作品のはなし、その土地のはなし、芸術祭に対する思いなど、様々なことをお話していただいたのがとても嬉しく、思い出に残りました。

(▲千燈プロジェクトでは険しい道をおせっ隊さんがガイドさんとなって案内してくださいました。)

作品の近くにはおせっ隊さん手書きの作品解説や、物販スペースなどもあり、作品鑑賞の楽しみのひとつになりました。

(▲千燈プロジェクトの作品設置のドキュメント。地元の方々のアイディアと協力で、物理的に困難だった作品設置を実現させた興味深いお話。)

(▲なお、千燈プロジェクトの物販の机は、なんとアントニー・ゴームリーさんの作品が入れられていた木箱!千燈寺の住職さんが役目を終えた箱も大事にして、新しい命を与えられたんだそうです。)


今回は行けなかったのですが、7つのサイトスペシフィックプロジェクト作品とともに、飴屋法水さんのパフォーマンスや、石川直樹さんの写真展、レジデンスの展覧会なども行われています。

今年は11/30で終了してしまうので、遠くからは行きづらいかもしれませんが、ぜひ次も開催されたら良いなと思っています。

芸術祭でなくともとても魅力的な土地・国東をまた訪れてみたいなぁと思う芸術祭でした。

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■DATA■

国東半島芸術祭

日時:2014年10月4日(土)〜11月30日(日) ※水曜定休

   10:00〜17:00 (最終受付 16:30)

会場:大分県 豊後高田市、国東市各所

入場料:作品鑑賞は無料 (一部パフォーマンス作品有料)

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▼オマケ▼

折角はじめて大分まで来たので、2泊3日の一日は西の中津方面まで足を延ばしてみました。

こちらにある羅漢寺は、日本国内の羅漢寺の総本山。

仁王門から先は撮影禁止だったので写真はありませんが、苔むした山道のいたるところに石仏の置かれた参道、岩山に沿って置かれた一人一人表情の違う五百羅漢像には圧倒されました。

(▲仁王門の手前の参道にも所々に石像が。この先はもっと空気の濃い場所でした。)

そのすぐ近くにある、”青の洞門”は、切り立った崖の通行が困難であった様子を見て、江戸時代の僧・禅海が手堀りで掘ったトンネルの残る場所。
ガイドブックの写真ではよく分からなかったのですが、実際に行くと、よくこんな危ない場所に!とびっくりします。


耶馬渓の”一目八景”と呼ばれる場所は、360°奇石群の山に囲まれており、今の季節は紅葉もとてもきれいでした。

今回は、全国の八幡様の総本宮・宇佐神宮までは足を延ばせず。
また訪れたいなぁと思っています。

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最後までお読みいただきありがとうございました。


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