『夏の夜の夢』考察と感想

はじめに

この記事は2022年9月6日〜9月28日に日生劇場にて上演された『夏の夜の夢』についての考察と感想をまとめたものになります。

ただの舞台観劇が好きな一般人が、本作を見て思ったこと、感じたこと、疑問などをつらつら書いているので、読みにくいかと思います。先に謝りますごめんなさい!

色々な方の考察を読んだりして学びがたくさんあったので、私も記憶が少しでもあるうちに残しておこうと思いました。

今のところ円盤化する予定はないそうなので😭

まずは自分なりの考察と、最後に感想を書こうと思ってるので、こんな見方もあるんだな程度に読んでいただけたら嬉しいです!

自分なりの考察

舞台設定


セットは石段と木々、そして中央には長い階段とその先には鳥居があるだけのこの舞台。

これは日本のどこか深い森の奥にある貧困な村の物語なのだろう。
また、この村には独自の慣習があり、それ故に経済的にも発展せず、外部からも隔絶され閉塞的な村なんだと考えた。

貧しいというのも、舞台冒頭の奉納舞(後述)が終わると、石段の上からは蓑や笠を纏った老若男女がゾンビのようにゾロゾロと降りてくる。
髪はボサボサ、綺麗とは言えない身なり、生気があるようには思えない顔。
到底栄えている村だとは思えない。

この貧しい村に生まれた足の不自由な少年が最期に見た【夢】こそが『夏の夜の夢』なのだろうと思う。

車椅子の少年

舞台冒頭の奉納舞が終わると、車椅子に乗った少年と、それを押す青年が出てくる。

車椅子の少年とこの村の長であろう老人がすれ違う時、この老人は自分の持っている杖で車椅子と少年の足を小突いている。車椅子を押す青年は長に対して頭を下げ道を譲る。

この流れからわかるに、この村では足の不自由な少年を歓迎しておらず、忌み嫌っているか不浄なものとして扱っていることがわかる。

そしてこの流れを心配そうに、申し訳なさそうに見ている一人の男がいる。
この申し訳ないというのは長に対してではなく少年に対してである(重要)

後の役名としては
車椅子の少年=パック
青年=ライサンダー
男=ニック・ボトム 

であるが、この村の世界線では違うはずなので役名ではなく『少年』『青年』『男』という表記をする。

この3人の関係は親子であると解釈した。
男はこの少年と青年の父であり、青年は少年の兄であるのではないか。

そんな忌み嫌われている車椅子の少年はどこに連れていかれ、どうなってしまうのだろうか。

奉納舞

時系列が前後したが、この舞台の始まりは子供の舞から始まる。
この舞のことを私は奉納舞だと思っていて、この村では貧困を鎮めるために神に奉納を行なっていることを表しているのではと思った。

そして、神に奉納=犠牲にされたのが車椅子の少年である。

きっと生まれた時から脚が不自由だった少年は、不吉なものとして扱われ深い森に奉納という建前で捨てられたのだろう。

青年も男も登場してからずっと浮かない顔で少年を見つめているのだが、これは「本当は森の奥に家族を捨てたくない気持ち」と、「村の慣習に逆らうことはできない」という葛藤が生んだ表情なのではないだろうか。

捨てられた少年とパック

足の不自由な少年が深い森に捨てられた先に待つものは死である。
自分の足で歩くことができない子供が生きながらえることはまず無理だろう。

地面に倒れて力尽きそうになった時に見た最期の夢が【夏の夜の夢】であり、少年の最後の希望や願望が込められているのではないだろうか。これが喜劇である。

森を彷徨う亡霊たちが、動けない少年の身体をなぞり、どんどん動けるようになっていく。
初めて自分の足で歩き、そして走り飛び回ることができて嬉しそうな顔が印象的だった。

現実世界ではできなかった【歩く】ということが夢の中で叶えることができ、少年から夢の中の存在のパックに変化した瞬間だと思う。

走り回るパックと森の妖精たちがとても可愛らしく、そしてこれが少年の願いだとしたらなんて切ないんだろうと胸が痛くなる。

このシーンをきっかけに物語は夢の中アテネに。

ライサンダーの包帯

ライサンダーは左腕に包帯を巻いており、これが意味するものはなんだろうか。

舞台期間中の記事では「物理的な怪我ではなく、心の傷を表している」と公表されているが具体的な内容はわからない。

また、ライサンダー演じるSixTONESの高地優吾くんは自身のブログ(2022/9/23更新)で「ライサンダーは心に大きな傷がある、今日も背負って頑張ります(要約)」と発言している。

このことから考えられるのは

①ライサンダー自身の過去による心の傷
②ライサンダーの元である青年による心の傷
③どちらの意味もある
④どちらの意味もない

の4つの答えがあると思っていて、ここに関しては特に個人の解釈が分かれる部分だと思う。そして答えもないのだろうなと。

それを踏まえた上で私の解釈に近いものを出すとしたら【②】である。

①のライサンダー自身の過去に何かがあって心に傷を負っている仮定して、思い当たったのは1点。
しかし「背負う傷」にするには根拠が弱いため①の選択肢ではないと考えている。

