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今、CMを振り返る

音担当茂野です。
今回は、私が今まで音楽を担当してきたCMを少し振り返ってみようと思います。
CMは広告なので、映画とは全く違った目的で企画制作されますが、映像作品としては共通するところが様々あります。
またCMの音は、詩と声と音によるポエトリー・リーディングに似ていると、ときどきテレビでCMを見ているときに感じることがあります。


読売新聞yorimo「人生駅伝論」

yorimo(ヨリモ)は、2006年にスタートした読売新聞提供の会員制ポータブルウェブサイトです。(2014年終了)
私が音楽を担当したのは2007年のTVCM「人生駅伝論」篇。
娘(多部未華子)と父(モロ師岡)がテレビの駅伝中継を見るうちに、気持ちの変化を意識し、駅伝に自身の人生を重ねていく、という内容です。
「人生駅伝論・娘」「人生駅伝論・父」の2タイプがありました。

このCMのように、登場人物のセリフがほとんどなく、モノローグやナレーションで言葉を入れることはよくあります。
音だけで聴くと、ポエトリー・リーディングとかなり近い表現に感じます。


オリンパス・企業CM

2009年、会社創立90周年記念事業「オリンパス・スペース・プロジェクト」の一環として作られたTVCM。
「キボウ」篇
「この星に生きている」篇
しっかり予算をかけて作られたCMですが、放送は「宇宙の日」9月12日(2009年)たった1日だけでした。私も見逃しました。伝説のCMと言っていいのかもしれません。
出演:若田光一(宇宙から)、宮崎あおい(地上から)。

「キボウ」篇

「この星に生きている」篇

この2篇は、CMのコピーが、詩の一文のように、声と文字で表現されています。

企業 CMの企画意図
この企業CMでは、「この星を、もう一度見つけよう。」をコンセプトとし、普段何気なく生きている地球を、もう一度“見つける”ことで、かけがえのない地球と環境を見つめなおそうというメッセージになっています。
30秒の“キボウ”篇では、宇宙ステーション内にいる若田光一宇宙飛行士が地球を、地上にいる宮﨑あおいさんが空を見つめる姿を通して、「この星を、もう一度見つけよう。」というメッセージを発しています。
一方、60秒の“この星に生きている”篇は、地上の宮﨑あおいさんの何気ない日常の風景と若田光一宇宙飛行士の宇宙での日常の風景を描くことで、私たちの生きている地球の大切さを感じてもらうものになっています。

オリンパスHPより


TOYOTA「CAMRY」 (Middle East region)

2012年に中東地域用に制作されたトヨタ・カムリのTVCMです。日本では見ることができませんでした。

読売新聞yorimoやオリンパスと違って、このCMにはコピーが全くありません。
音は、声も状況音も効果音もなく、音楽のみ。
映画のワンシーンのような美しい映像と音楽だけで全てを表現しています。
声や文字で説明やメッセージを伝えることはしないという、CMとしてはかなり珍しい作風、表現スタイルと言っていいのかもしれません。
でも、車の美しさ、車種名、企業名は印象に残ります。
このCMは、素晴らしい映像作品であり、そしてよく出来た広告表現でもあると感じています。


NOLTY (2024年版メッセージムービー)

TVCMではなく、WEB公開の広告として企画制作された動画です。
ディレクターは、現在公開中の映画「愛のゆくえ」の監督、宮嶋風花氏。
Poetis Mica Dropsの映像作品をいつも作ってもらっているお馴染みの映像作家宮嶋風花氏です。

「書く言葉は強い」篇

「書く言葉は強い」篇は、宮嶋監督らしい映画的な映像表現で作られています。
さらに、言葉を書く、手書きの文字、こういったカットを多くインサートすることで、手帳の広告としての条件を十分に満たしています。
クライアントからの要求に応えながら自身の映像作品として仕上げる、CMディレクターとしての葛藤と意欲を感じます。


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