「ルールの捉え方を変えていかなければならない。」 BIG PICTURE BOARD 水野 祐

この度、Public Meets Innovationへのアドバイザーとして就任することになりました。アドバイザーも「Big Picture」を持て、と言われているようで、気が引き締まる思いです。

▶︎現職について

現在は、2013年に開設した「シティライツ法律事務所 」で弁護士をしています。

活動は多岐に渡っているのですが、PMIの活動に絡めて言えば、スタートアップに特化してハンズオンのリーガルサービスを提供しています。

特に、人工知能、VR、3Dプリンタ、ブロックチェーンなどの「先端領域」や、音楽、映像、デザイン、アートなどの 「エンターテインメント領域」、公民連携やスマートシティなどの「まちづくり領域」を担当することが多いです。スタートアップに特化していると言いましたが、実は大企業の新規事業開発や経営戦略のアドバイスもけっこうやっています。

また、「戦略法務」という言葉で語られるルールメイキングを活かした経営戦略を通じてスタートアップを支援することもあるので、スタートアップへの戦略立案や官公庁への帯同など、いわゆる「パブリック・アフェアーズ」という領域でもサポートしています。

一方で、新しい技術に対する適切な規制やイノベーション施策などにおいて、官公庁側の委員会の委員やアドバイザーも拝命することもあります。いまの日本には欧米流の法を含むルールを自分寄りに解釈していく「ルールメイキング思考」が足りていないという思いから、NewsPicksアカデミアで「ルールメイキング思考」のゼミ をやらせていただいたりもしています。

▶︎水野さんが考える “イノベーションと政策における課題”

イノベーションとは、これまでにない新しいものを、社会に広く普及されることだと捉えたとき、いまの政府の政策がそうなっているかというと、誰もが疑問を持っていると思います。

政策や法を含むルールの捉え方を変えていかなければならない。でも政府や官僚は、どのように変えたらいいのか、アイデアがなかったり、変えたくても巨大なシステムの中でがんじがらめになってしまっていたりする。時代の変化が早すぎて、ルールを変える人的なリソースが足りていないという問題も霞が関では表面化しています。

したがって、政府や官僚が、政策や法を含むルールの捉え方について、イノベーションの現場にいる起業家やスタートアップのアイデアを得る機会がこれまで以上に必要なのです。やはり良いアイデアは最前線で戦っている起業家から出てくる可能性が高いですし、リソースの観点からも、一部を民間にアウトソースできれば有益です。

スタートアップ側からみても、イノベーションを実現するうえで、ルールをハッキングするだけでは、長続きしません。イノベーションとは、さきほどお話ししたとおり、社会に広く普及させるところまでやって初めて成立するので、自らのサービスを制度化して、法を含むルールに組み込んで、初めてイノベーションといえるのではないでしょうか。これができて、初めて他社と比べて圧倒的な市場優位性を確保できると私は考えます。

そして、何より重要なことは、政府や官僚が、このような起業家やスタートアップの「声」やアイデアを欲している、そういう時代認識です。適切な情報とタイミング、機会、場があれば、政府や官僚も聞く耳を持っているどころか、興味津々なのです。スタートアップとして、これを活用しない手はありません。

▶︎PMIに賛同した理由

日本の官僚はとても優秀なので、アイデアさえあれば、政策化・立案化する能力は世界的にみても高いと私は思います。問題は適切な情報を、適切なタイミングと形で、インプットできるか否かです。

PMIは、あえてミレニアル世代にフォーカスすることで、スタートアップの現場にあるもっとも新鮮なアイデアを、政策の現場である政府や各省庁に届ける場として機能するのではないか。
たとえ荒削りであっても、もっとも新鮮なイノベーション政策のアイデアを政府に届けること。様々な団体がある中で、それこそが私がPMIに期待することです。

官僚主導である点もPMIの大きな特徴ですよね。私は常々、官僚がもっと個性的に、バイネームで働ける状況を作るべきだと思っていました。PMIの理事はもちろん、ここに集ってくる官僚は魅力的です。この環境で自分自身もアドバイザーという枠に収まらず、プレイヤーとしても刺激を受けたいと思いました。

