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チーン!

わたしは計算ができない。

そう書くと、なんだか恋の駆け引きだとか世渡りの方法だとかについての話かと思うひともいるかもしれないが、なんのことはない、ほんとうに小学校レベルの算数からして計算がからきしダメなのだ。まあ、小学校の算数でつまづいてしまっている時点で、恋の駆け引きだとか世渡りなんてものはわたしにとって、はるか彼方の課題なのだろうけれど。

このあいだ、外出中に昼食をとろうとサブウェイに立ち寄った。わたしは昔からサブウェイが好きだ。パンの種類がどうだとか嫌いなお野菜はございませんかとか、やたらと選択肢が多くて初めてのひとにはわかりづらいあの注文方式も、まあ勝手知ったるものである。ふはははは。

ええ、パンはウィートをトーストで。野菜は多めでお願いしますね(にこっ)。はい、ポテトはバジルソルトで。そんなふうに、知ったかぶっ子ちゃんよろしく余裕をかましかまし、すずしい顔で注文してゆく。

そしていざ、ターンはお会計。

店員:「604円になります」

ええと「〜になります」じゃなくて「〜です」でいいんじゃないかな、とおばちゃん思わなくもないけれど、ことばなんて時代とともにもはや正解が変わっていくものだと思っているし、もうそれでいい気がするよ。

重要なのは、金額が「604円」ということだ。

財布の小銭入れをジジジと開けて中を見ると、500円玉と100円玉で600円はどうやらある。問題は4円のほうだ。

ここで、財布の中に1円玉が4つあれば、わたしは迷いなくそれを添えて出す。ちなみにこれは、たとえ600円が存在しなくてもそうで、たとえば1000円札に4円を添えたり、もしくは5000円札に4円玉を添えたりして、少しでもきりよくお釣りをもらおうとするほうだ。

だがあいにく、4円はない。

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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