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主婦の主婦による主婦にこそ読んでほしいグルメ記事(だといいなあ)

学生のころ、カフェめぐりが好きだった。

片田舎出身のわたしは、東京の大学に通うようになって初めて「カフェめぐり」なる都会の文化が存在することを知ったのだ。

めぐるほど多くのお洒落カフェがあることも、雑居ビルの一室や、古民家の中におどろくほど素敵な空間が広がっていることも、それまではまったく知らなくて。新しいカフェを探して訪れる、その体験自体が大人の楽しみ方のようで、なんだかそわそわと嬉しかった。

当時はまだガラケーが主だったけれど、パソコンを開いてはカフェのまとめサイトをチェックし、だれかのブログやレビュー記事を熟読して、行きたいカフェをリストアップしていた。まだ友だちも知らない、隠れたお洒落カフェを見つけたくて、熱心に情報収集にはげんだ。

就職して働きはじめると、休日に友人と会う時間を充実させたいと、カフェだけじゃなく、レストランや居酒屋なんかもたくさん調べるようになった。

「わー、なになに。カフェだけどフレンチ? あ、店内写真おしゃれ〜」とか、「へー、川の景色を見ながらブランチ。休日によさそう〜」なんて、ネット上のグルメ情報をあさりながら、きゃいきゃいしていた。

……時期が、わたしにも確かにあった。

* * *

外食やグルメ情報が縁遠くなったなあ。そう感じたのはいつからだろう。

何段階かステップはあると思う。

まず最初は、ひとり暮らしから、結婚をしてふたり暮らしになったとき。

いま考えればべつにそんなこと気にしなくてもいいのだけれど、やっぱり結婚したなら、ちゃんとごはんを作らなくっちゃね、みたいな気持ちを、たぶん最初は無意識にしょっていたんだと思う。

それに、ひとりだったら仕事帰りに誰の都合も気にせず、ふらっとひとりごはんして帰ろっかな!ってなるけれど、家で待つひとがいるとやっぱり生活スタイルは変わる、お互いに。外食の気楽さ、近さという意味では、やっぱり変化があった。

そうして次は、子どもが生まれてから。外食との付き合い方は、ここでまた段違いの変化を見せる。

いや、子が出歩けるようになってからはむしろ、外食の頻度は高まるご家庭もあるかもしれない。休日のお昼とか、気分転換をしたいとき、我が家もよく外へ出る。そう、もちろん、フードコートに。そして、ファミレスに。

ときには自然食バイキングとか、ファミリーフレンドリーな個人レストランにも行って、贅沢と幸せを噛みしめる。

検索ワードは「子連れ ランチ」「子連れ 焼き肉 禁煙」など、常に枕詞として「子連れ」がつくようになり、目にする情報もがらりと変わった。

ときには息抜きに、夫婦で、または友人とでかける時間だってつくる。でも結局、もともと知っているお店に行ったり、気づいたら夫婦だけなのに、最終的に安心と楽さを求めてイオンのレストラン街にいたりして、なんだか歩き方を忘れた感が否めない(それはそれで幸せなんだけど笑)。

とにもかくにも、いわゆる大人が楽しめるようなグルメ情報を調べる機会も、意欲も、昔より大幅に減ってしまった。

食べることは変わらず、大好きなんだけどな。

* * *

今回、ご縁をいただいてグルメ媒体で記事を書かせていただくことになったとき、わたしはそんな、ちょっぴりめんどうくさい疎外感の中にいた。

でも、だからこそ「なんかグルメとかってさ、縁遠くなっちゃったなあ」って思っている自分みたいな主婦や主夫さん(専業、兼業問わず)が、読んでて「遠くない」「いや、むしろ近い、めっちゃ近いわ!」と思えるグルメ記事がもし書けたならうれしいなあ、とぼんやり思っていたりもした。

わたしはおひとりさまも大好き派だけど、グルメ記事は、おひとりさまやカップル、子育てが一段落したベテラン夫婦……「だけ」のものじゃなくても、いいはず。日々生活をやりくりする主婦が疎外感を感じずに、おもしろがれるようなものが、たまにはポッとあっても、いいんじゃないかしら。

書きながら、たぶんそんなことをずっと考えていた。

ふだんよくやりとりをしている、全国のnoterさんたちの顔が、アイコンが、頭のなかでちらちらしていて、ちょっとでも何か届いたらいいなあなんて。おこがましくもそんな気持ちが、タイプする指先からはじわじわ出ていたと思う。

* * *

実はそのお店、初めてランチを食べたときの衝撃について、以前noteにも書いている。そのくらい、もともとファンだった。だから今回はじめて、店主さんにじっくりとお話を聞く機会をいただけて、とてもうれしかった。

ちなみに、思い入れが強すぎて、かなりボリューミーな記事になってしまった……。

編集さんから、「いや、さすがにこの文量はちょっと……」と言われて大幅に変更するかもしれないなと、締切より前倒しで出したのだけれど、その後いろいろと意見をやりとりさせてもらう中で、最終的にはお互いの合意のもと、意外なことに、ボリューミー原稿のまま掲載となった。

しがないライターのいち意見にも耳を傾けてくださる、ご経験豊富な編集サイドのみなさんには、ほんとうに感謝しきりで頭が下がる。ありがとうございます。

ということで、よかったら、ちょっとひやかしがてら、のぞいて見ていただけるとうれしいです。こちら。

もしも感想つきでシェアとかしていただけたら、嬉しくって小躍りしたのち、福岡からその方角に最敬礼しますね(方向音痴だけど、さっき方位磁針アプリをダウンロードしたから大丈夫)。

そんでもって明日から、キッチンでこの食材をあつかうときに、記事内で紹介している動画の音楽が脳内再生されて、ちょっと「クスッ」としちゃう方が、ひとりでもいたらうれしいなあ……なんて、こっそり思ってます。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。