ちなみに思いあたったのは以下のシーン。

法に訴えられることになったハーミアとライサンダーが恋について掛け合いをする場面。

ライサンダーは愛の邪魔をする存在として「生まれた身分」「年齢差」「周囲の意見」「戦争」「死」「病気」など具体例をあげていることからハーミアと出会う前に実体験としてすでに経験しており、心に傷を負ってしまった説。

しかし、よくある愛の物語はこんなのばっかりだ!的なセリフも言っているので、ライサンダーの実体験ではないのかなと。

①に比べて②のライサンダーの元の青年の心の傷が反映されているというのはしっくりくるし、同じように考えてる方も多いだろう。

ライサンダーの元である青年は、自身の家族を森に捨て見殺しにしたとすると、それはもう心に大きな傷を負っているし「背負う傷」になっているだろう。

世界線的には青年≠ライサンダーだがこれは夢の話であるため、表現の仕方も自由である。すべては【想像力】で補えば良いのだ。
ここらへんのことを厳密に問いただすとさまざまな点で矛盾が生じるので詳しくは考えない。

結論、ライサンダーの包帯は青年の後悔や懺悔の気持ちが反映されているというのが私の考察である。

亡霊とパック

作中に出てくる亡霊たちは、妖精たちを飛ばす黒子の役割も兼ねているが、パックと一緒に動くことも多い。
パックのサポート役とまで言っていいかわからないが、パックは常に亡霊と対等な立場にいるように思う。
若者組の四角関係を解消するようにオーベロンから指示をもらったパックは、早くしないと今夜は亡霊たちが消えてしまうと嘆いている。
オーベロンから彼ら(亡霊)と私たちは違う精霊(私たちは特別)だと説かれる時も、なんとなく腑に落ちてなさそうだったように思う。

そして朝になり亡霊たちが墓場に消えていくのを最後までじっと見つめる場面を見ると、いつか自分もそっち側になるのを予期しているのではと考えた。

パック=足の不自由な少年であり、この喜劇から覚めた時が彼の命が尽きる時である。
死んだらパックではなく亡霊になることを彼はなんとなく理解していたような気がする。

オーベロンの祈り

3組の婚礼の儀が終わり、舞台上には妖精たちとオーベロン、ティターニアが揃う。
この時、オーベロンはこの3組の幸福とこれから生まれてくる子供に不吉と嫌われるような傷がなく健やかな身体であることを祈っている。

これこそ足の不自由な少年が生きている時に言われたかった言葉であり、なりたかった自分の願望がこのセリフに反映されているんだろうと思う。

それを踏まえた上でこの場面を見るとあまりにも切なく胸が締め付けられた。
次生まれてくるときは五体満足でありますようにと願わずにはいられない。

夢の終わり

オーベロンの祈りが終わり、劇場内の灯りが少しずつ明るくなってくる。
太陽が登って来たことと、夢から醒めることを劇場内の灯りで表しているんだろう。

パックは明るくなってきた空を見ながら自分が夢から醒めつつあるのに気づき、慌てながらも必死に最期の言葉を残し「おやすみなさい」の言葉と共にバタリとその場で力付きる。

その姿をじっと見ているのが、冒頭と同じく青年と男である。
青年は倒れた彼の元に行き亡骸を抱きしめながら何かを言葉をかけているようだった。
そんな青年の背中に手を伸ばした男はやはりこの二人の父親なんだろう。

父親は亡骸を抱き上げ、兄と一緒に階段を登っていく場面は、少年を見捨ててしまったという罪を二人で背負っていくということなんだと思う。

夏組の少年は抱き上げられている時にそっとこちら側に腕を伸ばし、この世に未練があるようなお芝居をしていたのが印象的だった。
地面に倒れる時も最期の力を振り絞って拳を作り地面をコツンと叩いていたのも未練の表れなのかなと解釈した。

逆に夢組の少年はただこちらジッとを見つめていて、自分の死を受け入れているのかなという印象だった。

もしこの少年が生まれ変わるなら、次は自由に駆け回ることができる子であってほしい。
閉塞的な村で生きていくために家族を捨てた2人にも幸せが訪れてほしい。

感想

数回観劇していく中で、わかることが増え、逆にわからないことも増えていく舞台で、常に新鮮な気持ちで見れたのが夏の夜の夢という舞台でした!

本当は劇中の音楽とか演じ手のそれぞれのルーツを作品に反映しているところとかも書きたかったけど言葉がまとまらないのでやめました。
宇梶さんの衣装がアイヌの衣装にそっくりだったこととか、ルーツに関することは本当はもっと掘り下げたかった🙃

円盤化しない限り見返すことも出来ないし、記憶はどんどん薄れていくし残念でしかないので、
ぜひまた同じキャストで再演してほしいです!
子役のみんなは成長しちゃうから難しいかもしれないけど...😭

カンパニーの皆さん、スタッフの皆さん
素敵な舞台をありがとうございました!!!

またいつか夏の夜の夢を見ることができますように。
それぞれの場所でのご活躍を心からお祈りしております。

駄文にも関わらずお読みいただいた方、
ありがとうございました!!

ぽんず

p.s
できることならまたビンタされるライサンダーがもう一度見たーい!!!!

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