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それもまた、日常で(娘と病気のつきあい)

今日はただ、頭と心の棚卸しをしたい、という日がある。

身のまわりのことをただ、いいも悪いも宙ぶらりんのまま書き落とすことで、自分の肩にうっすらつもっているものをハラハラ落とし、気持ちを落ち着けたいという欲求のあらわれなのだろう。

ということで、だらだらと書く。

* * *

昨日は娘のこども病院通院日であった。おおきな病院内を半日がかりで、検査と受診ではしごする。眠り薬を飲んでの心臓エコーチェックもあって、半日がかり。今日も今日とて、かかりつけ医のほうで気管支喘息や皮膚疾患の定期チェック。後者はここのところ、毎週通っている。

娘が生まれるまでは、これほどまでに病院通いをすることになるとは思ってもみなかった。

いまこの文章をつらつら書きながら、自然に“今日も今日とて”、とつづったことに気づき、ああ、病院通いもようやく自分のなかで“日常”として受け入れられるレベルになったのだな、と思う。

ねえ、娘よ。去年の梅雨ごろ、生まれて数ヵ月のきみを抱えてなんだかよくわからないままあっちこっちの病院へ奔走していたあのころの母ちゃんは、不安と心配でよく泣いていたね。ほそいほそい腕に度重なる採血で、泣き叫ぶきみの声を聞きながら、胸が押しつぶされる思いだった。

* * *

娘は、抱えているものがけっこうある。

いま、「抱えているものがわりと多いほうだと思う」と書こうとして、表現を変えた。抱えているものをひとと比較したいとは思っていないからだ。病気と縁遠く健康な子も、重大な病気で大変な思いをしている子もいる中で、比較は意味がないと思っている。相対的でなく、絶対的な話をしたい。

こども病院のロビーにあふれかえるたくさんのご家族を見ていても、「いやうちの方が大変で!」なんて、そんな比較をする思いは、ほんとうに大変な親御さんはだれも持っていないように思える。なによりも目の前のその子に向き合うことに必死で、全力だからだ。

その前提のうえで、状況を説明するために我が子の抱えているもの(いまのところわかっているもの)を淡々と書く。

・生後2ヵ月からのアトピー性皮膚炎
・生後5ヵ月からのソトス症候群(指定難病)疑い
・ソトスの合併症からか、1歳5ヵ月で先天性心疾患発覚
(→心房中隔欠損:左右の心房をへだてる壁に穴があいている病気。川崎病で入院し、心臓エコーを行ったのを機に見つかった)
・喘息っ気があり気管支喘息などをよく発症する
・食物アレルギー3種

それに対して現在おこなっているケアは、

・アトピー→毎日の保湿クリームと塗り薬の塗布
・ソトス症候群疑い→数ヵ月ごとにこども病院で発達の経過観察、必要に応じて合併症の検査や治療
・心房中隔欠損→秋頃に検査入院、冬頃に手術予定
・気管支喘息→毎日の飲み薬服用と、症状が出ているときは毎朝(夕)夜の吸入薬
・食物アレルギー→かかりつけ医でアレルギー負荷試験を定期的に実施(だが咳で体調崩していることが多くなかなか予定どおりに進まないw)。あとは母ちゃんが毎日のごはん&外食の店選びに気をつかう

という感じ。

この羅列を見て、ええ大変ね!という方も、ああうちもわかるわかる、という方も、もっと大変だよという方も、たいへんさの種類がちがうわね、という方も。たぶんほんとうにいろんな方がいらっしゃると思う。繰り返すけれど、比較したい意志はまったくない。相対的ではなく、絶対的に、我が家の場合はこんな感じでまわっているよというだけだ。

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ところで、ソトス症候群なんてはじめて聞いた!という方も多いだろう。わたしも去年、医師に可能性を指摘されてはじめて聞いた。

これもなにかの縁なのでさらっとご紹介しよう。

ソトス症候群(指定難病194)

