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弁理士試験について③学習経験者の方の勉強方法ついて

ここでは、短答式試験の点数で15〜35点取れる人向けの勉強方法について書いていこうと思います。

私はLECのN先生の通信講座を活用して勉強しました。独学の方もそうでない方も参考になればと思います。

予備校では基礎講座や入門講座といって、初学者がまず学ぶ入門テキストがあると思います。学習経験者のコースでも同じで基本テキストがありますので、それに沿って学習すると効率がいいです。基本テキストや短答問題集で勉強する際に、以下の点を意識して勉強をしてみてください。

・基本は条文・青本中心に勉強する
・要件とその法律効果の正確な表現を覚える
・原則と例外を意識する
・関連する規定、+αの知識も大切に
・問題演習は量をこなす

順に説明していきます。

①基本は条文・青本中心に勉強する

弁理士試験は短答、論文、口述全て、基本的には条文の内容から問われます。条文が分かっていればそのまま解ける問題が多いです。従って、条文から外れた勉強をしていては点数は伸びないでしょう。それから、過去問だけをやっていても中々合格点にはなりません。同じ条文の問題でも少しずつパターンを変えて出題されますので、パターン変更に対応するため、やはり条文に基づいて問題を解けるようになることが必要です。

ただ、いきなり難解な条文を理解するのは難しいと思います。まずは条文に書いてある言葉の意味や定義を、講義や入門テキスト、参考書を使って学習して、少しずつその条文の言っていることを理解するようにしてみてください。

また条文の内容は繰り返し読まなければすぐに忘れてしまいます。人によって記憶力に差はありますが、ここは繰り返し読んで覚えていくしかありません。私は、短答の過去問やLECの短答問題集を解く度に、根拠条文を引いて読むことを繰り返して、徐々に理解していきました。理解ができない部分があれび基本テキストや講座に戻って確認し、また問題を解いてみる、この繰り返しになります。

またこの時に、条文の周辺知識を基本テキストや青本を読んで知識の幅を広げると、少しひねった問題にも対応できるようになります。直前期以外など時間的余裕のある方はやってみてください。


②要件とその法律効果の正確な表現を覚える

短答や論文の問題を解いていて、どの場面の話をしているのか分かるという段階になったら、次は規定の要件とその法律効果を覚えていくことになります。

法律は要件を1つでも満たさなければ、その法律効果が発生しません。短答や論文の問題を解く際には、該当する規定の要件が全て満たされているか否かを判断できるようになる必要があります。要件が何か、ということは基本テキストにまとまっていることが多いですので、それを条文青本の次に力を入れて勉強しても良いと思います。

要件は、制度ごとに主体、客体、時期、手続きという括りで分けると覚えやすいです。全て満たさなければ効果が発生しませんので、短答や論文の問題では必ず全てを満たしているか検討して結論を導きます。客体がイメージしずらいと思いますが、例えば、「○○が無効理由を有するから」という、実体的な要件のことをいいます。

主体…誰ができるか
客体…なぜできるか
時期…いつできるか
手続き…どうすればできるか
効果…その結果起こること

これらをできるだけ、条文や青本に書いてある正確な表現でインプット/アウトプットしていきます。自己流の表現や、不正確な表現だと、意味が全く異なる状態になってしまうことがあります。

例えば「取消決定」と「取消審決」は異なることを言っています。また「決定がされた」と「決定が確定した」は全く異なります。

短答試験の場合、一言一句まで気を配って問題を読まなければ、全く異なる状況をイメージしてしまい結論を間違えることがあります。ですので問題文の言葉遣いに気をつけましょう。

論文試験の場合、採点官は条文や青本の言葉が正確に書かれていれば馴染みの言葉なので受け入れやすいですが、不正確だと疑義が生じて、減点の対象にされてしまうこともあります。条文が貸与されますので、躊躇わず条文を見て正確な表現で書くのが望ましいです。

これは口述試験でも同じです。自己流の説明をすると、試験委員は条文の言葉で説明するよう促します。正確な表現が言えるところ以外は条文を見ましょう。

条文と青本の重要性をご理解いただけたのではないでしょうか。予備校の基本テキストも条文青本に沿った学習ができるような構成をとっています。条文集を常に携帯し、毎日隙間時間に繰り返し読みましょう!

