「進むために 失ったもの」



夢を描いて歩んでいた
明日を探して歌を口ずさむ

その日 その日 あったことが歌詞になる
その日だけの 日記のような 即興の けれども精一杯の歌

彼方の星のように届かないとしても
それを見られたことが幸せだと生きていた

そこに見た願いのために歩んできた
そこにしか見えない祈りを掲げて生きてきた

現実にぶつかって――痛みに足を止める
より前に進むために――夢を一握り手放して……

彼方の星へともう少し近づくためにと強さを求めて
引き換えに夢をさらに捨てていった

夢というものがどんなに儚くも脆いものなのかを突き付けられて
夢なんてこんなものか……過去の自分を嘲笑う

けれどもこんなにも空しいのはどうしてなのだろう
今となっては思い出せない

けれどもこんなにも苦しんでまで進んできたのは
手にしたかった何かがあったからだった――そのはずなのに……

夢を捨てて得られる歩みに何の魅力があっただろう
そうまでして進むだけの歩みの彼方に何を叶えたかったのだろう

愕然と空を見上げた
満点の星空にかつての想いが降り注いだ気がした

それはかつて星に歌い 流れ星を願い 夜空に祈った心だった

忘れていたのかもしれない
欲しくて描いた夢ではなかったことを
ただ届けたくて描いたものが夢になったということを

夢を見て 夢に魅せられて 夢に恋するように

泣きながら星明かりを歩く
こんなにも闇の中を歩いていたのだと気づいたから

夢に少しでも近づきたくて進んでいたはずだった

夢を捨てるために歩んできた道じゃない
夢を捨てて嘲笑うためじゃない
現実に挫折するために描いた夢なんかじゃない

現実にぶち当たってもそれでも目指した理想そのもの
その過酷な茨の道を――泣きながら微笑んで歩んでいたはずだった

失うのは簡単 ただ手放せばいい ただ諦めればいい
でも現実を受け入れて歩むということは
決して夢を捨てることではないはずだった

夢を捨てて願うことを止めてしまったら
それは私自身を失うことと同じ

自分が自分でなくなってまで進んでも意味がない

自分として生きてこその夢だった
その夢を守り続けるための―歩みのはずだった

その夢を捨てた瞬間に
自身をも捨ててしまっていた……

失ったのは夢だけじゃなかった……

その時新しい星が瞬く
そして夜空の月明かりに虹がかかる

夢は願いであり 祈りであり
自分として生きるための 届けたい想いそのもの

この胸の奥に秘めた光は
ずっと光り続けている

夢は一つだけじゃない
満天の星空のように―そこに広がっている

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