1. 「ソトス症候群」とはどのような病気ですか

ソトス症候群は、頭が大きい(大頭症)などの顔貌の特徴、体つき(身長)の大きさ(過成長)、発達の遅れなどをもつ症候群です。

2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
1〜2万人に1人と推定されています。

3. この病気はどのような人に多いのですか
大頭症や過成長などの特徴から小児期にこの病気に気づかれることが多いと思います。人種差や性差は特になく、どのご夫婦のお子さんとしても生まれてくる可能性があります。

出典:「難病情報センター」 http://www.nanbyou.or.jp/entry/4777

より詳しい情報を知りたい方は出典元のURLをご参照いただきたいが、ざっくりいうとこんな感じ。位置づけは指定難病である。そして合併症として、心臓や腎臓の病気、けいれんや側弯(背骨の曲がり)などがある。医師いわく、ひとくちにソトスといっても、個人差が非常に大きい病気だそうだ。

なお遺伝子の異常が原因だとわかっているが、遺伝子の検査をしても100%結果が出るわけではない。

わたしたちの場合も、前々回の通院のときに、まず第一段階、ソトスの50%のひとがその遺伝子検査で判明するという検査を依頼していたのだが、昨日伝えられた結果は異常なしだった。だから実際の症状や合併症などから「ソトス症候群疑い」と言われている状態で、正式に「診断」されたわけではない。

けれど親としては、私も夫も、これまでのいろいろな経過から、そうなのだろうな、とほぼ確信に近い思いを持っている。

というか生後5ヵ月のころ、はじめて医師からソトス疑いもひとつの可能性として指摘され、なんじゃそれとググったとき、あまりに心当たりが多すぎて「ああ、これなんじゃないかな」とストン、と腑に落ちる感覚があったのだ。それまで、インターネット上の情報でさまざまな発達障害の傾向について調べまくっては「なんか、ちがうんだよなあ…」とずっともんもんとしていたけれど、はじめて、ああ、これだ!という感覚があったのだ。

もちろん病名がついたからといって、娘の何かが変わるわけではない。夫とは、「病気」自体を理由に、既存の先入観や固定観念にハマっていかないように気をつけよう、という話をよくしている。目の前にあるのは「病気」ではなくて「彼女」という人間だ。

ましてソトスは、個人差の大きい病気である。だから「この病気だからこれは無理だよね」と決めつけることなく、目の前の「彼女」個人のようすをしっかりと見ながら、ひとつひとつ、判断してゆきたいと思っている。

昨日も今日も明日も、変わらず、目の前の娘を愛するのみである。

* * *

昨日の発達チェックでは、ひとまずひとり歩きもできるようになってきたので、すぐに療育という話ではなく、もう少し様子を見ましょうということになった。

そもそも、いま療育へ予約をしても2ヵ月待ちくらいだという(これを聞くと、ほんとうに多くの家族が、いろいろな理由でがんばっているよなあ、と思う)。

我が家の場合、冬が近づいたころには心疾患の検査入院があり、2歳の誕生日をすぎたあたりでは心臓の手術を受けることになる。療育通いの検討についても、その後落ち着いてからのほうがいいのでは、という話になった。

* * *

ねえ、娘よ。

0歳のきみを抱えていたとき、母ちゃんは何もかもがわからず、ほんとうによく泣いていたなあ。自分も腱鞘炎と乳腺炎で、ときに高熱を出したりしながら、周囲からのプレッシャーと闘いながら、ほんとよく、やっていたと思うよ(笑)。

それを思い返せば、いま、少しは母らしい心持ちになれたような気がしている。きみは、1歳6ヵ月になった。母ちゃんも母年齢は1歳6ヵ月だ。同い年。まだまだわからないことばかりだよね。それでもふたりとも、とてもおおきく成長した。わたしたちのペースで、ちゃんと成長した。父ちゃんもだいぶ、父ちゃんらしくなったよね。

病名がつこうとつくまいと、きみはきみであることに何も変わりはない。ひとつひとつ、相談しながらやってゆこう。いっしょにね。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。