山行きのススメ
マスクをしていると息苦しい。
それなのにマスクをはずせない日々が続いている。
外では外してもいいことになったけれど、外さずにいるひとはまだ多い。
日本人は、私を含めて、どうしてこう決まりに対して律儀なのだろう。
接触感染なんてもはや信じていないのに、手を消毒し、周りを逐一消毒する。一度始めた慣習からなかなか抜け出せない。
申し訳のように設置しているプラスチックの仕切り台ごしに、マスクごしに声を張り上げ話をする。台に隔てられて声はよく通らない。
そんな生活に疲れてしまった。
それは私だけではない。
で、どうすればいいのか、というと、山に出かけることにした。
山はひとも少ないし、密になることもない。なにより、緑が豊かで、心が落ち着く。
マスクを外してポケットにしまい、思い切り空気を吸い込む。
斜面を歩きだして苦しくなったら、息を意識的に吐く。そうしたら、空気は自然と胸の中へはいってくる。
はあ、はあ、すうすう。
苦しいときには息を吐けばいいことを、登山ガイドのひとから教わったのだった。
はあ、はあ、すうすう。
このマスクの時代が終わるまで、山に逃げ込んでは、思う存分息を吐こう。
禁じられた遊び、ではなくて、禁じられた呼吸、なのだ。そしてそれを破ることが、この上もなくうれしい。
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