▶︎PMIに期待すること

ー官僚に対してー

傲慢に聞こえるかもしれませんが、PMIを通して、日本の官僚がそれに値する気概や能力があるのか私自身も見極めたいと思っています。

つまり、スタートアップの中には「もう国はスタートアップを支援する気はない」「頼りにならないから自分たちでやる」っていう考え方をする企業も増えている気がします。国として、政府として、イノベーション立国として本気で考えているのか、その能力や想いがあるのか、そろそろ本当に岐路に立っていると思うんです。

やはり、、想像以上に内にこもっている官僚が多く、「そんなことも知らないの?」という官僚も多くいます。逆に、むちゃくちゃ詳しい官僚もいて、差が激しいのですが(苦笑)。
例えば、Facebookで官僚の名前を見つけようと思って検索した際、出てこないことって、結構あるんですよね。別にSlackでもいいんですが、やっぱりそれってスタートアップとの情報交換にとってはかなり後手に回っているなあと思うんです。

もちろん、リスクはあるし、全員がそうであるべきとは思わないけど、重要な情報はそこでやりとりしなければいいし、ただ漠然とした不安でやらない選択をしている人も多いんじゃないですかね。少し厳しいようだけど、「スタートアップ支援をしたい」と言っているのに、それだと「本当にやる気あるのかな?」とは思ってしまうわけです。
激動な時代の中、何も動かずに変わらないことの方が、長期的な視点でリスクになるはずだと、私は思いますし、それは官僚にとっても変わらないと思うんです。

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ーイノベーターに対してー

これは日頃の活動でも思っていることなのですが、スタートアップにはルールメイキング思考を経営戦略に取り入れて欲しいということです。

ルールメイキングは上場前後の大企業のものだっていう認識もあると思いますが、実はスタートアップにとってもメリットがあります。これはすでにお話ししたとおりです。

また、21世紀の企業にとっては「利」と「義」の追求がこれからますます大事になると思います。「利」とは利益ですが、「義」というのは大義のこと。いかに社会にも利益を還元できるか、ということを企業も考えないといけない時代になっているし、それが企業のサステナビリティにもつながるんだと思うんです。

スタートアップには、既存のルールのだめな部分、変えないといけない部分を社会に教えてあげて、国や政府と一緒になって新しいルールを作っていく「ノブリス・オブリージュ」があるのではないでしょうか。

とはいえ、スタートアップは政策やルールの専門家ではない。ですので、あるべき政策やルールを議論する場としてPMIを利用していただきたいです。

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ー弁護士に対してー

もともと、政策の現場と弁護士のスキルセットやリーガルマインドは相性が良いと思っていますが、残念ながらこのイノベーションの分野で未来に対するビジョンをもったうえで活動している弁護士はまだまだ少ないと感じています。

また、日本では、具体的な法案までを示して政策提言できる組織が非常に少ない。このあたり、若手の弁護士でも協力できる部分はたくさんあるのではないでしょうか。

この分野に興味を持つ弁護士、特に若手が増えることを期待しています。広く法的素養を備えた人材が活躍する場は広がっているわけで、学部生やロースクールなどの学生にもぜひ参加してほしいですね。

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▶︎最後にPMIに対して一言

PMIはすべてが現在進行形。今までの方法論を試す場でもなく、インターネット企業の陳情の場でもなく、一緒になって模索して作っていく場です。

個人的には、PMIは、最初は、官僚とイノベーターのマッチングの場として機能するのでしょうが、近い将来には法案レベルで政策提言していける組織になるといいなあと考えています。

特に、PMIは官僚が主導する点に大きな特徴があると思っています。かつて日本を大きく動かしていた官僚のように、イノベーションの分野でも官僚がビジョンを持って行動しているんだっていうことを世に示してほしい。そういう機会と場所になることを期待してやみません。

PMI BIG PICTURE BOAD
水野 祐

弁護士(シティライツ法律事務所)。Creative Commons Japan理事。Arts and Law理事。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(リーガルデザイン・ラボ)。グッドデザイン賞審査員。IT、クリエイティブ、まちづくり分野のスタートアップや大企業の新規事業、経営企画等に対するハンズオンのリーガルサービスや先端・戦略法務に従事。行政や自治体の委員、アドバイザー等も務めている。著作に『法のデザイン −創造性とイノベーションは法によって加速する』、共著に『0→1(ゼロトゥワン)を生み出す発想の極意』、『オープンデザイン参加と共創から生まれる「つくりかたの未来」』など。

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