集団でオスに立ち向かう!メス中心社会が築くボノボの平和的な社会〜「横山拓真の霊長類研究所」より
はじめに
私たち人間と近しいDNAを持つボノボ。彼らは私たちにとって鏡のような存在であり、その生態は様々な驚きを含んでいます。今回はそんな彼らが作り出す社会性について、チンパンジーとの比較を交えつつ前回の記事では語り切れなかった部分を含めて解説いたします。
今回の記事の内容については、こちらの動画でも詳しく解説されています。よろしければぜひ、ご覧ください。
ボノボのグループと広大な遊動域
まずワンバで研究されているボノボの社会構造を見てみましょう。ここでは5つの主要なグループが確認されており、それぞれE1グループ、PEグループ、PWグループ、BIグループ、そしてIYグループと分けられています。
特にE1グループの遊動域の広さは非常に大きく、彼らは一日に20kmもの長距離を歩き、地図上での大きな川を跨ぐような、遠大な移動を行うことがあります。このような広範囲を移動する彼らを追跡するのは、研究者にとってとても困難な任務となっています。
ボノボとチンパンジーの社会性の違い
ボノボとチンパンジー、両種ともに類人猿という共通の分類に含まれますが、その社会性には大きな違いが見られます。チンパンジーの社会はオス中心で、オスの社会的地位はメスよりも上です。これに対してボノボの社会はメス中心で、メスの社会的地位がオスよりも高いとされています。
この違いが生じる主要な理由は、食べ物と交尾の二つの要素に集約されます。これらの要素によってチンパンジーとボノボの社会性の違い、そしてボノボの平和的な社会性の秘密が明らかになります。
食べ物を巡る競争
チンパンジーの社会では食べ物を巡る競争が激しいです。例えばチンパンジーの集団同士が出会うと、食べ物を巡って争いが起こり、オス同士は攻撃的になります。この攻撃性がオス中心社会の特徴を形成し、オスが採食や移動などの行動において主導権・優先権を持つ状況を生み出しています。
一方ボノボの社会では、食べ物が一年中豊富にあるため食べ物を巡る争いはほとんど見られません。そのため集団間で出会っても争いが起きにくいとされています。
チンパンジーがオス中心の社会を構成しているのに対して、ボノボはメス中心社会を構成しており、チンパンジーとは逆にメスが採食や移動などの行動において主導権・優先権を持つ状況を生み出しているのです。
交尾を巡る競争
食べ物の競争と同様に、交尾もまたチンパンジーとボノボの社会性を左右する重要な要素です。チンパンジーのオスは、自分の集団の発情したメスと他のオスが交尾することを防ぐために攻撃性を示し、時には殺してしまうこともあります。
一方でボノボは発情しているメスの数はチンパンジーと比べると常に多いのですが、前述の通りメスの社会的地位が高いため、他のグループのオスと交尾をしても、他のオスはなかなか反抗することができません。
そもそも何故ボノボのメスの社会的順位が高いかというと、ボノボのメスはもしオスから攻撃された場合、他のメスが攻撃を受けているメスを助けようとします。そのため常に1対2、1対3のようなシチュエーションになってメスはオスに打ち勝つことができるのです。
これがボノボのメスの社会的順位が高い理由ではないかと言われています。そしてそのことがボノボが平和的な社会を築ける1つの要因とされているのです。
さいごに
ボノボとチンパンジーの社会性の違い、そしてボノボのメス中心社会がなぜ形成されているかについて理解することができたかと思います。私たち人間と近しい存在である彼らの生き方は、私たち人間のこれからの生き方について新しい視点を与えてくれるものとなるかもしれません。
この動画では、今回紹介した内容についてより詳細な情報が解説されています。興味を持った方はぜひご覧ください。
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