③原則と例外を意識する

主に短答式試験でやっかいなのが「場合がある/場合はない」といった類いの問いです。これらの正誤を判断するには規定の原則だけでなく例外も漏れなく知っている必要があります。

最初のうちはまず原則を理解することに注力しましょう。原則の規定がある程度理解できたら、どんな条件を満たすことで例外が発生するかをみていきます。

とはいっても、例外規定は多くて中々全て覚えられないこともあります。その場合、もし例外規定が無かったらどうなるか、ということを想像してみてください。特定の人にとって厳しい規定となり、また手続きが複雑になるといった弊害が生じるはずです。例外規定を設けた趣旨も一緒に確認することで、理解しやすくなると思います。

原則はもう覚えたよという方は、例外規定も漏れなく挙げられるかということを確認してみてください。ここまでできれば短答式試験でも高得点を目指せると思います。

④関連する規定、+αの知識も大切に

最近の短答式試験は、1つの条文に関する問題もありますが、複数の規定を組み合わせた問題も多数出題されます。これを解けるようになるためには、1つの条文に対して、関係する条文にはどんなものがあるかを知り、それらを組み合わせて考えられる力をつける必要があります。LECのN先生の言葉を借りるとすれば、「知識の点を線に、線を面にする」作業です。

例えば

分割出願が29条の2の他の特許出願に該当するときは出願時が遡及しない(44条但書で29条の2不適用)

46条の2第1項の規定による実用新案登録に基づく特許出願は国内優先権主張の基礎出願とすることができない(41条1項2号)

などです。1つ1つの規定を理解した上で、それと関係する条文にはどんなものがあるかを確認します。予備校であれば、基本テキストに参照すべき関連条文がまとまっているはずです。条文を見たら関連する規定もついでに見ておく、という習慣をつければ網羅的に知識を吸収できますし、繰り返し条文を見ることになるので定着も早いです。

また+αの知識を知ることも有効です。条文には無いけど青本や審査基準、基本書には書いてある、みたいなことは沢山あります。

例えば、29条2項の進歩性について、その判断基準が特許審査基準に下記のように書かれています。

「審査官は、請求項に係る発明の進歩性の判断を、先行技術に基づいて、当業者が請求項に係る発明を容易に想到できたことの論理の構築(論理付け)ができるか否かを検討することにより行う。」

主に論文で書くような内容で、ここでは「論理付け」というキーワードが重要ですが、正直こんな知識どうやって収集すればいいんだ、という話になります。このように審査基準に関する知識も、たまに短答、論文で問われます。

こういった知識がまとまっているのが、予備校の基本テキストです。この+αの知識を独学で全て網羅しようとするとかなり大変です。予備校の講座を受けている方は、このあたりの知識集約の効率化にお金を払っていると考えてください。社会人など時間が限られている方は、予備校のテキスト中心の学習をすることで、+αの知識収集を効率よく行えます。

⑤量をこなすこと

最後に、量をこなすことについて説明します。結局、質と量のどっちが大事なのという話になりますが、弁理士試験に関しては量が大事だと思います

人にもよりますが、私は12月後半から短答直前の5月中旬までに

短答の問題演習として
過去問10年分(600問)を4週
LECの問題集1000問を3週
LECの短答模試500問を3周
合計で約7000問、枝にして35000枝解いています。

合格者の中には1万問や1万5千問ほど解いている方もいて、やはり量をこなしている方が多いです。また問題集は繰り返しやることで、確実に分かる問題と、何度も間違える問題が出てきます。なぜ間違えたのか一つ一つ潰していく作業を、この量だけやると、類似の問題が出たときに確実に得点とすることができます。

また、量をこなすことで短答式試験で「2択までは絞れる」という状態を、ようやく「自信を持って1択に絞れる」という状態まで持っていくことができます。この、自信を持って回答できるという感覚が掴めれば、もう合格レベルの知識がついています。

これだけの量をこなすのはかなりしんどいですが、近年、短答の知識が論文で出題されているという傾向を見ると、やはり短答の問題演習を十分積み重ねることが重要になります。

次の記事では、短答、論文、口述の順に、さらに具体的な勉強方法について書いてみようと思います。

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