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ねこじゃらしにはお気をつけて

とある交差点で信号待ちをしていた。

数メートルをはさんで前に立っているのは、流行りのファッションに身を包んだ若者カップル。20歳前後くらいだろうか。

ふと目をやると、彼女がいぶかしげな表情で彼氏を見ている。

気になって、彼氏側に視線をうつす。なるほどその彼氏、ねこじゃらしを1本、手にもってゆらゆらしていた。足元を見てみると、道端にねこじゃらしの小さな群生。そこから今、さっと抜いたようだ。へえ、いまどきな見かけによらず、少年の心をもったかわいい青年じゃないか。

「……え、知らんと?」

手に持ったねこじゃらしをふりふり、彼氏が彼女に向かって言う。

ああ、正式名称のことかな。横でみているわたしは反射的に思う。

“ねこじゃらしって呼ばれているこの草、正式名称は何だか知っている?”。信号待ちのひまつぶしに、そんなクイズでも出していたのかしら。なんだっけ、エノコログサだったかな。でもまあ、知らないひとも多いよね。

そんなことを思いながら、ぼんやりとようすを見守るわたし。

すると彼女が口を開いた。

「なにそれ」

冷めきった口調で、ねこじゃらし1本をにぎりしめた彼氏に言い放つ。

「……ねこじゃらし。知らんと?」

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

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