西川さん_

デザインで社会を変える

■ はじめに

 今回は、NPO法人Co.to.hana(コトハナ)の代表理事を務めていらっしゃる、西川亮さんにお話を伺うことができました。

 この記事を読んでいただければ、社会課題をデザインで解決するとはどういうことなのかを知り、なぜ働くのかについて考えるきっかけになり、学生の人は在学中に何をするべきなのかがわかるのではないでしょうか。

■ 西川さんのお仕事とは?


 大きく分けて、デザイン事業/プロジェクト運営/デザイン研修の三つです。これらの事業に共通して言えることは、「デザインで社会を変える」ことをミッションにしているということです。

 まず、デザイン事業ではすでに社会課題に取り組んでいる団体やこれから社会課題に取り組もうとしている団体・経営者の人たちと、デザインチームというかたちで一緒に伴走しながら問題解決に取り組んでいます。

 私たちは一般的な企業のように「財」の依頼・相談を受けて仕事をするのではありません。もちろん、私たちが働くための資金や費用はクライアントからお金をいただいていますが、それ以上にクライアントを「同じ課題に取り組んでいるチームの一員」だと思って仕事をしています。

 具体的な仕事は、「NPO、非営利組織、社会的企業」の「価値観、考え方、ノウハウ」をより多くの人に広めるためのデザインを生み出すことです。「NPO、非営利組織、社会的企業」とは、具体的に「若者の就労支援、教育、福祉、まちづくり」などの社会課題に取り組んでいる組織のことです。

 次に、プロジェクト運営では、自分たち自身が実際に事業を企画・運営し、身の回りの社会課題解決に取り組んでいます。

 「みんなのうえん」という事業では、「人口減少による都市部での空き地増加」という社会課題に取り組んでいます。空き地を減らせば街の景観がよくなり、地域の防犯対策にもなるからです。具体的には「空き地」を、空き地の周辺に住んでいる人たちに「共通の庭」として開放し、野菜の栽培や育てた野菜を使った料理ができる環境づくりをしています。

 お母さんの中には「地域とのつながりが少ない・自分の時間を持てていない」という方もいらっしゃいます。そんなお母さんに「共通の庭」へ来てもらうことで、地域の人とのふれあいが始まります。お母さんがやりたいことを実現し、自発的な活動が増えていくことで「地域の活性化」にもつながります。

 最後に、デザイン研修ですが、これは自治体や行政職員など様々な人に行っています。デザイン事業やプロジェクト運営の一環として研修をすることもあります。

■ NPO法人設立までの経緯

 子どもの頃からお金に恵まれず、兄弟全員が中学生の頃から仕事をするような家族でした。私も、新聞配達や寿司屋でのバイトをしていました。次第に、やりたいことがあっても経済的なことで実現できないことに違和感を持つようになりました。
 そして、高校一年生の時に建築家・安藤忠雄に出会い、人生が変わります。
 安藤忠雄はいろんなことを提案していく人で、“街にもっとこんな場所があった方がいい”“こういう風景を創りたい”というアイデアを出し、“お金を集めて実際にカタチをつくる”ところまで携わっており、未来を切り開いていくことを職業にしていることに感銘を受けました。

 アイデアや行動を通して「自分の人生」「身の回りの人」「社会」を幸せにできるかもしれない。むしろ、自分にはこれしかない!と思うようになり、デザインを勉強するようになりました。

 ところが、建築を勉強する中で建築における「社会との矛盾」を感じるようになります。というのも、有名な建築家が作ったものであっても、使い手には不満がたまっている場合が多かったからです。

 「地域の人に愛され・育てられ・使われるものをつくれないか」と大学時代に考えたのですが、当時は作り手と使い手が一方通行であることがよくありました。双方向のコミュニケーションから、思いをカタチにする会社が少なかったため、団体を立ち上げることにました。

■ 事業を通して描く未来図

 地域の問題をクリエイティブに解決していけるチームを世界中につくっていきたいと思っています。社会課題をデザインで解決しながらご飯を食べていける人は少ないので、ボランティアではなく職業としてつくりたいです。

■ 西川さんが考える「働く」とは?

 「働く」の本質的な意味は「傍(はた)を楽にする」=「周りの人を幸せにする」ことだと思っています。「家族」「スタッフ」「地域」「ふるさと」が自分にとっての「傍(はた)」です。そういった人やコミュニティの「お金」や「心」など、様々な側面を豊かにすることで、幸せにしたいと考えています。

■ 「コトハナ」メンバーの特徴とは?


 一人一人の能力や才能を大切にしているので、同じような人を増やしていこうという考え方はありません。なので、一人一人にある種依存して運営しています。誰か一人が辞めれば仕事に影響が出ますし、いい変化が生まれれば、チームの力に変わります。「このメンバーだからできた」そんな仕事ができる組織づくりを目指しています。一人一人の個性がつよい、面白いメンバーが集まっているのではないかと思います。
特に、同じ想いや理念をもっている人たちと仕事をしたいと思っています。

■ 学生へアドバイス


 いろんな価値観に出会うべきだと思います。学生のうちは何といっても時間があります。この時間はすごく大切で、その時間を使って、いろんな「文化」「モノ」「人」に出会うことが大切だと思います。

 ただ、いろんな価値観の人と関われば関わるほど、自分の思うようにいかないこと、めんどくさいと感じることも増えます。でも、それが社会です。うまくいかない時に「社会と完全にシャットアウトして孤立する」のか、「社会のなかでどう生きていくのかを模索する」のか、学生のうちに考えてみてはどうでしょうか?

 誰かに「やった方がいいよ」と言われたアドバイスを、素直に受け入れることができるかどうかも重要だと思います。私は「勧められた本は絶対読む」「人を紹介されたら絶対会いに行く」ということを大切にしています。自分の軸がある人は「軸を持ちながら周りの声に耳を傾ける」ことがポイントだと思います。

 とにかく、「学生なんで…」と言えば、たいていの壁は突破できます!

今回、取材をさせていただいた方
NPO法人Co.to.hana(コトハナ)/代表理事/西川 亮さん


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