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XYのタイトルの意味

1 ポケットモンスターXY

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2013年に発売され今年で7周年のポケットモンスターXY。

初の3Dモデルのグラフィック、メガ進化などで注目を浴びました。

しかし「結局何がXとYなの?」とタイトルのテーマがいまひとつピンと来ません。

例えばブラックホワイトでは「真実と理想」など、明確な2対のテーマがありますが、「XY」とは一体何を表しているのでしょうか。

2  XYの大きなテーマは「生命」

遺伝子の形質がアルファベットのXYの形に似ていることに注目します。

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さらに、パッケージの伝説のポケモン、ゼルネアスは「生」・イベルタルは「死」をモチーフとすることや、AZのフラエッテとのエピソードからも、「生命」がテーマであるといえます。

3 遺伝子進化論VS共生進化論

ここで出てくるのが「遺伝子進化論」と「共生進化論」という考え方です。

まずストーリーの重要人物であるフラダリについて考えてみましょう。

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フレア団のフラダリは主人公の敵として立ちふさがる人物で、その企みは以下のようなものです。

①500万円を支払える者だけが所属できる「フレア団」と言う組織を作る。②ミアレの電力やボール工場等を奪い、独占する。③伝説のポケモンを使って最終兵器を作り出し、フレア団以外の全ての人間を一掃する。

彼の思想は、ひとことで言うと「強いものが弱いものから全てを奪い尽くす」と言うものです。

弱いものは強いものの養分になり、強いものだけが富やエネルギー、ポケモンを独占し、混じり気のない美しい世界を作る、それが彼の野望です。

フレア団の入会条件は500万円を支払えること、つまり社会的・経済的に強い立場のものだけを集め、その他の人間は弱者とみなし消し去ろうとしているのです。

これはダーウィン系研究者による「生存競争の結果弱いものは絶滅し強いものだけが生き残る」という「遺伝子進化論」の思想に結びついています。

いわゆる「弱肉強食」です。たしかに、自然界においては、一見この説は正しいように思われます。

4 共生進化論

しかし、これを覆す新しい説が生まれました。

「共生進化論」です。

『弱い細胞と強い細胞ともに培養させた場合強いものが弱いものを淘汰する事はなく一定の調和を保っている』

つまり生物は『弱いものも強いものも共に生きることで調和し、バランスを保っている』ということが証明されたのです。この考えを担うのが、『主人公とそのともだち』です。

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主人公の友達は、明るく元気なサナ、引っ込み思案だけど分析が得意で頭脳派なトロバ、ダンサーを目指すティエルノなど、性別や能力、性格や目標もバラバラです。

けれどもそれぞれの得意不得意、バトルの強さ・弱さにかかわらず互いに協力し合って旅を進めます。

特にサナは重要なメタファーです。

フラダリとの最終戦の前に「自分はバトルが弱いから足手まといになってしまう」と言って主人公たちについていくのをためらいます。けれどもフラダリが最終兵器の稼働を企む部屋のロックを解くことができたのは、サナが「パズルが得意」だったからでした。

石に繋がれたポケモンたちを解放するよう街の人たちに呼びかけていたのはティエルノとトロバです。

フラダリが『弱き者』と勝手にみなしていた少年少女たちが、彼に打ち勝つことができたのはひとえに連携プレー、つまり『凸凹な五人組の個性の共生』でした。

こうして主人公たちは「奪い合う」のではなく「共生し合う」世界の勝利を証明し、カロスには再び平和が訪れます。 

このように主人公とフラダリの対立には「遺伝子進化論」と「共生進化論」と言う裏のテーマが託されていたのです。


4 自分たちは正しかったのだろうか?

ここでふと疑念が残ります。フラダリは完全な自分の欲望や残酷な気持ちから最終兵器を稼働させたのでしょうか?

そうでないことは、作中から何度も伺えます。フラダリは最終兵器の稼働によって罪のないポケモンの命を奪ってしまうことに涙しています。また手持ちのギャラドスをメガ進化させていることから、ポケモンと強い絆を結んでいることも分かります。さらにポケモンを愛するプラターヌ博士とも仲良く親交を結んだり、ホロキャスターの開発を行ったりと社会貢献をしている人物でもあります。

実はフラダリの目的の根底には「人間の醜い争いにポケモンが利用されることへの嘆き」があったのではないでしょうか。

確かなことは『フラダリも主人公たちと同じようにポケモンを愛している1人のトレーナーで、完全な悪人とは言い切れない』『フラダリにはフラダリの正義があった』ということです。

物語終盤で、ライバルがそのことについて言及します。

あれから オレ
ずっと 考えていた

フラダリさんは
フレア団だけを 選んだ

オマエと オレたちは
フレア団以外を 選んだ

立場が そうさせたから であって
どちらが 正しいとは いえないよな

だから なんだけど……

どちらにも 言い分が あったら
歩み寄れば よかったのかな?

助け合い、歩み寄り、理解し合うことが正しいのなら、話も聞かずにフラダリを一方的に倒したことは正しかったのだろうか?

『自分たちは本当に正義だったのか?』

ライバルはそんな疑問を主人公に投げかけます。

5 もう一つのXY

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ここで登場するのが、

「X軸とY軸」です。

X軸は横方向、Y軸は縦方向へ、無限に伸びていきます。

そして、二つの軸には、必ず交わる点、「原点」が存在します。

つまりXYのメッセージの真骨頂は『価値観の違う、決してわかりあえないと思われる人々でも、どこか交わる点があると信じて、互いに歩み寄ろう』ということに収斂します。

主人公たちは、結局フラダリと話しをすることができませんでした。

しかし、主人公たちはそれを乗り越え『人の思いに触れる』、そんな信念を持って、人間的成長を遂げていきます。

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だから 決めた!

ただ ただ 勝つだけでなく
オマエたちの 想いに 触れる……
そんな ポケモン勝負を 挑む!

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このように、XYのタイトルには「遺伝子進化論と共生進化論」そして「歩み寄り」と言う、2つの大きなテーマが隠されていました。





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