さざなみ書評『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』

 「警察」といえば、皆さんはどんな印象をお持ちでしょうか。

・テレビの企画で夜通しトラブル対応に追われる姿⇒社会への貢献
・高い志を持ったドラマのキャラクター⇒正義感の塊
・交通の取締りで罰金を払わされる⇒役に立たないくせ点数稼ぎばかり
・不祥事の報道⇒市民の敵
 警察との接点によって感じ方は違うと思いますが、善良な一般ピーポーである我々には、こういった印象を持つ方多いのではないかと思います。

 本日紹介する『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』は「安定した仕事に就きたい」という目的で警察官になった女性が交番で働く姿を描いた漫画です。もともと警察官だった方が漫画を描いているらしく、報告業務に忙殺される姿など細かい部分にリアリティがあります。

 本作で描かれる警察官の姿は、冒頭にあげた印象とは異なります。不平不満を口にしながら、低い意識で命令に従い、疲弊した体にムチ打ち日々働く、まさしく我々と同じ一市民です。
 3巻で20件以上の性犯罪を重ねた容疑者をついに追い詰めたとき、主人公の脳裏をよぎったのは、
「同僚や先輩に怒られたくないから逃がすわけにはいかない」
「でも一人じゃどうしようもないから、相対して頑張ったけど負傷して取り逃がすという展開にしたい」
という、どうしようもなく意識の低い考えでした。

 おそらく、世の中にある仕事の大半はそんなものなのでしょう。どんなに社会に貢献する仕事であっても、生活のためであったり、辞めたいと思いながら惰性で続けていたり、中身はそんな「くだらない」人たちに動かされている。何かと善性を要求される事が多い時勢ですが、社会というものは本来俗なものなのです。

 「高潔」、「正義感」、そういった印象の憧れは無くなりますが、親近感がわいて警察官を応援したくなる作品です。時折背筋がゾッとするシリアスな話がありますが、基本的には警察官の日常をユーモラスに描いたギャグ漫画なので笑いながら読み進めることができます(その落差が本作品の魅力でもあります)。

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©︎Yasu Miko/講談社

文責:ジョンケリー


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