見出し画像

”美術館” のイメージを覆す美術館 −国立奥多摩美術館 ~13日間のプレミアムな漂流~−  に行ってきました。


「国立」を名乗り (英語表記も ”national” ) 、

1年のうち数日しか開館しない美術館。

チケットは木製で、もぎりはグラインダー。


入場時には "怪我をしても自己責任です" という内容の誓約書にサイン。

というとても変わった美術館、”国立奥多摩美術館” が 今年は13日間だけ開館するということで早速行ってきました。


■本当にここは美術館??

最寄り駅は青梅線の「軍畑(いくさばた)駅」。
電車は30分に1本なので要注意です。

のどかな自然の中を、15分ほどてくてくと歩いていくと…



…え?ここ??

いわゆる”ホワイトキューブ”な「美術館」とはかけ離れたイメージの建物
もとは製材所として使われていたそうです。


ちょっと入るのにためらってしまいましたが、館長さん▼が気さくに話しかけてくださいました。

(▲写真は公式HPより。 館長の佐塚真啓さん。
写真のままの場の雰囲気とちぐはぐなスーツ姿で出迎えてくださったので分かり易い!)


館長さんにチケットをもぎっていただき、いざ中へ。

(▲グラインダーでもぎり。さすが元製材所…)


中は広ーい倉庫という感じ。

(▲今年のヨコハマトリエンナーレに出展されていた和田昌宏さんのガンジー像の作品もこちらのアトリエで制作されたんですよー、とのこと。)


足下はこんな感じで、足下には床下の草や川が見えています。

(▲誓約書を書いたので、床が抜けて落ちても自己責任ですね(?))



■理解できる?できない? エネルギーを感じる展示作品。

では気になった作品をいくつか紹介させてください。
30歳前後の若い作家さんの多い展示でした。 

(なお、入り口で作者の名前の書かれたマップをいただきますが、その他のキャプションは一切なかったので作品タイトルは分かりません、スミマセン…)



まず、入ってすぐにごろんごろんと転がっている大きな木製の車輪。

牛島達治さんの作品。
ただ、鎖に繋がれて回っているだけの車輪ですが、不規則によろめいたり止まりそうになったり…
無機質な、機械的仕掛けの車輪なのに、その不安定な動きがなんだか生き物のようで、飽きずにずっと眺めてしまいました。


個人的に一番好きだなぁと思ったのが、こちら▼の赤石隆明さんの作品。

(▲展覧会HPを観て、”この方の作品、観てみたいなぁ”と私を奥多摩まで引き寄せてくれた作品でもあります。)


過去の作品が、写真として記憶になり、それをプリントした布がさらに別の作品の素材となり…と、どこまでも過去の作品が積層されて作り上げられたような作品でした。


本来忘却の対局にあったはずの写真が、現代ではデジタル化によって氾濫し ”忘却の彼方へ着岸する” ようになってしまった

という内容がHPの作者紹介で紹介されていましたが、まさに記憶が積み重ねられた上に現在があるような様子を表しているような作品で印象に残りました。

(▲意図していたところかは分かりませんが…
窓を撮影した写真作品に今回の立体作品がきれいに映り込み、今回の作品が別の作品の中に固定化されたようになっていて、過去の作品を積み重ねて新しい作品がある、という印象がさらに強いものとなりました。)


続いて地下へ…ちょっと不安定な階段を下っていきます。(結構怖い…)


関野吉晴さんは、人類が約6万年前にユーラシア大陸経由から世界中へ移動した壮大な旅、「グレートジャーニー」を ”徒歩、自転車、カヌー、犬ソリなど人力や人の力で操作可能な方法で巡った”のだそうです。

様々な人種の方の表情と、壮大な風景が高密度に並ぶ様子は圧巻です。

(▲額装されていないプリント写真がほぼ屋外の河原に展示されている、というのもまた不思議な状態なのですが…)


そして、最後にあるのがこちらの「国立 奥多摩秘宝館」

(▲18禁&内部は撮影禁止だったので写真はありません。)

小鷹拓郎さんの作品なのですが、奥多摩の土地に根ざした”秘宝館”的作品が制作(?)されていて、興味深かったです。


ミュージアムショップもあります。

(▲ドローイング作品が驚くほどの安価で販売されていたり!)


期間中は、毎日イベントも開催されるそうです
「アートで朝帰り」とか「100人分の豚の丸焼き晩餐会」とか、なんだか気になります…


キャプションなしなので、「うーん、どうしても分からない…」なんて作品もありましたが…

もやもやしたら、奥多摩の自然を観ながらのんびりと考えて帰りましょう。

今はコスモスもキレイに咲いていました。

何かのついでにふらりと行ける場所ではないのですが、普通とはちょっと違った美術館を体験したい方はぜひ”プレミアムな漂流”を楽しんでみてください。

10月13日まで、週末をメインとした13日間だけの開催です。

*******************

■DATA■

国立奥多摩美術館
The National Museum of Art, Okutama(MOAO)
ー13日間のプレミアムな漂流ー

会期:2014年 9月13・14・15日 20・21日 27・28日
          10月4・5・6日 11・12・13日

開館時間:12:00~20:00

入場料:500円(会期中何度でも入場可能)

場所:東京都青梅市二俣尾5-157 (access)


******************

▼オマケ▼

またもや独り言ですが…

今回の展示で作品をぱっと見て、なんだかあまり好きではないなぁ…と 写真も撮らなかったものの、帰ってから思い出してしまっているのが松尾勘太さんの作品。

私が伺った日のトークイベントのために、ご本人が持って来られたこちら▼の作品(館長さんが購入されたものだそうです)がなんだか不思議に頭に残っているんですよね。

(▲展覧会HPより。)

初見で ”なんだこれ? なんだか受けいれられない、嫌いだ!”って思った作品だったのに、その後大ファンになってしまうことって音楽でもアートでもたまにあるんですが

自分の感覚を揺さぶられるような ”新しいもの”  “これまでの自分の感性になかったもの” ってすぐには受け入れられないものの、気になって何度も反芻して、結果的に一番考えてしまっているのかもしれないなぁと思ったりしました。

(そんな感情ってリアルな”人”にはあまりないのが不思議なんですけどね…不思議。)

****************

最後までお読みいただきありがとうございました。

PLAstica.

最後まで読んでいただきありがとうございます。良かったらサポートいただけたら嬉しいです。サポートいただいたお金は 記事を書くための書籍代や工作の材料費に使わせていただきます。