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起源も由来も不明の 激しい火祭り 「ケベス祭」 へ。 (大分県 国東市)

 2014年に大分県の国東半島で「国東半島芸術祭」というイベントが開催され、そこではじめて「ケベス祭」というお祭りがあることを知りました。(国東半島芸術祭の様子のnoteはこちら。)

 毎年10月14日に開催される 起源や由来は一切不明の火祭りで、

燃え盛るシダの山を守る白装束の「トウバ」と、奇怪な面を着けた「ケベス」が争う。争いに勝った「ケベス」が撒き散らす火の粉をあびると無病息災になるといわれている。
(「国東半島芸術祭 公式ガイドブック」より)

とあります。

 この芸術祭を通じて、生活の近くにある多くの石仏や五輪塔、興味深い六郷満山文化(国東半島特有の仏教文化)を体感したこともあって、この「ケベス祭」にもいつか行ってみたいと思うようになり、今年ついに行ってきたのですが、想像以上にすごいお祭りでした…

化学繊維の服は禁止。思っていた以上に危険な お祭?

 会場となる櫛来社(岩倉八幡社)へ、まずは日中に行ってみました。

 お祭といっても、たくさんの出店が並んでいるわけでなく、地元の方々がテントでパンやおにぎりやお漬物、そしてお土産などを販売していました。

(お祭に使われる”差又”をモチーフにした 手作りのお守りを買いました)

 想像していたよりは小ぶりな神社で、小さな社と、境内をぐるりと囲む回廊があり、カメラマンの方々はすでに回廊の前にスタンバイしていました。

 どの辺りで見ようかなぁと境内をきょろきょろとしていると、カメラマンの方々から、

「その上着、燃えてもいい上着?火の粉で穴があいちゃうよ?」
「スカートは危ないよ。ズボンに着替えてきた方がいいよ。逃げるのが大変だからね。」
「髪も燃えちゃうかもしれないから、頭にはタオルを巻いといた方がいいよ。」

と様々なアドバイスが…

 えっ?!写真で見たときには厳かな雰囲気に見えたけど、そんな危険なお祭りなの?!不安を抱えつつ、一旦ホテルに着替えに戻りました…

迫力! 火をめぐる、ケベスとトウバのぶつかり合い

 夕方、再び神社に戻ると、境内にはたくさんの人が。しばらくして本殿の中で神事がはじまりました。その年に選ばれた男性が この中で面をつけ、ケベスになる儀式が行われているようです。

 本殿の外では、近くの海で禊ぎをしたという白装束の「トウバ」たちがその様子を見守っていました。

 1時間ほどの神事の後、本殿から「ケベス」が登場し、太鼓や笛のリズムにあわせて、神官の方々とケベスが境内を輪を描いて練り歩きはじめました。

(ケベスの登場)

(シダの山に火がつけられると、回廊の付近まで熱気が…)

 本殿の横にあるシダの山に火がつけられると、ケベスはその火を奪おうと突進し、トウバと神官がそれを阻止します。

(木の棒(差又)をつかったぶつかり合い。迫力があります。)

 ケベスは神様なのか、それとも鬼のような存在なのかわかりませんが、ぶつかり合いの後半には「ケベス頑張れ〜!」なんて声も挙がっていました。

 そして9回目の突進の後、ついにケベスが火を奪い、火のついたシダの山を散らしはじめました。

想像を超えるレベルの ”おいかけっこ”

 すると、さっきまで火を守っていたトウバたちが、手に持った棒(差又)に火のついたシダをつけて観客の方に突進…

 …これは、火の粉が ”振り掛けられる” とかいうレベルではないです。

 回廊の内側でも外側にも、火を持ったトウバたちが走り回り、時には火のついたシダの玉が飛んできたり…!

 木造なのに本当に大丈夫なのかと心配になってしまうほどの炎。思わず回廊から外側に飛び降り、叫び声をあげて逃げ回りつづけました…

(ほんとうに まわりが「火の海」状態…)

(「これ、いつまで続くの?!」「あそこにあるシダが全部燃えるまでだよ!」「うそっ?!まだあんなに燃やすの?!」なんて声も聞こえてきました。)

 ケベスもトウバも、善なのか悪なのか…ますますわけが分からなくなってきました。

 1時間ほど おいかけっこ状態が続き、最後に少しの火を残した状態で 太鼓の音を合図にお祭りが終了しました。

(終了後は一斉にお参りです)

 お祭はこれで終わりではなく、続いて近くにある伊美別宮社でお神楽が奉納され、翌日には流鏑馬も行われるとのことでした。

 写真やテキストで見ていたときには、どちらかというと厳かな雰囲気を想像していたケベス祭ですが、実際には、叫んで、走り回って、でもなんだか面白くて笑って…  実際に体験してみないとわからないことってあるんですね。

(ほんとに、服に穴があきました…)

 炎は怖かったですが、普段出さないような大声を出して走り回ったり、知らない人と一緒に「こっちに来るぞ〜!逃げろ〜!」なんて言いあってしまうような一体感のようなものもあったりして、終わった後には楽しい気分にもなっていました。

 2000年12月25日には、国の選択無形民俗文化財に選択されたというこのお祭ですが、冒頭の挨拶で「毎年開催しているこのお祭りですが、この地域も高齢化で…いつまで続けられるか分かりませんが…」という趣旨のお話があったのは印象的でした。

 ケベス祭は、毎年10月14日に開催されます。


 ちなみに、文章のはじめに書いた「国東半島芸術祭」の作品群は、今でも鑑賞ができます。どの作品も、土地と一体化した素敵な作品ばかりなので、ケベス祭に行かれる際には、ぜひこちらも合わせてお楽しみください。

(「ANOTHER TIME XX」/ アントニー・ゴームリー @千燈岳山頂付近。
ケベス祭の翌日に撮影。)

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ケベス祭

開催日程: 毎年10月14日
開催地:国東市国見町櫛来 櫛来社(岩倉八幡社)


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