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#4_その先にあるのは破滅ではない、幸せしかない—A子さんのパーフェクトラブ

※上記写真はA子さん提供による

博士:夫人!!初めてパーフェクトラブ(PL)の体験談が届きましたよ!!

夫人:ついにやってきたのね。感激だわ。

博士:私、既に確認させていただきましたが、夫人、我々は大きな勘違いをしていたようですよ。

夫人:どういうことですの。

博士:我々、パーフェクトラブに遭遇すると身を破滅させると思っていたじゃないですか(#3_『冷やし馬』のPL)、果たしてそうなんでしょうか。

夫人:体験談を聞きたいわ。早くして頂戴。

博士:では早速いきましょう。

<A子さん(40代女性)のお話>
 以前お付き合いしていた、3歳ほど年下の彼とのお話になります。彼は、面白いことをして人をいつも楽しませようとする人でした。また、愛情がダダ洩れと言うのでしょうか、愛情表現をきちんとしてくれるんです。なんだか犬にも似ていましたね笑 だからか、遅刻が多かったり、酔っ払って財布を無くしたり、だらしないところがあっても憎めない人でした。
 でも、付き合い始めは決してスムーズなものではありませんでした。お互い別の相手がいたため、特に私のほうは好きになることに腰が引けていました。何かと言い訳をして、距離をとっていました。そんなある日、新宿から原宿まで、まぁまぁな距離の夜道を二人で歩いていたんですが、距離が気にならないくらい話がずっと盛り上がって、彼が言ったんです。
 「二人は恋をしている」
 もう認めざるを得ませんでした。そこから彼といろんな時を一緒に過ごしました。お互い別の相手とも別れました。
 話しきれないほど彼とのエピソードは多くありますが、そのうちのいくつかをお話ししますね。安い居酒屋で所謂せんべろというやつですね、二人で飲んで、私が記憶喪失になったらどうするという話をして、お互い記憶喪失になってもまた好きになると確かめ合ったり。あと、彼は仕事で年の半分を海外で過ごしていたのですが、私が残業中に、異国の海岸にいる彼から連絡があって、たわいもない話をして、そのうち誰かが弾くギターの音を電話越しに聞かせてくれて、まるで一緒に海岸にいるような気分になったこともありました。彼が海外に行っているときは、思うように会えない、連絡が取れないんですが、それでも楽しかったですね。私が寂しくなると「エアハグ」や「エア腕枕」もしてくれますしね…「エアハグ」ってメッセージが送られてくるんですけど、彼の愛情に包み込まれている感覚を味わえましたよ。うふふ。
 その中でも、これがPLだと感じた瞬間があります。とある片田舎の温泉に二人で行こうとバスに揺られていた道中です。ぼーっと座っていた私の二の腕を彼が幸せそうにぷにぷにと触ったときでした、人生ってこんなに楽しい瞬間があるものなのかと今まで味わったことのない多幸感に包まれたのです。この人さえいれば、どこまででも行ける気がしました。二人で心中するみたいな意味でのどこまででもではなくて、この行き先は、幸せしかないと思ったんです。これが私のPLです。

博士:聞いていて、こちらまで多幸感に包まれてきたんですけど。

夫人:素直に羨ましいですわ。

博士:これ、温泉に行く道中っていうのがいいですよね。

夫人:本当ねぇ。温泉でしっぽりやった帰りの高揚感からくるものではないものね。

博士:目的地にまだ到達していないにも関わらず、その頂を感じられるってなかなかないですよ。というのも、彼が普段の日常からしっかり愛情をA子さんに伝えていたから成せることなのかなと思いましたね。

夫人:そして、A子さんも伝え方は違えど、きっとちゃんと愛を伝えていたのね。記憶喪失になったらっていう、架空の話を真剣にするって話だって、一見バカみたいだけど、二人の信頼関係が感じられてすごく素敵だと思うわ。バスの中で彼が二の腕に触れたっていうのも普段から、二人にとってスキンシップが自然なことだったように思うわ。

博士:触れるのってやっぱり大事ですよね。二人の距離は0。網膜に写される像や鼓膜に伝わる音と違って時差もない。絶対的な存在が確認できるんですもん。

夫人:博士ってロマンチストね。

博士:お恥ずかしいです…。触れるのがいいと言っても、現実問題できないときもありますよね。そういうときって、実際触れてなくても、触れたいと思ってくれているだけでも嬉しくなったりしません?きっと、彼が海外に行って会えない時も、気持ちで触れていたんだろうなと。まさに「エアハグ」。

夫人:彼は、言葉でも態度でも、皮膚感覚でもあらゆる手段で愛情を伝えていたんでしょうね。目的地に向かう道中で、この先に幸せしかないと思えるって、相手と自分を信じられるってことだと思うの。

博士:確かに、そんな状態になったら幸せでしかないし、この先も幸せであろうと想像してしまう。今幸せってことはあると思うんですけど、その強度が強すぎて、今を生きながら未来の幸せもこんなに感じられるってなかなかないことですよ。これって未来を考えられる人間ならではのことですよね。未来という概念があるからこそ絶望もするし、逆に希望もある。

夫人:相手と自分を信じた先に、未来が生まれる。あぁ眩しいわ。

博士:PLに遭遇したら、冷やし馬のように破滅してしまうものかと考えていたんですが、こんなPLもあるんですね。私たちは大きな勘違いをしていました。

夫人:私たちはPLの力を信じていなかったようね。PLは広大で深い。やっとその深淵のふちに立った気がしますわ。

博士:ですね。そして、この先に幸せしかないと思ったA子さんのその後なんですが、愛情深い彼は、その愛情が他の人にも向いてしまい、お別れすることになったそうです。

夫人:あらまぁ。

博士:でも、A子さんは言っていました。「あんな素晴らしい瞬間が味わえただけで私の人生よかったと言える」と。

夫人:PLは永遠に続くものだなんてそんな野暮なことは言わないわ。瞬間を、今を、大事に全身全力で愛していきたいものね。

博士:PLは一瞬を永遠にする…ですね。

夫人:うふふ…。

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